ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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会議室のホワイトボードで「おばけ退治」をしている話

会議で言葉の空中戦がつづくと、私は途中で話がおえなくなってしまう。聴力認識が人よりだいぶ弱いのかもしれない。もしくは頭がよくないか。たぶん両方な気がする。

とまあ己の頭の悪さを呪った所で会議が進むわけでもないし、プロジェクトの進行役しなきゃいけない場面はどんどん増えていく一方。ゆえに、自分がしきる会議くらいはアホの自分でもわかるようにしようと進め方を考えてきた。

結果、最近、会議の参加者数人の方に「わかりやすい!」とのお声をいただけたんで、嬉しさで筆もすすむことだしブログをまた書くことにした。

会議の敵:みんなの脳内リソースをむだ食うおばけ達


765 – Tripping Pac Man – Pattern / Patrick Hoesly

会議の敵は、みんなの脳内リソースをむだに食うおばけ達だ。
おばけにはいろんな種類がいる。

・必殺変身おばけ

ひとつのことばから、みんなの脳内にいろんな姿で登場するおばけ。こいつにやられると、みんなが脳内でそれぞれ別々なものを思い描き、会議がかみあわない。悲惨なのは、会議がかみあってる風に終わるパターン。おばけの影響でみんな脳内で勝手なものを描いたまま各自仕事をすすめるので、気づいたときには壮大な手戻りが発生したりする。おばけ大活躍。

・脳内神隠しおばけ

ぼーっとしてる会議の参加者を拉致監禁し、議論に二度と出席させないという恐怖のおばけ。このおばけにやられたときこわいのは、会議で姿がみえていても、脳みそだけが神隠しされるとこ。お昼直前の会議で「ランチ何食べようかな」と思っている時、お昼直後の会議で船をこいでるときにこのおばけはよくあらわれる。

・ぬりかべ的とおせんぼおばけ

こいつは難しい議論をしてるとよく出会う。煩雑な画面遷移を言葉で説明されたとき、とおせんぼおばけはあらわれて、脳内でそれをえがくだけでせいいっぱいにしてしまう。もっと議論すべき内容を脳みそに再現させず、とおせんぼしてしまうのだ。こいつをやっつけるには脳内の処理速度をあげ、ぬりかべをすりぬける必要があるんだけど・・・頭の処理速度ってなかなかあがらないのが悩ましい所。はうあああ。。

・会議後もかまってちゃんおばけ

会議の後にあらわれるこの子。「議事録ちゃんとかいてねー、かまってねー!^^」とにこにこして、議事録を書き上げるまでなかなか離してくれない。でも、この子とちゃんとおつきあいすると、後々プロジェクト進行で情報参照する際とても役に立ってくれる。幸運をよぶ座敷わらしのような存在なので、むげにはできないのが悩ましいとこ。

こんなかんじか。
会議進行はおばけ退治である。おばけ退治は世の皆様も苦労をしているのだと思う。学校教育、企業研修、芸術活動、まちづくりなどの様々な現場でワークショップの企画運営をしている中野民夫氏は、著書で以下のようにのべている。

日本の会議で意外にないがしろにされているのが、議論のポイントを皆に読めるように大きく書き留めていく「板書」の技術だ。せっかくでてきたアイデアや議論の核を、ただ話っぱなしにしたり、書記や出席者が自分のノートにメモをとるだけでなく、皆野目の前に皆が読める形で大きく書き留めていくことは、議論の無用な繰り返しがへり、きちんと積み重なっていくためにも大切なことだ。
中野民夫 ワークショップ―新しい学びと創造の場 (岩波新書)

私は学生時代NPOにつかった経験からか、ワークショップ的手法で会議進行をすることが多い。中野民夫さんの著書も、私の進行に大きな影響を与えている。特に、大事だなと思うのは板書をうまくとること。効率的な板書は、超効率的なおばけ退治につながると思う。

会議を妨げるおばけたちを、ホワイトボードでやっつけろ!


pac man eats them up nom nom / ▓▒░ TORLEY ░▒▓

私は、ホワイトボードに概念図(たいていはユーザーのメンタルモデル)をお絵描きしつつ議論を進めている。
※グラフィックファシリテーションという概念がありますが、私はとうていそんな素敵な板書できてない。まだまだお絵描きレベルなので、ここではあえて「グラフィックファシリテーション」とは表現してないのです。。

対:必殺変身おばけ
効果:メンタルモデルとなる図をかいていくことで、共通認識をつくりやすくなる

言葉の空中戦になると、同じことばでいっていても、その言葉の意味することが違うことがある。

例えば「メールマガジン登録を作ろう!」という案件。登録のためのランディングページ単体を想定する人と、登録LP→確認画面→完了というフローを想定する人、はたまた登録LP→メアド確認のためのメール送信→メールをクリックしたら登録完了、というフローを想定する人もいる。想定しているメンタルモデルが皆共通かは、あいての脳みそをのぞけないのでわからない。言葉をかわしているだけだとみえない部分もあるので、ホワイトボードに画面遷移をぱぱっとかきだしてみるといい。

実装間近で「あれ、私が想定してた遷移と違うかも」と認識のずれにきづくと、どうしてもその際のコミュニケーションコストは高くなってしまう。会議室でなるはやで気づいて、必殺変身おばけの魔力から一刻も早く逃れるようにしたいなと思う。

対:脳内神隠しおばけ
効果:議論の離脱者防止につながる

会話中心に会議が進んでいると、ふと一瞬集中がゆるんだら議論についてけなくなることが多い。途中で誰かが離脱した結果、議論が深まらず、離脱者パートは実はまた会議をひらかなきゃいけなかった・・・というのはもったいなさすぎる。

万一神隠しにあったときも、ホワイトボードでの記録があれば、ふと我に返った時、ホワイトボードを見て議論へすっともどることができる!神隠しからの生還である。ありがたやありがたや。

対:ぬりかべ的とおせんぼおばけ
効果:たりない視点がないかどうかのチェックが、頭でやるよりやりやすい

メンタルモデルを描いていくと、どこかでそのモデルに破綻がないかどうか、皆でチェックすることができる。

誰かの脳内で一人でメンタルモデルをチェックする場合、メンタルモデルを都度描く、かつそれにチェックをいれるという二重の大変さがある。でも、みなでホワイトボードをぎらぎらチェックする場合だと、メンタルモデルを描くというみんなの労力そのものをカットできるし、チェック機能もX倍(会議の参加人数=X人)になる。みんなの脳みそを、論理的な破綻がないか、考慮もれはないか、別の施策がないかどうかを考えることに集中させることができるのだ。とおせんぼおばけはこれで撃退!

対:会議後もかまってちゃんおばけ
効果:議事録がわりになる

議事録をかく作業は面倒くさい。会議の後すぐかければいいけど、会議が連発してるときなんて最悪。すぐその会議の内容を忘れてしまう。議事録を書く時間は圧縮するにこしたことはない。

お絵描きファシリテーションをしてると、ホワイトボードがだいたい議事録がわりになる。スマホでホワイトボードの写真をとっておき、その画像を添付したメール(+と、書ききれなかった次回MTGへの宿題とか)をおくれば、ものの数分で議事録作成が完了する。座敷童のもってくる幸せだけをうけとり、しつこいかまってちゃん的存在をうまくスルーするのである。

もちろん!BtoBのような会議だったら公式の議事録をのこすこと自体が大事だと思うので、この限りではない。私の場合は自社サービスなので、このようなライトな議事録の残し方でもゆるされる面はある。

参考にしている情報

えほんやく

「内容から人の存在を見出すこと」
テキスト箇条書きだけだと、どうしても「そのサービスのむこうにいるユーザーさんが、この議論の先にあるサービスをうけとってどう思うだろう」が考えづらいのが難点。会議の瞬間にはユーザーの感情まで深く想定しなかった結果、ビジネス要件のみで議論を進めてしまい、使いづらい何かを産み出してしまうこともあった。
えほんやくのように、ユーザーさん、そしてサービス提供者の私たちを描いて、つながりをもっと表現&会議の参加者みんなで共有できるようになりたいなあと思う。

わかる!ビジネス・ワークショップ―「共創型」戦略構築プロセスが実行力を生む


企業での会議の進め方についてなら、この本がいいと思う。
会議をすすめるための準備(誰を呼ぶ?何人でやる?)とか、全体の流れ(共有→拡散→収束→統一)各項目での具体的な方法論が記載されているので、サラリーマンにとっては参考にしやすかった。

NPO活動の現場で学んだこと

ワークショップ的な進め方で会議を進行している場所としては、特にNPO活動が挙げられる。NPOは参加者の意見をきいて地域、公共をつくりあげていくというミッションをもっている以上、会議もみなの意見をいかにとりいれられる&効率的にできるか、でおのずと会議が発達してきたのではないだろうか。所属していた環境NGOには、青木将幸氏をはじめ、著名なファシリテーターの方がたくさんいらっしゃった。思えばとても恵まれた環境にいたと思う。

青木さんの新刊著書『ミーティング・ファシリテーション入門 市民の会議術』の帯にこんなことばがある。

「会議が変われば社会がかわる」

何をおおげさな、と思う方もいるかもしれない。でも、私はこのひとことが真理だと思うのだ。
会議に立ちはだかるいろんなおばけを退治し、会議をみんなが積極的に参加できる場にしていけば、より多くの視点から「問い」をなげられる。「問い」をどんどん解決していけば、より多くのユーザーさんのアクションを変える、サービスをうみだしていける。
そういうサービスが世の中にたくさんある。サービスを産み出す私たちも働いててたのしい。そういう幸せな循環が巡ってくるんじゃないかと私は信じている。

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