ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

UXデザイナーが直面する、体や心を壊す状況について

160531_imgUXデザインの業務をはじめてはや5年。
自分自身も三十路超え、ついでに体重も肥え、文字通り『脂がのってきたかんじ』の状況ですが。
5年の中で、先輩方が体を壊したり、自分自身もあと数歩で体を壊すのでは?というところにいったことを、ふと@VoQn氏のツイートでおもいだしました。

※詳細 @transit_kix姉さんがまとめてくれている「酔ったぼうくん氏語る「ポジションに据える形での“UIデザイナー”というセクショニングの危険性」

「フルスタックデザイナーになろう!デザイナーもコードをかくのが当然」「デザイナーもUXデザインで上流工程へ」「webディレクター不要論」「いやディレクターこそUXデザインでグラフィックデザインできるように」とか、いろんな要望がデザインの現場でとびかう今。
その言葉の強さと、潜む怖さを感じ、じゃあデザインの現場にいる人間としてどうしていくのがいいのかなと思い、つらつら文章をかくことにしました。

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【後編】グローバル化するサービスとオフショア開発環境の中で、webディレクターができること ~ベトナムで私も考えた編~

img_160515_2【前編】グローバル化するサービスとオフショア開発環境の中で、webディレクターができること ~現場の悩み編~の続き。

「旅行ECとして機能必須要件すりあわせに時間や工数かけてるけど。もっとユーザー目線で考える時間や工数増やして、ユーザビリティ・売上あげたい、チームで事業貢献したい!webディレクターとして、今私はどうすればいいんだろう?」という問いに対して。
ベトナム出張でであった人々・出来事から得たヒントを書いていきます。

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【前編】グローバル化するサービスとオフショア開発環境の中で、webディレクターができること ~現場の悩み編~

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2016年年明けから、自分の仕事が大きく変わりました。
これまで対日本人への旅行ECサービス担当だったのが、外国人向けの旅行ECサービス担当となったのです。
また、関わるエンジニアや事業部のメンバーも日本人ではない人たちが増えました。

年明けから数か月、「グローバル化するサービスとオフショア開発環境の中で、webディレクターができることってなんなんだろう?」と模索をする中で、少しずつ見えてきたものがあったので記録にのこしておこうと思います。

まずは前編、グローバル化する開発環境とサービスの中でwebディレクターが悩んできたこと編。

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webディレクター、人間中心設計専門家とって情報デザインフォーラムにいってきたの巻

img_160509webディレクターが人間中心設計(HCD)専門家認定制度うけてみた話という話をかいてその後。
3月末、無事に人間中心設計専門家に合格しました。

そののち5/8(日)の情報デザインフォーラムにでかけて『うああああ世界広いよー』となったのが現在、です。

webディレクターが人間中心設計を学び始めた理由、学んで専門家とったのちに『うあああああ』考えるに至った軌跡を記録しておこうと思います。

人間中心設計を学びはじめた理由

UX界隈の勉強をはじめたときは。
・なんか学術的なことやってそうな人たちで壁高そう
・資格?何をやっている人たちなんだ
・事業会社のドロドロの中で資格が活きるように思わない
と思っており、まさか自分がこの資格をとるとは思っていませんでした。

人間中心設計を学び始めたのは、「『定量』『定性』両方の軸がないと、サービスのデザインを考えられないわ」と痛感したからです。
もともと私はweb制作会社のディレクターで、「もっと上流から考えられるようになりたい!」と事業会社に転職したクチだったのですが。
ある程度定量的にログ解析ができるようにはなったものの、それでも旅行会社において『上流』を考えるためには、大きな壁があったように思います。

・ユーザーのインサイト、旅行業のお金の稼ぎ方を一番知っているとされるのが、旅行会社の旅行事業のメンバーであること
・オンライン旅行会社のデータは外接ものが中心で、そのデータやシステムに基づいたUIが求められること

旅行会社でwebディレクターが上流工程担当するときにあたった、2つの大きな壁

ユーザーのインサイト、旅行業のお金の稼ぎ方を一番知っているとされるのが、旅行会社の旅行事業のメンバーであること

旅行会社にはいってまずびっくりしたのは、ユーザーのニーズの細かさ、多様さでした。
1月にGWの商品を予約しようとする人はあたりまえだし、ヨーロッパに行く際「直行便に近い経由便」なるものがあること(超効率的な乗り継ぎできるFinairとか、アエロフロートとか)。燃油サーチャージの上下するタイミングで、「燃油代がお得」という視点で航空券を探すユーザーがいるということ。
web業界にいた身としては、その多様なニーズはとても興味深く、販促にかかわるたびにワクワクしっぱなしでした。

ただ、しばらくすると。
ユーザーのニーズをいつも旅行業の人にきいているという状態になっていました。
ユーザーのインサイトを見つけるという広告の本を読んだけど、なんかぴんとこないのです。

また、旅行業のお金の稼ぎ方も全くしらない状態でした。
旅行業は商習慣があり、事業を成立させるためのお金の流れも存在します。
ただ数をうればいいというものではなく、キックバックやコミッションを最大化するための施策もあります。
会社の事業が何に基づいて動いているのかが見えない中、デザインの文脈でのみ発言して、顰蹙をかうことも多々ありました。

サービスを運営するということは、デザインの美しさや保守性の文脈だけで語れる分野ではありませんでした。

オンライン旅行会社のデータは外接ものが中心で、そのデータやシステムに基づいたUIが求められること

求められたものをつくれば喜んでもらえる。
そう思っていたところ、29才くらいのとき、マーケティング畑の上司から厳しい言葉をいわれました。
「システムを理解しろ。理解してはじめて、どうすればいいのかエンジニアと一緒に話すことができる」

そうはいってもECサイトの設計経験もあったので相応の自信はあったのですが。
いざ開発現場にたってみると、システムとの打ち合わせで自分がいかに役にたたないかを痛感する日々でした。
オンライン旅行会社のデータは外接ものが中心で、その中でどう最適なUIをつくるのか?という議論が中心になります。
「こういうことをやりたい」といっても、「このデータはないから作る必要があるけど、本当にそれっているの?どうやるとそれってできる?」といわれると、言葉につまるのです。

本当にそれがいるのか?というのは自分の思い付きのアイディアでしかないし、ましてやそれがどうやってできるのかというプロセス一緒に話すには弱い。
「工数かかるよ」といわれると、自分の意見をひっこめてしまう日々が続きました。

デザインが事業を前に進める力になると思うからこそ。
自分のひとりよがりアイディアなんてどーでもよくって、定量的な数字・定性的な行動や感情を論拠としたものから発想したかった。
そして、「今、こういうデザインが必要なんです。工数かける価値があるんです。これが事業を前に進めるんです」って心の底から信じていいたかったのだと思います。

人間中心設計専門家ってなんなのか、とって感じた事

これは株式会社パエリアの山口隆広さんの定義が、webディレクターとしての現場ではものすごーーーーくしっくりきています。

リリースまで走り倒せないとダメな役割 is 専門家
HCD専門家に求められる実務的なスキルセットを抜き出すと下記のとおりです。

・現状のユーザ課題を具体的に推測する
・調査計画を立てる
・定性、定量調査を行い、その結果を分析する
・その結果を受けて仮説からユーザを幾つかモデル化する
・モデル化したユーザに対してどのような機能、経験をさせるべきかを実現可能性を含め提案する
・提案した内容をもとにユーザーシナリオやコンセプトにまとめる
・まとめた内容をもとに企画提案を行い、要求仕様をまとめる
・必要に応じて情報設計を行い、デザインを作成する(自分で作らなくともグラフィックデザイナーをディレクションする能力でOK)
・作成した結果をもとにプロトタイピングを行い、ユーザ調査、仮説検証を行う

(中略)

すなわち、開発現場に対し正論を振りかざす人というよりは、実際に開発現場でディレクター的な役割を持ち、一緒にサービスを作る人というのが役割となります。こう考えると、いわゆる開発現場のディレクターがやっていることに対しユーザ調査とフィードバックを加えたことが、HCD専門家に近いように思います。あれ、全然めんどくさい人じゃなかった。

HCDの人って結局何なの?正論めんどくさい人?って思ってたので3年前の自分の誤解を解く

開発現場に5年間立ち続けて、勉強会に通い、本を読んで、産業技術大学院大学人間中心設計履修証明プログラムに通って、ようやく『リリースまで走り倒せないとダメな役割』がこなせるようになってきたように思います。

中でも、『リリースまで走り倒せないとダメな役割』をするのに大事だなと痛烈に感じるようになったのが、ファシリテーション能力でした。
プロジェクトを継続してつづけていくには、旅行業のメンバー、エンジニア、デザイナー、ユーザー、国籍の違うメンバーと一緒にものづくりをしていくことが必要というのもあるのですが。
それ以上に、つくりつづけるプロセスそのものも、デザインしていく必要があると感じたのです。

この点、大きく影響をうけているのは、上平先生のブログ『子供と一緒にデザインする方法』からです。

・物理的に距離が近いというのは、協業において(あたりまえだけど)とても大きい。

・子供のアイデアはそのままつかえるわけではなく、そのイメージを具体化・精緻化するのはプロのデザイナーの仕事。大人にはない発想を取り入れるために計画的に巻き込んでいる。

・見せかけや口実つくりの市民参画、ワークショップではなく、そもそものところでたとえ子供であっても対等に対話し、尊重する社会理念がベースにある。先日、Rasmusは「我々は実際に使う彼らの気持ちを何も知らない、逆に教えてもらうという気持ちだよ」と言っていたな。この辺の民度(?)を決定づけているものとして、デンマークの社会民主主義の歴史は半端なく厚い。

・そして民主的とはいっても、決して多数決ではなく、折衷案でもなく、決めるところはピシッとプロが決めている。つまり役割分担がうまい。

子供と一緒にデザインする方法
Kamihira_log in Copenhagen

私レベルの情報設計できる人なんていくらでもいるし、グラフィックのデザインもできるかっていうとNOです。私自身、ものすごくかっこいいとか美的で評価されるデザインをつくりたいかっていうとNO。広告賞とかどうでもいい。

それより、継続的に使われるものをつくりたいし、プロジェクト立ち上げからリリース、評価して運用していくすべての流れにおいて、みんなで作る瞬間にわくわくしていたい。
そんなわくわくした前向きな場をたくさん作れるようになりたい。
そこに必要なものって、場をつくる力=ファシリテーション能力でした。

そして情報デザインフォーラムにいってきた

上平先生の「デモクラティックデザインとその実験精神—もうひとつの北欧デザインから学んだこと—」の話をうかがいたくて、情報デザインフォーラムに参加してきました。

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基調講演、パネルディスカッションを通じて、特におもしろかったのが、以下のトピック。

・デンマークで持続性あるけどリスクもあるサービスをだせる背景=信頼がある。その信頼があるのは「そういう風に育てられたから」
・高度成長が過ぎ、成熟産業が時につぶれていく現在の社会。社会全体の目標が見失いがちな中、一人一人が社会へ関わり何を達成したいかを考えていく必要がある。そのとき、デザインという手法は皆の大きな力となる。
・多様性・不確実性・複雑性をうけいれてイノベーションへのプロセスをつくれる人が求められている。

この『多様性・不確実性・複雑性をうけいれてイノベーションへのプロセスをつくれる人』=カオスパイロットでのチームリーダーとのこと。

たぶん私がなりたいのってこの立ち位置。
でも、ものすごーーーーーーーーーーーく、遠いよーーーーーーーーーーーーーーー。
今もってる現場だってまだまだ小さいもの。。

人間中心設計専門家とって、少しは先達の先生方の見ている世界を見れるかな?と思ったら。
とんでもない。世界は恐ろしいほど広かった。
たとえるなら、カイの冒険でフロア60まで到達したのち、スペシャルステージが表れていきなりわけわからん難易度になってるかんじ。

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※画像は「アナタはGWは何をしていましたか!?僕は「カイの冒険」を攻略 ②」より引用。カイの冒険の鬼畜ぷりがわかる素晴らしいエントリーだと思います。

ここからが本番なんですよね。
人間中心設計専門家をとったのははじまりにすぎなくて。
今度は自分の今までの現場のみならず、いろいろな場でどんどん試していけということかなと。

人間中心設計を学び、人間中心設計専門家の資格をとるなかで、いろいろな先達にお会いすることができたのはとても幸せなことだと思います。
んまた、そこからすごく多くの素敵なチャレンジをしている人たちを紹介いただいているなと感じます。

めっちゃうちひしがれてるけど、小さくても、新たな場をどんどん作っていきたい。

今私はグローバル展開したサイトの担当をしているのですが。
お前どうこう言う前に、まず英語でコミュニケーションとれないとベトナム人エンジニアたちや、ユーザーと話せないだろ、『リリースまで走り倒せないとダメな役割』できないだろ、という状況。
切羽つまってるんですよ。あーあーあーお恥ずかしい。

まずは出張で明日からベトナムに渡航なので。
『多様性・不確実性・複雑性』をたくさん集めてくるところからはじめてみようと思います。

いかないと見えないものがある。
見えないものをみにいこう。

『dialogue to diagram:対話を図解する手法を学ぶ』に参加してきました

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ようやく念願かなって。
東京大学大学院 安斎先生が企画されているワークショップ『dialogue to diagram:対話を図解する手法を学ぶ』に参加してきました。
ゲストは東海大学講師の富田先生

今回参加したのは「学問の世界にいる人たちから見えるワークショップと、可視化の世界を見てみたかった」という理由からでした。

UXデザインの世界から入り、ワークショップデザインをするようになってから、『どんな問を場にだすと、みんんなと新しい世界にいけるんだろう?』『この場で何がおきているんだろう?』という問いを常に考えるようになりました。

しかし、『この場で何がおきているんだろう?』については瞬時につかむのが私は苦手。感覚的にまだ体に入り切ってないなーと考えています。
たとえるなら自転車で補助輪つけたりはずしたりして、ふらふら走ってる状態。走れるけど、危なっかしい。
こういう時に私は違う視点をあえてぶっこむのが好きです。

その道の先達について実務を見たり、研究や書籍を読み、自分の中に新たな問いを発生させるのです。
問いのもやもやを考え続けて、外化しつづけて、前に進むスタイル。

今回は学問の世界にいるお二人の話を伺って、そのワークショップの場に参加することで、自分をゆさぶってみようかなーと思ったのでした。

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