ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

「グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ」レポートと、グラレコ勉強会の即興性

img_cap_1506206月20日に、リクルートホールディングス本社にて、「グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ」を開催しました。

応募開始から1日で満席、キャンセル待ちが続くという大盛況ぶり。
増席したい気持ちは山々だったのですが。
ワークショップの内容上、参加者の方にケアが必要なため増席は厳しく・・・・。
「また開催しよう!」とグラフィックレコーディング勉強会スタッフ一同考え企画をはじめているので、またぜひご期待いただければと思います。

そんなわけで当日のレポート。
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デザインの現場でUXデザインやるなら、まずユーザーテスト(=「評価する」)からはじめるといい理由

img_150626「UXデザインを会社のデザインの現場でやるにはどうすればいい?」
私自身、そんな疑問になんどもぶちあたりし、何度も何度も仲間と話し合ってきたこの問い。

『「調べる→企画する→解決策作成→評価する」って進めると失敗しやすくて。
「評価する→ 解決策作成&評価する → 企画する&解決策作成&評価する → 調べる&企画する&解決策作成&評価する」というような、人間中心設計のサイクル逆回転からスタートしていくのがいい!というのがよくいわれる答えだ。

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私はもともと「評価する(ユーザーテスト)」から全てをはじめて、意図せず逆回転を社内でまわしていったクチなのだけど。
最近自分の案件で「調べる→企画する→解決策作成→評価する」という順当な流れをやってみたところ、いろんな壁にあたるなーと感じることが多かった。
面白かったのは、逆回転からはじめた人ほど、順当な回転をまわすのがはやかったことだ。
「評価する」プロセスから逆回転をしていくのがなぜ大事か?というの、あらためて考えるきっかけになった。

「評価する」プロセスからはじめるといい理由

理由は以下。

  • 現場のUIデザインのプロセスにいれやすい
  • ユーザーテストからのユーザビリティの改善は、合意形成しやすいし&数字で効果を語りやすい
  • UXデザインに超大事な、観察する態度が身につく

現場のUIデザインのプロセスにいれやすい

既にリリースしているサービスに対して、さらにチューニングをしていくのはよくある話だ。
そのチューニングにあわせて、5人程度の(比較的ユーザー像に近い人をさそって)ざっとテストして課題を洗い出すというのは現場としてすごくやりやすい。
お金も時間もさほどかからないから。

えてしてUXデザインのプロセスで問題になるのがお金と時間だ。
調査にはお金も時間もかかる。現場で効果がみえるかどうかわからないところに「お金をください」というのは決済おりづらいし、ましてやプロジェクトにおいて十分な時間をさいてもらえることなんてなかなかない。

あるとしたら、UXデザインに相当な価値をおいている組織か、相当な社内信頼貯金を持っている人がいったときのみ。
まあえてしてそんな環境にはないので、現場でまずやれることとして、ユーザーテストって工数的に現実的なのかなーと思うのだ。
「自分たちでも現場でまずやってみようと思える」というのは、着手するのにすごく大事な要素だ。

ユーザーテストからのユーザビリティの改善は、合意形成しやすいし&数字で効果を語りやすい

そして二個目。
ユーザーテストに基づいたユーザビリティの改善は、チームの間でも施策立案しやすいし、改善した場合の期待効果も見えやすいと思う。

チームのメンバーがユーザーが実際に利用している状況を見ることで「こんな使われ方をしてるなんて!」という衝撃を受けることができる。
自分中心デザインでUIデザインを考えていた人であればあるほど、その衝撃はでかいんだけども。
「自分の考えたイケてるデザイン」に固執するのではなく、ユーザーの行動見ないとやばい、ということが肌で感じられるのだ。
百聞は一見にしかず。

また、ユーザーテストででてきた問題を効果・効率・満足度×発生頻度での課題整理し、ビジネス的なインパクト度合いや実現難易度で整理したら、やるべきことの優先順位はクリアに見えてくる。
その優先順位で実装すると、KPIの数字も上がることが非常に多い。
あてずっぽうでやるより上がる確率がぐっとあがるのだ。

こうして数字で成果を語ると、「UXデザイン(の一部のユーザーテスト)って効果あるんだね」「ユーザーを見ることって大事なんだね」というチーム内の空気が生まれる。
この効能感こそ、チームを動かす原動力になる。

UXデザインに超大事な、観察する態度が身につく

そして三個目。
ユーザーテストが産む効能として、もうひとつチームを動かす原動力になるのがあって。
それはユーザーを観察する態度だ。

ユーザーテストをしていると、観察者はユーザーの一挙一動、思考発話をつぶさに観察するようになる。
ユーザーがとった行動に対して、「なんでこのユーザーは、こんなことをしたんだろう?」「なんでこのユーザーは、ここでこんんなことを思ったんだろう?」という問いを抱くようになるのだ。
そして、そのなぜなぜを繰り返し、その粒度はどんどん細かくなる。

例えば、自分の会社の場合。
「ユーザーは、このホテルがいいと思って選んだ」という行動があったとする。

Q:このホテルをなぜいいと思ったか?
A:駅から近くて、部屋もきれいなのでコストパフォーマンスがいいと思った。
Q:『駅から近い』ってユーザーにとってどんなことを指す?『部屋がきれい』ってユーザーにとってどんなことを指す?
A:駅から近い=スーツケースをもって徒歩で移動できる範囲。つまり、坂道や人が多すぎる繁華街、治安が良くないところ、スーツケースをひけない石畳の道は、駅から近くてもちょっと選ぶのに気が引ける。部屋がきれいは、水回りとベッドに注目している。
Q:『水回りとベッドに注目』する理由は?
A:基本ショッピングやライブに出かけるしそっちにお金を使うので、ホテルはお風呂に入って寝る場所という位置づけ。カビが生えてないとかお湯がでるとか、最低限清潔に利用できればいい。ホテルにかける価格的な優先順位は低く、部屋が狭いとか、窓からの景色がシティービューなのは問題ない。
Q:『最低限清潔』を何でジャッジするか?
A:ホテルの部屋の写真。水まわりの写真は必ず確認する。
Q:なぜ写真がいいのか?
A:設備の有無のテキストだけだと、水回りのきれいさは絶対にわからない。
過去に安い宿で水回りが汚く、シャワーカーテンにカビがはえてたホテルにとまったことがあり、そんなホテルにはもう泊まりたくないという気持ちが強い。

「ホテルをいいと思う」という裏には、ユーザーの過去の経験が学びがたくさん詰まっている。
たいてい、皆一個目の質問「このホテルをなぜいいと思ったか?」はきけるんだけど。
「駅から近くて、部屋もきれいなのでコストパフォーマンスがいい」を掘れる人は少ないと思う。
多くの人は、駅から近い・部屋がきれいで思考停止してしまう。
その結果、駅から近い=近ければ近いほどいい?とか、部屋がきれい=ゴージャスな設備?とかかってなイメージをふくらませてしまうのだ。

ユーザーは「駅から近い」ホテルを選ぶのに、駅からのメートルを測らない。
地図上で駅とホテルの位置をざっと見た後、ホテルの住所や駅名、近くのショッピングセンター名で検索して、写真や文章を読み込み、その周辺の何かの情報を仕入れようとするのだ。
ユーザーテストでモデレーターをやってみると、こうしたユーザーの連続した行動をたくさん目にすることができる。
だから、ユーザーにとっての「駅から近い」が、具体的な距離ではないことに自ずと気がつける。

ユーザーテストは、利用中である一時的UXのさらにほんの一部のみ見る行為だ。
その一部のみでも相当深く、ユーザーの過去の経験に紐づいているというのを知ることで、「ユーザーの行動と思考は、自分の推測を超える」ということ、そして観察の重要さを身をもって学ぶことができるのだと思う。

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この観察の力を持っている人が構造化シナリオ法でのアクティビティシナリオ(「もの」ではなく「コト」のシナリオ)を書くと。
最初はとまどっていたとしても、すごくチームメンバーの共感をよぶシナリオをかけるんだなーと最近気がついた。
その共感を呼びおこすものは、ストーリーの核をなす具体性の連続だ。
この具体性の連続からユーザーのコトにつなげて発見していける力をもつ人って、サービスをつくっていくのに強い力となるんじゃないかなと思う。

ちなみに、受託系デザイン制作会社の人と話すと、「プラグマティックペルソナ死んだ話」をすごくよくきく。
受託だとプラグマティックペルソナ立てる→ジャーニーマップを書く→シナリオ書く、って、クライアントとの合意形成のためという側面が非常に強いから。

プラグマティックペルソナは声が強い人にひっぱられやすいし、ジャーニーマップはご都合主義になりやすい。
シナリオは共感重視というより、「ユーザーがこの流れでこのモノに触るのがあるべき姿です」という、機能と機能を無理やりつなぐ何かにしかならない。

結果、ペルソナとシナリオが何も制作物に投影されない「ペルソナ作ってそれからどうするの?」状態に本当によくなるのだ。
私も受託制作会社で経験済み。
プラグマティックペルソナだって、ユーザーに近づけるよう育てていけばいいんだけど。継続して関わらないとプラグマティックペルソナを育てていくのって難しいのかな~と思う。

なにはともあれ。
UXデザインのプロセスぐるぐるがまわりはじめたとはいえ、ユーザーテストは継続して、チームでやっていく必要があるなと痛感。
特にUXデザインを学び始めた人の入り口としても、ユーザーテストはすごくいいきっかけになると思う。

HCD-Netフォーラム2015「キーワードに学ぶHCD」 ~初心者・初学者のための人間中心設計~

img_150531HCD-Netフォーラム2015の「初心者・初学者のためのHCD:キーワードに学ぶHCD」でグラフィックレコーディングをやってきました。
業務でHCD(人間中心設計)とかUXデザインとか呼ばれる分野やってると、「どう社内に伝えていく?」というのが一つの課題になっていきます。
社内で導入や教育をしていくにあたり、どう考えていけばいいのか?というヒントをいただけたいい機会となりました。

詳細はこちら

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