昨日、『意味不明なことばかり言ってるUXデザイナー達の代わりに「UXデザインとは何か」を端的に説明しよう』という記事がバズっており、その記事をきっかけに自分の周囲でも、いろんな意見をきくことができました。
そのまわりのいろんな人の言葉から、私自身は『専門家という立ち位置の難しさ』と、『手を動かさない、webディレクターとしての仕事』についてあらためて考えていました。
いくつか考えたことについて、つらつらかいていきます。
昨日、『意味不明なことばかり言ってるUXデザイナー達の代わりに「UXデザインとは何か」を端的に説明しよう』という記事がバズっており、その記事をきっかけに自分の周囲でも、いろんな意見をきくことができました。
そのまわりのいろんな人の言葉から、私自身は『専門家という立ち位置の難しさ』と、『手を動かさない、webディレクターとしての仕事』についてあらためて考えていました。
いくつか考えたことについて、つらつらかいていきます。
自分の人生を前に進めてくれた大きなものの一つに、私は『問い』があると思います。
受験小論文、ブログ、コンペの提案資料、職務経歴書、サービスをデザインするための様々な設計書。
無数の『問い』をたてて、考えて、ひとの前にだして、精いっぱい考えて、前にすすめる。
webディレクター経験もまる12年(干支一回り!)経っている中で、少しずつ自分の在り方もかわってきました。
『問い』をたてる範囲も変わってきてるように思います。
じゃあ、これからはどうなるんだろう?
webディレクターはここ20年?くらいからうまれた、新しい職種です。
技術の進化もあいまって、三十路でどうあるべきか、40超えたらどうなんていうロールモデルは見えづらいです。
そんな中、30代webディレクターとしての成長戦略(仮)を考えるために、最近いったいくつかのイベントをふりかえりつつ、今の『問い』の範囲についてつらつら思うところを書き綴っていきます。
昨年につづき、HCD-Netフォーラム2016に参加してきました。
今年は人間中心設計専門家とったこともあり、自分としては何か少しずつアウトプットしたいという思いもあり。
「ビジネス、社会に貢献するHCD」ライトニングトーク枠で参加を申し込みました。
eVar7 Adobe Summit 2016報告会にいってきました。
このところずっとHCD(人間中心設計)のプロセスぐるぐるしていたため、マーケティング系の仕事はしていなく、Adobe系の解析ツールから離れて久しい状態でした。
ただ、今担当しているサービスでマーケティング系に類する仕事が自分の範疇に再び戻ってきそうな状況や、登壇者で話をききたいトークもあり。
「Adobeのマーケ系ツールのユーザーではないけどご容赦を・・・」とどきどきしながらAdobe Summit 2016報告会にいくことにきめました。
UXデザインの業務をはじめてはや5年。
自分自身も三十路超え、ついでに体重も肥え、文字通り『脂がのってきたかんじ』の状況ですが。
5年の中で、先輩方が体を壊したり、自分自身もあと数歩で体を壊すのでは?というところにいったことを、ふと@VoQn氏のツイートでおもいだしました。
(酔ってきたからいいかげんな事言う)「UIデザイナー」っていう「ロール」は充てちゃ駄目です。その子、全ロールの要求に頭がパンクするか、人材として潰れてしまうまでタスクが積まれて心療科通いになっちゃいます (続く
— ぼうくん (@VoQn) 2014年11月18日
※詳細 @transit_kix姉さんがまとめてくれている「酔ったぼうくん氏語る「ポジションに据える形での“UIデザイナー”というセクショニングの危険性」
「フルスタックデザイナーになろう!デザイナーもコードをかくのが当然」「デザイナーもUXデザインで上流工程へ」「webディレクター不要論」「いやディレクターこそUXデザインでグラフィックデザインできるように」とか、いろんな要望がデザインの現場でとびかう今。
その言葉の強さと、潜む怖さを感じ、じゃあデザインの現場にいる人間としてどうしていくのがいいのかなと思い、つらつら文章をかくことにしました。
【前編】グローバル化するサービスとオフショア開発環境の中で、webディレクターができること ~現場の悩み編~の続き。
「旅行ECとして機能必須要件すりあわせに時間や工数かけてるけど。もっとユーザー目線で考える時間や工数増やして、ユーザビリティ・売上あげたい、チームで事業貢献したい!webディレクターとして、今私はどうすればいいんだろう?」という問いに対して。
ベトナム出張でであった人々・出来事から得たヒントを書いていきます。
webディレクターが人間中心設計(HCD)専門家認定制度うけてみた話という話をかいてその後。
3月末、無事に人間中心設計専門家に合格しました。
そののち5/8(日)の情報デザインフォーラムにでかけて『うああああ世界広いよー』となったのが現在、です。
webディレクターが人間中心設計を学び始めた理由、学んで専門家とったのちに『うあああああ』考えるに至った軌跡を記録しておこうと思います。
UX界隈の勉強をはじめたときは。
・なんか学術的なことやってそうな人たちで壁高そう
・資格?何をやっている人たちなんだ
・事業会社のドロドロの中で資格が活きるように思わない
と思っており、まさか自分がこの資格をとるとは思っていませんでした。
人間中心設計を学び始めたのは、「『定量』『定性』両方の軸がないと、サービスのデザインを考えられないわ」と痛感したからです。
もともと私はweb制作会社のディレクターで、「もっと上流から考えられるようになりたい!」と事業会社に転職したクチだったのですが。
ある程度定量的にログ解析ができるようにはなったものの、それでも旅行会社において『上流』を考えるためには、大きな壁があったように思います。
・ユーザーのインサイト、旅行業のお金の稼ぎ方を一番知っているとされるのが、旅行会社の旅行事業のメンバーであること
・オンライン旅行会社のデータは外接ものが中心で、そのデータやシステムに基づいたUIが求められること
旅行会社にはいってまずびっくりしたのは、ユーザーのニーズの細かさ、多様さでした。
1月にGWの商品を予約しようとする人はあたりまえだし、ヨーロッパに行く際「直行便に近い経由便」なるものがあること(超効率的な乗り継ぎできるFinairとか、アエロフロートとか)。燃油サーチャージの上下するタイミングで、「燃油代がお得」という視点で航空券を探すユーザーがいるということ。
web業界にいた身としては、その多様なニーズはとても興味深く、販促にかかわるたびにワクワクしっぱなしでした。
ただ、しばらくすると。
ユーザーのニーズをいつも旅行業の人にきいているという状態になっていました。
ユーザーのインサイトを見つけるという広告の本を読んだけど、なんかぴんとこないのです。
また、旅行業のお金の稼ぎ方も全くしらない状態でした。
旅行業は商習慣があり、事業を成立させるためのお金の流れも存在します。
ただ数をうればいいというものではなく、キックバックやコミッションを最大化するための施策もあります。
会社の事業が何に基づいて動いているのかが見えない中、デザインの文脈でのみ発言して、顰蹙をかうことも多々ありました。
サービスを運営するということは、デザインの美しさや保守性の文脈だけで語れる分野ではありませんでした。
求められたものをつくれば喜んでもらえる。
そう思っていたところ、29才くらいのとき、マーケティング畑の上司から厳しい言葉をいわれました。
「システムを理解しろ。理解してはじめて、どうすればいいのかエンジニアと一緒に話すことができる」
そうはいってもECサイトの設計経験もあったので相応の自信はあったのですが。
いざ開発現場にたってみると、システムとの打ち合わせで自分がいかに役にたたないかを痛感する日々でした。
オンライン旅行会社のデータは外接ものが中心で、その中でどう最適なUIをつくるのか?という議論が中心になります。
「こういうことをやりたい」といっても、「このデータはないから作る必要があるけど、本当にそれっているの?どうやるとそれってできる?」といわれると、言葉につまるのです。
本当にそれがいるのか?というのは自分の思い付きのアイディアでしかないし、ましてやそれがどうやってできるのかというプロセス一緒に話すには弱い。
「工数かかるよ」といわれると、自分の意見をひっこめてしまう日々が続きました。
デザインが事業を前に進める力になると思うからこそ。
自分のひとりよがりアイディアなんてどーでもよくって、定量的な数字・定性的な行動や感情を論拠としたものから発想したかった。
そして、「今、こういうデザインが必要なんです。工数かける価値があるんです。これが事業を前に進めるんです」って心の底から信じていいたかったのだと思います。
これは株式会社パエリアの山口隆広さんの定義が、webディレクターとしての現場ではものすごーーーーくしっくりきています。
リリースまで走り倒せないとダメな役割 is 専門家
HCD専門家に求められる実務的なスキルセットを抜き出すと下記のとおりです。・現状のユーザ課題を具体的に推測する
・調査計画を立てる
・定性、定量調査を行い、その結果を分析する
・その結果を受けて仮説からユーザを幾つかモデル化する
・モデル化したユーザに対してどのような機能、経験をさせるべきかを実現可能性を含め提案する
・提案した内容をもとにユーザーシナリオやコンセプトにまとめる
・まとめた内容をもとに企画提案を行い、要求仕様をまとめる
・必要に応じて情報設計を行い、デザインを作成する(自分で作らなくともグラフィックデザイナーをディレクションする能力でOK)
・作成した結果をもとにプロトタイピングを行い、ユーザ調査、仮説検証を行う(中略)
すなわち、開発現場に対し正論を振りかざす人というよりは、実際に開発現場でディレクター的な役割を持ち、一緒にサービスを作る人というのが役割となります。こう考えると、いわゆる開発現場のディレクターがやっていることに対しユーザ調査とフィードバックを加えたことが、HCD専門家に近いように思います。あれ、全然めんどくさい人じゃなかった。
開発現場に5年間立ち続けて、勉強会に通い、本を読んで、産業技術大学院大学人間中心設計履修証明プログラムに通って、ようやく『リリースまで走り倒せないとダメな役割』がこなせるようになってきたように思います。
中でも、『リリースまで走り倒せないとダメな役割』をするのに大事だなと痛烈に感じるようになったのが、ファシリテーション能力でした。
プロジェクトを継続してつづけていくには、旅行業のメンバー、エンジニア、デザイナー、ユーザー、国籍の違うメンバーと一緒にものづくりをしていくことが必要というのもあるのですが。
それ以上に、つくりつづけるプロセスそのものも、デザインしていく必要があると感じたのです。
この点、大きく影響をうけているのは、上平先生のブログ『子供と一緒にデザインする方法』からです。
・物理的に距離が近いというのは、協業において(あたりまえだけど)とても大きい。
・子供のアイデアはそのままつかえるわけではなく、そのイメージを具体化・精緻化するのはプロのデザイナーの仕事。大人にはない発想を取り入れるために計画的に巻き込んでいる。
・見せかけや口実つくりの市民参画、ワークショップではなく、そもそものところでたとえ子供であっても対等に対話し、尊重する社会理念がベースにある。先日、Rasmusは「我々は実際に使う彼らの気持ちを何も知らない、逆に教えてもらうという気持ちだよ」と言っていたな。この辺の民度(?)を決定づけているものとして、デンマークの社会民主主義の歴史は半端なく厚い。
・そして民主的とはいっても、決して多数決ではなく、折衷案でもなく、決めるところはピシッとプロが決めている。つまり役割分担がうまい。
子供と一緒にデザインする方法
Kamihira_log in Copenhagen
私レベルの情報設計できる人なんていくらでもいるし、グラフィックのデザインもできるかっていうとNOです。私自身、ものすごくかっこいいとか美的で評価されるデザインをつくりたいかっていうとNO。広告賞とかどうでもいい。
それより、継続的に使われるものをつくりたいし、プロジェクト立ち上げからリリース、評価して運用していくすべての流れにおいて、みんなで作る瞬間にわくわくしていたい。
そんなわくわくした前向きな場をたくさん作れるようになりたい。
そこに必要なものって、場をつくる力=ファシリテーション能力でした。
上平先生の「デモクラティックデザインとその実験精神—もうひとつの北欧デザインから学んだこと—」の話をうかがいたくて、情報デザインフォーラムに参加してきました。
基調講演、パネルディスカッションを通じて、特におもしろかったのが、以下のトピック。
・デンマークで持続性あるけどリスクもあるサービスをだせる背景=信頼がある。その信頼があるのは「そういう風に育てられたから」
・高度成長が過ぎ、成熟産業が時につぶれていく現在の社会。社会全体の目標が見失いがちな中、一人一人が社会へ関わり何を達成したいかを考えていく必要がある。そのとき、デザインという手法は皆の大きな力となる。
・多様性・不確実性・複雑性をうけいれてイノベーションへのプロセスをつくれる人が求められている。
この『多様性・不確実性・複雑性をうけいれてイノベーションへのプロセスをつくれる人』=カオスパイロットでのチームリーダーとのこと。
たぶん私がなりたいのってこの立ち位置。
でも、ものすごーーーーーーーーーーーく、遠いよーーーーーーーーーーーーーーー。
今もってる現場だってまだまだ小さいもの。。
人間中心設計専門家とって、少しは先達の先生方の見ている世界を見れるかな?と思ったら。
とんでもない。世界は恐ろしいほど広かった。
たとえるなら、カイの冒険でフロア60まで到達したのち、スペシャルステージが表れていきなりわけわからん難易度になってるかんじ。
※画像は「アナタはGWは何をしていましたか!?僕は「カイの冒険」を攻略 ②」より引用。カイの冒険の鬼畜ぷりがわかる素晴らしいエントリーだと思います。
ここからが本番なんですよね。
人間中心設計専門家をとったのははじまりにすぎなくて。
今度は自分の今までの現場のみならず、いろいろな場でどんどん試していけということかなと。
人間中心設計を学び、人間中心設計専門家の資格をとるなかで、いろいろな先達にお会いすることができたのはとても幸せなことだと思います。
んまた、そこからすごく多くの素敵なチャレンジをしている人たちを紹介いただいているなと感じます。
めっちゃうちひしがれてるけど、小さくても、新たな場をどんどん作っていきたい。
情報デザインフォーラムから、これから成田にいきます。参加型デザインとなる社会って理想なんだけど、いち市民からみると遠すぎる道のりにみえて「自分じゃできないよー」と思ってしまう。うちひしがれる。でも、そこ一個ずつのぼるのが必要で、あとからみたら転換点だったみたいな場なきがする。
— azumi (@azumi0812) 2016年5月8日
今私はグローバル展開したサイトの担当をしているのですが。
お前どうこう言う前に、まず英語でコミュニケーションとれないとベトナム人エンジニアたちや、ユーザーと話せないだろ、『リリースまで走り倒せないとダメな役割』できないだろ、という状況。
切羽つまってるんですよ。あーあーあーお恥ずかしい。
まずは出張で明日からベトナムに渡航なので。
『多様性・不確実性・複雑性』をたくさん集めてくるところからはじめてみようと思います。
いかないと見えないものがある。
見えないものをみにいこう。