ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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Webデザインの価値とは何か -webサービスにおける、webデザインの費用対効果(2)

前の記事で、なぜwebデザインは安く見られてしまうのかという問いに対し、

・参入障壁が低く見える
・ノウハウが広く、速くシェアされやすい
・制作物という点だけにおいて、デザイン作業が定義されてしまっている。
・効果が一目瞭然ではなく、評価しづらい。
・需要(発注者)と供給(制作者)のうち、現状では供給が多い

という点で技術価値・優先順位・価格が低くみられてしまうという現状について述べた。

現状はたしかにそうなんだけども。
かけるべきときにはかけようぜ!というのが私の趣旨である。
前記事でものべたとおり、期待効果が一目瞭然ではないためデザインの価値は本質的にわかりづらいものだ。
今回はその見えづらい、webデザインの価値について、自分が現場で思った所を書いていこうと思う。

デザインの成功例


Google Apps logo ring of happiness / adria.richards

「見えづらいよー」とはいってるもの。もちろん、世の中にはデザインの価値を実証した成功事例も存在する。

例えば、「RIA」という言葉の発祥の地でもある、Broadmoor Hotel。日付指定、部屋選択、カード情報入力という三つのページを一つの画面にまとめ、リフレッシュという思考の分断をなくそうとした、このRIAシステムによって、予約が89%増加し、客室使用率が66%増加したことが報告されています。
Webデザイン エンジニアリング 日経ソフトウエア 第56回 デザインの対費用効果[ROI] より引用

この記事では、Broadmoor Hotelの他、 USAmini、トヨタについてのデザイン改善効果例が掲載されている。
また、上記の記事にもあるとおり、googleの浸透にもデザインは大きく寄与したように思う。特に象徴的なのは検索と広告のすみわけで、googleはバナーにまみれたごちゃごちゃした広告は是とせず、検索と広告を完全にわけるというデザインをなしとげた。特に、CEOで製品開発の分野に携わってきたラリー・ペイジはデザインへのこだわりがひときわ強かったようにみえる。

ペイジの机の上には、アップルのインターフェースデザインの第一人者だったドン・ノーマンの古典的名著『誰のためのデザイン?認知科学者のデザイン原論』がおいてあった。会話の中でペイジはこの本によく言及した。彼が信奉するユーザービリティという名の「宗教」の聖典であり、最大の(そしておそらく唯一の)戒律は「ユーザーは常に正しい」だった。
グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へより引用

しかし、googleでは、ラリー・ペイジのような企業トップがデザインに価値をおいてきたからこそ、なしえた部分もあると思う。

このように効果が一目瞭然でないものを導入するためには、経営トップがその価値を信じ、導入を決断しない限り、成功することは難しい。上述の「デザインマネジメントの成立要件」でも挙 げられている通り、「経営トップの理解と関与」はデザイン導入に当たって不可欠のものである。
経済産業省:「デザインの効果測定に関する調査報告書」より引用

では、そんな数値の事例やgoogleのような成功例を、わたしのような現場のいち社員が追うことは可能なのだろうか?
答えは「価値があると信じるならば、伝え続けるしかない」なのかな、と思う。

webディレクターの私が信じる、デザインの価値=計画と設計


planning poker warm up / fsse8info

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)
において、ノーマン氏は、デザインされたものの使いづらさについて
「間違ったうごきをしてしまう、使いづらいことについて、ユーザーは自分のせいだと思ってしまう。けど、それはユーザーのせいではない。デザインのせいだ。」というように述べていると要約できる。

何か操作しづらいときには、必ずその裏には、よくないデザインが存在するのだ。

本書でノーマン氏が述べているデザインの原則は以下2点。

1:よい概念モデルを提供する
2:ものを見えるようにする

このデザインの原則にたちかえることができてこそ、デザインは高い価値ーユーザーがらくらく使えるーを発揮するのだと思う。

デザインの原則に立ち返るには、前の記事で述べた「デザインは、モノの姿や形よりも、「計画」や「意図」にこそ、その本質があるのだと言えよう。」を思い出す必要がある。
webデザイン=計画に基づき、作ること。制作物の裏には、考えられた計画・設計・ディレクションがある。

特に、デザインの原則に立ち返る必要があるのは、いちからUIデザインをするとき-サイトをリニューアルするとか、新規作成するときだと思う。UIデザインは、サイトのメイン導線(ほぼすべてのユーザーが通る目抜き通り)を作るという性質がある。目抜き通りの中央に突然でっかい木が生えていたり、信号が大量に存在していたらどうなるだろう。道路は渋滞だらけになるだろうし、誰もそんな道とおりたくないと思って途中で逃げてしまう。
だから、目抜き通りを造ろうと思ったら。建設予定地に木がたっていたら切り倒すとか、木が邪魔にならないような配置にするとかの計画や設計が必要になる。

デザイナーさんが実際にやっている、計画と設計


Coloured Key 12 / Virtue Arts

たとえば、某化粧品サイトのUIをデザインするとき、デザイナーさんは以下のようなことを考えまとめながら、仕事を進めていた。

「ブランド」を理解したうえでのデザイン作成

・そのブランドのロゴにあわせた、キーカラーの設定
・ページのキーカラーやフォントサイズ、マージン○pxなどのデザインを細かく定め記載したルール仕様書
・化粧品の中でも高級ラインのブランド等、別カテゴリに適用する、バリエーションのカラー指定
・他社のデザイナーでも作れるようなルール仕様書

「サイトの構造」を理解したうえでのデザイン作成

・ユーザーが次にどう動くかの理解をしたうえでのデザイン作成。次画面のときと、ポップアップのときの誘導ボタンは当然違うので、情報の強弱を理解したうえでデザインする必要がある。
・前後のページとの統一性をもたせたうえでのパーツ作成

こうみると、UIを作るデザイナーさんは、ブランドのイメージや、サイト構造を理解しながら、デザイン要素の制約を一から作っていく・・・という仕事となる。

デザイナーさんは、ただ一枚のPSDファイルをつくるわけではない。PSDファイルの裏には、綿密な計画と設計が存在している。
この作業が綿密になされていればいるほど、「よい概念モデルを提供」でき、ユーザーはサイトの仕組みを理解しやすくなる。また、デザインのルールを即座に理解して次にどういった点を見ればいいのかを推測できる状態ー「ものを見える」状態となる。

ちなみに。販促のキャンペーンページについては、すでに作られたルールをいかして作るというものだ。その販促のテーマにあわせて考えるべきことはあると思うのだが、概ねすでに作られたルールがあるので、いちからつくるときほど考えることは多くないように思う。
※同じことがコーディングでもいえると思う。

店舗における、お客様係(スター)と、試食販売のバイト


McDonald’s Kiddie Crew / chazzvid

例えるなら、UIデザイナーさんの仕事は、マクドナルドでいうお客様係「スター」をたくさんうみだす仕事のように思う。
デザインというと、美しさ=店員の美しさ、をはかるものだと思われちゃうかもしれないけど、違う。
スターは、店の構造や混雑状況を把握して、適切な資材補給や掃除、座席の配置、お客様の案内を行う役だ。

土日の昼のピーク時には、お子様連れが多いので、必ずいすの状況に目をくばり、お子様用のいすをぴかぴかに磨いて準備しておく(お子様のいすがきれいというのは、お購買者であるお母さんにとって、プラスの印象にのこる)。フロア全体に目を配り、トレーをもって右往左往しているお客様に対しては座席を用意して差し上げる(うろうろしてるその方自身困ってるし、他の方の通行にも支障がでてしまう)。平日15時頃の穏やかな時間は、お子様づれの方にマックの風船を差し上げるなど(私が勤めてた店舗は、その裁量があったのでやらせてもらえた。お客様と話すきっかけにしてこいといわれてたように思う)。

お客様がスムーズに買って、食事をして、気持ちよく席をあとにできる環境づくりをするのが「スター」の役目だった。スターを育てるには、当然教育工数がかかる。特に、私のような飲み込み悪いアルバイトに対しては余計工数がかかってた(そして私はスターになったけど、いい成果はのこせなかった。)。でも、優秀なスターの方がまわしてる店舗は壮観だった。混雑しているけれど、その方がレジ前やフロアにいることで、お客様がうまく回転し、変にイライラしてまっている方がいらっしゃらなかったのだ。本当に不思議だった。

他方、試食販売設計や計画があまり必要になくでたとこ勝負だった。店舗設計とか、トイレの場所とかさえもしらなくても接客できるのだ。アルバイト前にもらった数枚の資料をよんで、だいたいその内容で元気に声をだしていれば、お客様があつまってきた。お給料がもらえた。でも当然、ブ○ボンのお菓子を販促してたときに「ぽん酢はどこですか?」ときかれても、私は何一つお客様へ対して、こたえられなかった。近くのパートの方を探して、ひきつぐだけでせいいっぱいだった。

一つの店舗で、スター(お客様係)がほしいのか、一時的な試食販売の販促要因がほしいのか、そんなの時と場合による。
必要なのは、どっちかを見極めることじゃないだろうか。

ただ、スターをうみだす工数が必要なのと同様、PSDやHTMLファイルの裏に存在する計画や設計が大事な反面、その大事さがいまいち認識されづらいように、個人的には思っている。理由は二つ。

一つ目は、制作者はそのルールを明文化して論じることじたいが、とっても手間がかかることだから。(以前制作会社で勤務してる際、大規模リニューアル案件やったとき、仕様書を作るための費用をいただいたことがあったけど、○十万というような、けっこうな金額になったような気がする。こういう費用を払える企業なんて少ないと思う。)
二つ目は、そのルールを運用していく発注者側も、内容を把握しコントロールするのは大変だから。ルールが明文化されてなければなおさら。計画や設計部分の費用や期間をとらず「UIデザイン作って」といっても、いいものがでてくる確率は相当低いんじゃないかな・・・と私は思ってる。だって、店舗全体を試食販売のでたとこ勝負なスタッフでうめつくすようなもんだもん。準備をほとんどしてない販促スタッフに、店舗の案内やお客様のさきをよんだ仕事をしろといっても、それはどだい無理な話だと思うんだ。

現場の人間がすべきこと


Painting / pennuja

じゃあ、デザインの価値を社内でアピールして、適切な費用なり工数なりとろうとするなら。まず、自分自身で「計画、設計部分に相応の工数(期間と費用)が必要である」根拠を考えぬくことが必要なんじゃないかな、と思う。
計画や設計が入ったら、当然期間も費用も積みまされる。理想をいえばどんな案件でも計画や設計をしっかりすべきだけど、そんなん理想論だ。

スピードリリースが命の販促ページ(単発)つくるときには、ルールなんてつくっても、今後適用しないことが多い。そんな使わないルールを設定するくらいなら、一分でもはやくリリースすべきだと思う。他方、サイトのメイン導線のデザインにおいては、計画、設計部分に相応の工数(期間と費用)が必要だと思う。もし必要だと自分で感じたら、その価値を伝えまくるしかない。その伝える努力なくして、デザインの価値が認識されることはないと思う。

たとえば説得材料とするなら。

・ページの一部デザインや機能を変更したことによる自社での改善効果データを、常にだしておき、社内や意思決定者にアピールしておく

・設計、計画ふくめたデザイン作業が、最終的にはプロジェクトの目的につながることを説く。
私が過去担当していた某BtoB会社は、「環境にやさしい会社」をブランディングするためサイトリニューアルをしたい、という明確な目標意識をもっていた。その達成にどうしても必要な設計や計画なんです!と話をすすめると、費用や工期など納得をいただきやすかったので。

・また、設計、計画ふくめたデザイン作業を実施したことによる、検証方法もあわせて論じる。
目的とする導線の改善ができたかの他、ECなら、商品の売り上げは上がったか、客単価は上がったか。サービスなら、会員数やアクティブ率は上がったか。ブランディングでいうなら、企業やサービスのイメージの向上につながったか。認知度が上がったか。検証方法はなかなか難しいけど、指標としては何かしらを考えてもっておくべきだと思う。

・必要ならコンペで制作会社にデザインをしてもらい、より設計、計画ふくめたデザイン作業がよいところを検討する

などだろうか。価値を信じるのであれば、「うちの会社はデザイン重視してないからなー」といってあきらめるのではなく、まずは自分が説得材料そろえるところからやってみるのがいいんじゃないかなと思う。

それでもだめな組織はありそうだけど・・・その場合は自分のやりかたをかえるか、転職しかないように思う。。残念だけども(´・ω・`)

——

なんかうまくまとめきれなかったけど。以下「デザインの効果測定に関する調査報告書」にはこんなデザインの効果が論じられている。

・デザインが経営に与える効果は、「売上増加」等の「経済的効果」に留 まらず、品質向上等の「モノづくりに与える効果」、ブランド向上等の「ブランド・ イメージに関する効果」、社員の意識変革等の「意識・風土面の効果」等、多面的 な効果
経済産業省:「デザインの効果測定に関する調査報告書」より引用

そうそう!働いてる人みんなのモチベーションアップにもなるんだよね、いいデザインって。

デザインについての定義、成功要因抽出、デザインマネンジメントのケーススタディ、デザイン導入のための社内でのロードマップなど、とにかく具体的事例や提案がたくさんあるのがすてき。デザインの効果について悩んでいる人にとってはすごく役立つ論文だと思う。長いけど、なんてたってタダで読めるし、ぜひデザインの現場で今日も戦っている皆様に読んでほしいなーと思うのです。

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