ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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「OB」「OG」の存在意義

上司からのご指名で、先日母校の学生さん&旅行業界OBOGとの懇親会に参加してきた。そこでOBOGの存在意義をあらためて考えさせられたので、今後OBOG訪問うける人の心構えともなるよう、日記として残しておこうと思う。

「ちょwwお前が旅行業界のOB・OGかよ」と思った方。あなたは至極正しい。私だってそう思った。
広い旅行業界のうち、私はオンライン化のパートのうちのさらに一部、インターネットマーケティングとかクリエイティブ制作とかのごく一部にしか関わっていない。旅行業界からすればほんのほんのわずかな部分で、しかも業務的にはどうみてもweb業界。web業界のOBOG会ならうまだしも、旅行業界なんて何を答えられるのか皆目検討がつかなかった。学生さんに役立つ何かをこたえることなんて難しいよ!と思ってたのだ。

だから、私がでる意味合いに疑問を感じざるをえなかった。上司は「そういう職種があるということ自体が学生の刺激になる」といってくれてたのだけども、本当に役にたてるかどうかの自信はまったくなかった。

学生さんたちのの質問

当日話した学生さんは1年生から3年生、たぶん6人くらい。
幸いにも、予想外に大半は答えやすい質問ばかりだったのだけど、中には本気で考えなきゃいけない質問もあった。
というわけで、ここでは質問を分類して考察してみることにする。

分類軸は以下。

縦:問いをもっている範囲
自分の未来をからめた問いの検討範囲が、マクロ(業界横断的)かミクロ(旅行業前提の仕事内容や生活)か

横:時間軸
より先の将来(数年後からその先)をみているか、数ヶ月先の就職活動をみているか

1:数ヶ月先×マクロ

「自分は鉄道が好き、航空がすきだから旅行も一つの分野として検討したい。そもそもどういう職種があるの?」

「旅行業にどんな仕事があるのか知りたい!旅行業にいるあなたは何者ですか?」という入り口的な問いを投げられる。実例として自分の職種やその周囲の職種(旅行業界のオンラインを担う人)の話をすればいいので、とてもらくちんだった。探していくのをがんばってください!と応援したくなる若者達。

2:数ヶ月先×ミクロ

「旅行業界に入りたいが、この会社にはどうやってアピールすればいいのか?」
「エントリーシートどうかけばいいのか?」
「旅行業取扱管理者の資格は就職活動にどの程度役にたつのか?」

ここは一般的な範囲でしかこたえられない。きかれたらしんどいなあと思ってた。
文章はそこそこかけるので、エントリーシートの書き方くらいはアドバイスできるかもしれないけど、業界全体や会社単体をふまえた上での訴求ポイントのアドバイスはできない。
しかし、予想外にこういうたぐいの質問はほとんどうけずびっくりした。就職活動が本格化してきたらこの部類の質問は圧倒的に増えるだろう。

3:先の将来×ミクロ

「自分が旅行業界に勤めた場合、最初は現場でやっていくうちに、企画できるようになるのか?」
「ワークライフバランスはととのっているのか?」
「女性が活躍しやすいか、結婚しても続けられるか?」

ここは、自社にいる方達の姿を想定したうえでこたえられる。私がうけた質問で特に多かったのは「商品企画に携われますか?」だった。旅行業界のオンライン化については具体的にきかれず、オンライン独自の仕事の存在じたいをほぼはじめて認識した状態。インターネットマーケティング等オンラインならではの仕事も将来的に興味がある・・・という学生さんは、私が話した中ではいなかった。

4:先の将来×マクロ

「観光業界のうち、旅行業界は自分がかかわってのばしていくことができるのか」
「自分の出身地H町の観光をもりあげるにはどうすればいいのか」

じつは、ここが一番こたえづらかった。こたえを探すところが旅行業にとどまらないんじゃないか、と思えるパターンのほうが圧倒的だから。自分の知識や経験を総動員してこたえる必要があった。
そんなん自分で考えろ、といいたい人もきっといると思うんだけど。彼らは考える、問いをたてるために一つのプロセスとして、業界のプロ(と彼らからはみえている私たち)に問いをなげてくるのだと思う。
特に、ある一年生の学生さんの問いが一番難しく、話す過程が大変だったので実例として挙げてみる。

ある一年生の学生さんからの問い


ブルーベリー摘み / Jun Kaneko

「自分の出身地H町の観光をもりあげるにはどうすればいいのか」
彼は私をみるなり、一番にその問いをなげかけてきた。

H町は、首都圏に住んでいる人なら一度はきいたことがある町だ。

※個人の特定をさけるため、相談してきた学生さんの情報とその出身地情報には多少のフェイクをいれます
・H町は果物、特にブルーベリーが有名。
・特急と鈍行をのりつげば、都心から2時間半くらいでいける。
・成田空港からもアクセスできる。
・H町は果物がりや海水浴場を中心とした観光産業が多いが、突出してるとまではいけず「温泉といえば熱海」「ぶどうといえば勝沼」レベルの認知度は得ていない
・人口は減少傾向。若者は首都圏にでてきている。

「人口が減っている中、どうしたらいいのか?旅行業界の面からアドバイスください」彼は私をまっすぐに見てきた。

私はまず、広告的視点をあげた(イベントを告知するための広告の最適化。テレビのような媒体での訴求は厳しいだろうから、特にインターネットマーケティングでのターゲティングとか)。次に、浅学だけども旅行業界の視点から、インバウンドの話をしてみた(空港が近いので、空港近くのホテルとして訴求して外国人観光客が最後に数泊できるようにするとか)。

でも、向き合った彼の顔は曇っていた。情報としては伝わっても、何かがふにおちていない表情だった。

どうしていいか分からなかった。
話をつなぐため、私は過去にH町へいった話をした。
H町に走っているローカル線のデザインが大好きで、そのデザインをみにいったこと。
ローカル線から見えた、どこまでも続く果物畑。
駅のすぐ間近にジャムの加工工場。駅でブルーベリーの香りがしたこと。
ある駅には駅長ワンコ(全然有名ではない)がいたこと。

「駅長ワンコは元気?」ときいた。彼はワンコの今の話をしてくれた。H町で見たマニアックな話をかわすたび、学生さんの固かった表情はしだいにやわらかくなった。

ふと、そのとき、こういう断片のストーリーからサービスを組み立てるUXサービス設計〜ストーリーテリング〜を思い出した。ユーザーの体験ストーリーをたくさん集めて、その中に内包される問題点をみつけ、問題を解決していくという設計フロー。サービス設計とはちょっと違うかもしれないけど、観光にもあてはまる面はあるんじゃないかと思ったのだ。
「こういう旅行者からのマニアックなこだわりを探して訴求したり、観光地を考えたりするといいかもね」と私は話した。

「H町のいいとこって自分じゃわからないもんですね。そんなところが観光客の人にささってたなんて思いもよらなかったですよー」
彼は意外そうに笑った。
ストーリーテリングは、まずはストーリーを集める所からはじまる。
「じゃあ、友達をまずはつれてってみなよ!H町のいいとこきいてみたらいいんじゃないかな?」と提案してみた。

その瞬間、彼の表情がかわった。予備校で講師のバイトしてたときに、高校生たちがときおりみせた「問題とけた!」という顔を同じだった。
その瞬間、私もふときづいた。

彼が求めていたのは、プロの視点からみたいけてる問題解決策とか、いきいき働いてる実像ではない。立ち向かっている問題に対しての、プロの信ずる視点から描かれる、自分が今すべきアクションだ。

OBOGの存在意義


Coping with equations and other math expressions / judy_breck

OBOGの存在意義は、「プロの信ずる視点から描かれる、自分が今すべきアクション」を学生さんがみつける過程での、ちょっとしたサポートをできる存在、という側面もあると思う。

悩んでる最中は、まずひたすら分解しましょう。
そして、解決可能な悩みだけにフォーカスを合わせる。
「何ができるのか」という可能点をみつけるわけです。
オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)
引用

岡田斗司夫氏は、悩み相談に対してはまず「こんがらがった悩みを論理的に因数分解」すると述べていた。
学生さんもこれからでていく社会へ、自分は何をしていくべきかという悩み(問い)をかかえているのだと思う。しかし、社会をどうしていきたいかという問いは一学生さんには大きすぎるから、いくつかに因数分解をする必要がある。

どこで貢献する?地元?日本という国?それとも別の国?
どうやって貢献する?地元への観光集客?住人そのものを増やす?
どういう職業になるの?観光業?行政?NPO?
などなど。問いは無限にでてくるはずだ。

社会とこれから関わる学生さんの立場だと、適切な問題を因数分解していく途中、何かしらここから先は因数分解できないんじゃないかと思う部分がでてくるのだと思う。
そういう時に、因数分解をサポートしてあげるのが、私たち社会人OBOGの大事な役目な一つじゃないかと思ったのだ。因数分解を全部やってあげるのではない。その一過程のみを手伝うのだ。

誰かのために、というのではなく、
「自分はこういうものがつくりたい」と思って
ひとりでダーッとつくっていく。
そうすると、自然に適切な大きさの
問題が生まれていくというんですね。
たとえば、自分のつくりたいことが、
この机いっぱいくらいの大きさだとすると、
「この机いっぱいの大きさのものをつくる」
と宣言してつくりはじめるんだけど、
人間ひとりのできることには限界があるから、
まあ、一部分だけしかできない、と。
そうすると、あいつが言ってたのに
できてないところがここにあるぞ、とか、
つくったというけど欠陥があるぞ、とか、
毎日毎日動きを続けていると、
適切な大きさの問題が
つぎからつぎに生まれるんだそうです。
で、それさえ生まれれば、
インターネット上にはそれを解決する人が現れる。
「ほぼ日刊イトイ新聞『適切な大きさの問題さえ生まれれば』」

問題を適切なサイズにするため、因数分解を一緒に手伝ってあげれば、学生さんはまた走って、次の問いにつきあたる。
その問いは一人でまた解決できるかもしれないし、解決できないかもしれない。
そのときはまた、誰かと一緒に因数分解していけばいいのではないか。

———-

私が話した学生さんは1年生。あと3年以上学生生活が残っている。
きっと、彼はその間に無数の因数分解をくりかえすだろう。
その先にみえた就職先がどのようなものかはわからないけど、因数分解を繰り返せば繰り返すほど、心の底からすとんとくる職業、社会貢献の仕方が見えてくるはずだ。
どのようなかたちであろうとも、彼が社会で活躍する日を、私はとても楽しみに思う。

というわけで。「すてきな学生さんと会って、あわよくば弊社にリクルーティング」的な思想の実現は一切できませんでした。ははは。(そもそも12月より前に就職勧誘ってだめなんだってさ。)
弊社のみなさまお役に立てずすみません。12月以降、勧誘する会などあって機会をもらえれば、そちらでがんばろうと思います。

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