Web制作会社から今の事業会社(旅行系ECサイト)に転職したての頃、先輩から「Web制作会社と事業会社は違うから」と、はっきり言われた。
私はもともとWeb制作会社時代はずっとディレクターで、転職後もディレクター。事業会社は『数字を追える』というミッションがある程度で、制作現場はそうかわるもんではないのかなーとうすら思っていた。
それから4年。あのとき先輩が言っていた「違い」をあらためて痛感する日々が続いている。
例えるなら、同じ人間だけど、男と女くらいの違いはある。男と女のラブゲームにたとえつつ説明してみる。
Web制作会社と事業会社のラブゲーム
Web制作会社(以下「制」)
事業会社(以下「事」)
(制)納期すぎたのは あなたのせいよ
(事)弱いユーザーの反応をー!
(制)見積もり超えたのは あなたのせいよ
(事)素敵な御社のデザインでー!(叫:リカばるのー)
(制)お久しぶりね あなたが発注するなんて
(制)噂をしてたの ディレクターの勘ね
(事)仕事のせいさ いつでも頼るのは
(事)御社のことだけさ
(制)嘘つきね
(事)困らせる
(制)納期きついね
(事)わかるだろ
(事&制)詰めて与えて 工数を〜
(制)納期すぎたのは あなたのせいよ
(事)か弱い担当者の尽力よー
(制)納期決めて
(事)納期決めて 帰りたい
(事&制)修正あり 変更あり 古い仕様
(事&制)Web制作会社と事業会社のラブゲーム
(制)知らないどこかに 発注なんかしちゃ
(制)いやなの いい会社がここにある
(事)キレイなUXデザインには他社もいる
(事)弊社のサイトに実装するのさ
(制)約束を
(事)契約書で
(制)幸せを
(事)ユーザーへ
(事&制)せめてひと案件のコンペをば
(制)納期すぎたのは あなたのせいよ
(事)か弱い担当者の尽力よー
(制)納期決めて
(事)納期決めて 帰りたい
(事&制)修正あり 変更あり 古い仕様
(事&制)Web制作会社と事業会社のラブゲーム
替え歌元:男と女のラブゲーム
違い1:案件の進め方
(事)弱いユーザーの反応をー!
(制)見積もり超えたのは あなたのせいよ
(事)素敵な御社のデザインでー!
(制)お久しぶりね あなたが発注するなんて
(制)噂をしてたの ディレクターの勘ね
(事)仕事のせいさ いつでも頼るのは
(事)御社のことだけさ
(制)嘘つきね
(事)困らせる
(制)納期きついね
(事)わかるだろ
(事&制)詰めて与えて 工数を〜
事業会社はWebサービスの伸び(ECなら売上)が第一の目標。
他方、制作会社は納品物の対価を得ることが目標。
制作会社が一度納品したけど、結局事情があって納品直前の変更&再発注・・・という事態は相当あるということに気がついた。
Webサービスのトラフィックは、それこそ毎日状況がかわる。
主力として売ってた商品が、ある日突然政治問題でうれなくなるとかさ。。(例えば旅行会社では、日中日韓関係悪化&円安による各社が相当のダメージをうけている状況。もーマジで死ねる)
でも、サービス運営側としては、急な状況変化にも対応してリカバリー策をうち、サービスを運営しなきゃいけない。だから、発注した内容を突然取り消して、違うことを依頼するというのが相当の頻度で生じるのだ。Web制作会社側からすればこうした急な変更や工数調整は非常に難しいものがある。
私もWeb制作会社時代は「月頭に発注量を決めてください!」「発注にはできるだけこたえてあげたいけど、ページ1日でつくって納品しろとか急な依頼は無理です!」「前もって決めない担当者は計画性がなってない!」とぷりぷりしてたけど・・・そうもいってられない事情があるなあと痛感した次第である。当時のクライアントさん達には嫌な思いをさせてしまっていたように思う。猛反省。
だいたいECで月頭に発注量全部決まってるような状態だったら、PDCAまわすのが相当遅くなる。状況変化についていけてないサービスになること必然。
たぶん、最近軒並み大手Web制作会社でスタッフを企業に派遣させ常駐させる形態が増えてる理由もここ。発注するサービス運営社側が「そうもいってられない事情」を抱えすぎてて旧来の発注納品形態だと耐えきれないからではないだろうか。
違い2:関わるデザインの範囲
(制)いやなの いい会社がここにある
(事)キレイなUXデザインには他社もいる
(事)弊社のサイトに実装するのさ
(制)約束を
(事)契約書で
(制)幸せを
(事)ユーザーへ
(事&制)せめてひと案件のコンペをば
今事業会社にいるが、ふと気が緩むと「Web制作会社は愛がないなあ」と一瞬感じてしまうことがある。制作会社からのアウトプットに対し、「こっちの事業状況も把握して考えてよね」と感じてしまうのだ。
でも、それは事業会社側からの勝手な意見だとも思う。
事業会社にいるディレクターの場合、見た目のUIはもちろん、その奥にあるサービス運営のバックグラウンドも知った上での設計が求められる。
バックで商品をどうすれば作りやすくなりフロントにだせるか、とか、どういうテンプレートをつくれば販促で活用度が高いか、とか、システム側からどういう形式でデータを出力してもらえばUIチューニングしやすくなるか、とか。
永江一石さんの言葉をかりれば、事業会社のディレクターには「ネットで集客するにはビジネスをネットに最適化する」というデザインも含まれるのだ。
このデザインを日々やっていると、制作会社がどんなに業界研究してきても、物足りなさを感じるときがある。「いいたいことはわかるけど、現場はそれじゃまわらない」とか。でも、それを制作会社に求めるのも違う。決めるのは、事業会社の人間(そこにコミットしている人間)だ。
永江氏のような、サービスのありかたやその後の運営そのものまでコミットできる制作会社なんて、そうはいないと思う。Web制作会社は、納品したことへ対価をもらうのが基本だから。
もちろん、一部の大手制作会社(IMJ・ネットイヤー等)はUXデザインを請け負っていて事業のコミットをしてくれる部分もあるけど、まあ相当お高いと思う(ネットイヤーは50万円かららしい)。そして彼らはおおまかな未来の方向性を示してはくれるけど、日々の業界事業状況とサービス運営をすりあわせて「ネットで集客するにはビジネスをネットに最適化する」ための施策をだし続けていくのは、あくまで事業会社の現場の仕事。
長い間デザインしてきた会社はつーかーでWebデザインにおいては通じ合える面はあるだろうけど、サービス運営全体を考える場合必ずしもいいとは限らないこともでてくる。
だから、時にはコンペだってすることもある。
制作会社にいたときは、「自社のほうが他社より絶対クライアントをわかっているし、何よりデザインの品質はクライアントよりわかってる」と本気で思ってた。驕っていたと思う。クライアントが考えているのはWebデザイン納品物だけではないのだ。そのことを、私は過去の自分へつたえてあげたいと思う。
変わらない点:やっぱり納期は命です
一方で変わらない点だってある。
(事)か弱い担当者の尽力よー
(制)納期決めて
(事)納期決めて 帰りたい
(事&制)修正あり 変更あり 古い仕様
(事&制)Web制作会社と事業会社のラブゲーム
事業会社にいるとコントロールはできるけど。
やっぱり納期がきつい。それはかわらない。
※自社の納期が厳しい理由はこちらで説明
制Web作会社のディレクターだったときは、窓口の担当者に相談すればよくたいてい一本化されるのである種効率的だったとも思う。でも、事業会社にいたほうが、関係者が何を欲してるかを現場ですぐきけるので、こまかい納期交渉を各部署に自分でできる=納期完全厳守進行が苦手な自分にはむいてるかも・・・と思った。
この点、どちらがむいてるかは個性によると思う。例えば私は大人数に細かく目をくばって統率&調整していく能力が弱いため、長期的な案件におけるウォーターフォール的納期命な進行は苦手だ。他方、数字を達成するためという名目をもって、手持ちの少ない工数と人数で常に何かを作り検証し続ける・・・というアジャイル的納期命方式が非常になじみやすかった。
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最終的にいいたいのは。
「Web制作会社、事業会社、それぞれ状況が違うことも理解したうえで、制作体制をつくるとき(発注するとき)には気をつけましょう。」ということ。
アジャイル的に都度都度修正を加えながら進めるプロジェクトでは、制作ボリュームも見積もりも可変だし、事業そのものへのコミットも必要とされるから、Web制作会社へ発注をするのはむいているとはあまり思えない。内製や常駐を考えるほうがベターかも。
他方、ボリュームがある程度一定で見えて企画から参加の場合(特に広告系案件、新卒採用等きまった期限で用いてチューニングの必要性が多くはないサイト等)や定常的な連載等の更新は、きっとWeb制作会社の力が発揮できると思う。
※歌詞はけっこー勢いでかいてるので、なんかいろいろつっこみどころあると思われる。
キレイなUXデザインてなんだよとか。自分でもかいててなんだよと思うが、よいユーザー体験?と思えばいいのかな。
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