ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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大阪市天王寺区が「デザインの力で行政を変える!!」ことができない理由とその解決策案

大阪市天王寺区が「デザインの力で、行政を変える!!~天王寺区広報デザイナーを募集します~」という報道資料を発表した。

知人のデザイナーが激しく「5.報酬 なし」項目について「ありえない!」とつぶやいているのを見て、気になってみてみたのだけど。。

一言でいうと、「制作物に名前をだすから、プロかそれに準ずる実力者ににただで発注、もしくはアドバイス(ディレクション)してね。」という内容にみてとれた。そりゃプロのデザイナー怒るわと納得した。

でも。。実は、正直にいうと、私は「報酬:なし」については、方向性としてはありなんじゃないかと思っている。
区の財政がかつかつで、お高いデザイン費用なんてはらってらんないのかもしれない。ECサイトデザインする現場ですらそんな状況なんだから、デザインくそくらえの行政なんてきっともっとひどいんだろう。だから、少しでもデザイン費用を抑えた上で、クオリティ高い制作物をつくりたいという意向は理解できなくもない。
ただし、「デザインの力で、行政を変える!!」ために人を集めるには、条件があると思う。

・「ボランティアである」と明示したうえで募集すること、また、ボランティア前提で集めてきた人をマネンジメントする体制がととのっていること

・市のプロジェクト単位で募集すること、もしくはどんなプロジェクトに関わってほしいか明記すること

以下、その理由について語る。

※2/6追記あり@文末

現在の天王寺区デザイナーの募集の問題点

天王寺区デザイナー募集の問題点は以下だと思う。

・金銭的には無償であるが、ボランティアとは明記していない。
どんなミッションをもったプロジェクトで、デザインが活用されるのかが明記されていない

この2つにより、たいていの人からすれば「制作物に名前をだすから、プロかそれに準ずる実力者ににただで発注、もしくはアドバイス(ディレクション)してね。」としかとりようがないんだと思う。

「金銭的には無償であるが、ボランティアとは明記していない。」について

まず、この天王寺区の案件は金銭的には無償である。多くの人にとっては奉仕活動という意味合いでの「ボランティア」とみなされると思う。
実はボランティアの定義は、自発的に社会に貢献すること、という意味をもつ。多くの人の認識をふまえつつ、このブログでは「自発的に社会に貢献すること」と定義して話を進める。

「ボランティア」の語源は、ラテン語の「ボランタス(voluntas)自由意志」という意味があります。
ボランティアを一文で定義づけると「自発的な意志に基づいて、人や社会に貢献すること」といえます。
引用元:http://www.miewel-1.com/volunteer/katsudou.html

ボランティア活動は以下の「自発性・主体性」「社会性・連帯性」「無償性・非営利性」「創造性・先駆性」を基本理念とする(特に行政の資料等において)。

ボランティア活動の基本理念
・自発性・主体性
人から強制されたり義務としてするのではなく、自らの自由な意志に基づいて行う主体的な活動です。
・社会性・連帯性
ボランティア活動は特定の人だけのものではありません。また、誰かが誰かに仕えるというものでもありません。 誰もが社会の一員として、いきいきと豊かに暮らしていける社会をつくり出していく活動です。
・無償性・非営利性
報酬を求めて行う活動ではありません。ただし、実費や交通費など必要経費は報酬に含めません。
・創造性・先駆性
社会で、地域で何が必要とされているのかを考え、常に活動を見直して、よりよい社会をつくっていく活動です。
引用元:http://www.miewel-1.com/volunteer/katsudou.html

天王寺区は、「デザインの力で、行政を変える!!」とうたって「社会性・連帯性」「創造性・先駆性」をうたっているように私にはみてとれた。

ただ、本当に「デザインの力で、行政を変える」ことをするなら、そのデザイナーに相応のコミットをしてもらうことが必要だ(有償無償とわず)。デザインというのは本来「計画に 基づき、作る(創る、造る)こと」「創ること、考案すること、意図すること」なのだ。「デザインの力で、行政を変える!!」とまでいいはるなら、デザインワークを通した計画〜アクション、効果測定といったひととおりの活動(建物のバリアフリー実現とか、区のwebサイトのアクセシビリティ改善とか)がまずあるべきではないだろうか。しかし、天王寺区の仕事内容はこうだ。

 以下の項目のいずれか、または両方も可。
・天王寺区役所が実施する事業のポスター・チラシのデザイン案作成
・天王寺区役所が作成するポスター・チラシ・ホームページレイアウトに対してのデザイン面でのアドバイス
※ デザイン案の作成・アドバイスについては、区役所での打合せのほか、電子メール・電話・ファックスによるやり取りでも可能です。
引用元:天王寺区サイト

デザインの作業は「デザイン案作成」「アドバイス」だ。
デザイン案作成の前段階の計画について、関われる記載は一切ない。
これで「デザインの力で、行政を変える!!」ができるのだろうか?

また、あえて「ボランティア」と記載しないことで、行政側のマネンジメント責任を曖昧にしているように私には見えた。
ボランティアを管理する、となると、管理側の責任が当然とわれる。自発的に集まってきてくれた人たちとはいえ、自分の生活や仕事がいそがしいときはそちらを優先してしまう可能性が人たち。そういう人たちと一緒に案件をすすめていくのは、相当な管理側のマネンジメント能力が必要だ。
「ボランティア」と記載せず「デザイナー」と記載することで、行政側がそのマネンジメント責任をもたず、「行政」と(プロで責任持ってる風の)「デザイナー」として扱いたいのではないか、とみえてしまう。

「どんなミッションをもったプロジェクトで、デザインが活用されるのかが明記されていない」について

自発的な市民の参加を促したいのだとしたら、「こういう公共性を達成するミッションをもった、プロジェクトで参加してほしい」という具体性が必須だ。

無償でコミットしてほしいなら、共感を得られるミッションを掲げるのが筋。
例えば「○○公民館で車いすの人が玄関から入りづらくて困っているから、玄関部分のリニューアルをしたい。その手伝いをしてくれる方がほしい」「区のwebサイトは色盲の方が非常によみづらいので改善してほしいと要望がきている。色盲の方でもよみやすいよう、プロのアドバイスがほしい」など。

しかし、天王寺区の募集要項には、そうした行政側のミッションがまったくみえない。

天王寺区が実施する事業のホームページ・ポスター・チラシのデザイン力を上げることで、区民の皆さんへこれまで以上の情報発信を行えるようにする

情報発信力をあげたその先に見えるものって何なんだろう?
誰に利益があるの?困ってる誰が助かるようになるの?
その先にみえる社会像が提示されてないのに、コミットしろ共感しろなんてどだい無理な話じゃないだろうか。

こんなんで、「デザインの力で、行政を変える!!」なんて、できっこないよね。

まとめ

というわけで。

・金銭的には無償であるが、ボランティアとは明記していない。
・どんなプロジェクトでデザインが活用されるのかが明記されていない

行政が都合がいい案件において制作をしてくれる人がほしい、でもマネンジメントの責任はもたないよ(返礼としての名前公開はあるからそれでゆるしてね)、としかよめない

多くの人が「制作物に名前をだすから、プロかそれに準ずる実力者ににただで発注、もしくはアドバイス(ディレクション)してね。」と認識し炎上してしまう

となってしまうんじゃないのかなあと思うのだ。

本当に「デザインの力で、行政を変える!!」ための解決策案

もし本当に「デザインの力で、行政を変える!!」ことをしたいなら。
行政が「ミッションに共感するボランティアを集めて、マネンジメントする覚悟をもつ」この一点を認識したうえで、プロジェクトのミッションを掲げ、計画段階からデザイン関係のボランティアの参加を促し、マネンジメントしていくことが唯一の解決策ではないだろうか。

デザイン思考による人間中心のイノベーション from Hiroki Tanahashi

棚橋弘季氏のこのスライドのP33、気仙沼の復興支援の「Project MARU」にあるように、気仙沼の復興をミッションに産業創出を目指す、とかね。

住んでる場所も、性別も、年齢も分野も超えて。
この天王寺区の試みが、デザインの力で、組織、社会を変えていけるアクションにつながるといいなと思う。

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この記事を書いた意図

私は大学3年〜社会人一年生あたりで、ミッションに共感した某環境NGOで広報スタッフとしてボランティアしてた経験があります。規模は相応にあったとはいえ、有給専従スタッフが3-4名のNGO団体だったので、当然「無償」での活動でした。

また、現在はデザインの現場に従事している人間でプロのはしくれでもあり、デザインは組織や社会を変える力をもつと信じています。信じているからこそ、今回の天王寺区の報道資料については改善の余地があると思ったし、「プロだからこそ無償ではたらくこと自体がNG」という論に100%全面的には賛成できず(公共性あるミッションで共感したものであれば、どんどんみんな参加していってほしいなあと思ってる)、こういう厳しい記事を書くに至りました。

——–
※2/6追記
2/6、天王寺区は応募条件を「ボランティアでの協力」に変更したそうです。>>該当報道資料

私が論じてた問題点のうち「・金銭的には無償であるが、ボランティアとは明記していない。」という表記の点は解消されたました。大多数の人が指摘していた「プロのデザイナーを侮辱しているのではないか」という論には、「ボランティア」という名称をだすことで公益性を訴求している面はあるとアピールできる可能性はあるでしょう。

でも、「・どんなプロジェクトでデザインが活用されるのかが明記されていない」という点においては解決していません。
また、「天王寺区デザインパートナー」の方達の行政へのコミット度については、業務内容(デザイン案作成、アドバイス)というレベルでは「行政を変える!!」とまではいくのは正直難しい、と組織でデザインの前線にいる人間としては思わざるをえません。今回の募集をはじめの一歩、として、市民がどんどん行政のプロジェクトデザインに関わるようになっていくといいのかもしれませんね。

市民のボランティア参加を促すには、目指す社会像の提示が不可欠です。

このプロジェクトを通して、「どんな社会を作りたいのか。」「誰の何を解決したいのか。」というミッションを、区長の水谷氏にはぜひ示してほしいな、と期待しています。

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