ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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モバイルフロンティアとお弁当づくりから考える、モバイルUXデザイン #MobileFrontier

モバイル「フロンティア」
フロンティアとは、「北米大陸における、開拓地と未開拓地の境界」のこと。モバイルが登場したことにより、UXデザインは新たな未開拓地にふみこんでいる―。モバイルフロンティアの著者Rachel Hinmanは、開拓時代の凄まじい西漸を例とし、皆が開拓にふみだせるよう、この書籍のタイトルをつけたのだろう。

6/1(土)にモバイルUXデザインワークショップ:「モバイルフロンティア よりよいモバイルUXを生み出すためのデザインガイド」出版記念イベントに行ってきた。覚書と、モバイルUXに現場で関わって思ったことをまとめてみようと思う。

モバイルフロンティアの内容まとめ

■1章:いかりを上げる
・デスクトップコンピューティングからモバイルへ
・PCのデスクトップ制約から解放
・いかにルールのない新しい世界へいくか、という案内ガイド
■2章:モバイルNUIパラダイムの登場
モバイルNUIパラダイム
UIの進化
CLI コマンドラインインターフェース 一部の人しか使えない

↓パラダイムシフト

GUI
グラフィックユーザーインターフェース 見たままが得られる
フォルダやごみ箱といったオフィスを模したメタファを利用
GUIが拡張しつづけた結果使いづらいものに 限界に達した
「全部をみせつづける」

パラダイムシフト ←いまここ!GUIとNUIをこえる

NUI
ナチュラルユーザーインターフェース 操作をしたまま得られる
ユーザーのコンテキストに応じてその内容をみせる

OUI オーガニックユーザーインターフェース
機能と形態の一体化。
日常生活に機械がとけこむ
■3章:デンバーのピーナツバター
とらえづらいモバイルの利用状況を明らかにする
・モバイルならではの体験を作ることにフォーカス
・注意散漫、行動が遮られることを前提にデザイン
・認知的負荷や機会費用をできるだけ減らすこと
・現場でデザインする 会議室でブレストするんじゃなくて現場で考える
■4章:形態の変化
ユーザーはつながりのなかにいる
「自分の仕事をウェブページをデザインすると考えることをやめ、代わりに複数のコンテクストで表示されるコンテンツをデザインすることだと考える」
115P・ユーザーの体験
デバイスがかわってもユーザーの体験はつづいてる
ユーザーもデバイスもそれひとつだけで存在しているわけではない エコシステム・エコシステム
タッチポイント 人々 ビジネスプロセスと技術環境
ツイッターはお友達がいるからオモチロイ 使えるデバイスもってなかったらだめ
単体でものが存在するんじゃなくて、インフラ、法的規約、友達・・・いろんなつながりのなかにものがあるということ

■5章:モバイルUXパターン
モバイルのパターンランゲージとは?
・クラウドとアプリがモバイルUXの構成単位となる
・すぐれたモバイルエクスペリエンスは徐々にその本質を明らかにする
・コンテンツがインターフェースになる
・モバイルにふさわしい入力方法を使う
・タスクを終わらせることよ、さようなら
■6章:モバイルエクスペリエンスをデザインする
・ダブルダイヤモンドモデル
調査 問題提起 プロトタイプ 微調整 完了
・PCで慣れた感覚と違うものをつくるのには、プロトタイプして試してみるのが一番☆
・戦術的プロトタイピング どんな画面をつくろうかな?スケッチする
冷酷な編集の秘訣
・体験的プロトタイピング ユーザーの問題を解決してるのかな?
ストーリーボーディング
ボディーストーミング
クーポンのエラーも他と同じようにバルーンが良いですか?それとも単なる文字列で良いですか?
■7章:モーションとアニメーション
モバイルUXのためのデザイン要素12点
潰しと伸び、予備動作、舞台演出、逐次書きと原画による設計、振りきりと後追いの工夫、両端づめ、運動曲線、副次アクション、タイミング、拡張、実質感のある絵、訴える力

モーションとアニメーションについて、cgworld.jp で解説動画があったのではっとく!実際みた映像はちがうんだけど、参考にはなる~!


↑これは「予備動作」についての解説。ジャンプするとき、キャラクターは直前に膝を曲げるとか、まさに人間がしている動作をしている。
だからこそなめらかにみえる。

■8章:感覚の目覚め
・視覚以外の感覚も、ある
・タッチ、ジェスチャー、音声とサウンド
・タッチ・・・・おしやすいおおきさ、姿勢と操作しやすい配置、UIを意識しない
・ジェスチャー・・・ひっぱる+新しいジェスチャー、フィードバック(操作した感じがする)、根気と想像力(ユーザーにつかってもらって判断する)
・音声インターフェース・・・分岐がたくさんあって自由が選べ無限のサイクルになる、のではなく、ユーザーのレスポンスに応じ順をおう。質問無限サイクルではなくする
複合的な情報判断が音声だとすごくしづらい
音声でフォーム画面をみたときのような感覚
「入力確認完了」ではなく「今は入力です、次は確認ですよ」という提示の仕方が大事
■9章:新しいモバイルのかたち
・電子決済がふえたら、電車の料金も130円(小銭ではらいやすい価格)とかぴったりのではなく132円とかのコストにあう細かい価格設定もできる とか
・携帯電話が銀行のかわりに
・ローマ法王の撮影 精神的障壁がへった とってあたりまえに。

全体として強く共感したのは、「プロトタイプを作る」ことの重要性を強く述べていることだ。
GUIからNUIに移行する過渡期の現在。
「NUIに対する答えはまだまだみんなもってないから、とにかく作って現場でさわってみて検証してつくりなおし、それでユーザーに素敵な価値を提供しよう!」というのが本書の主旨だ。

モバイル「フロンティア」なの?

現在のGUIからNUIの過渡期を、著者は開拓地と未開拓地になぞらえている。
フロンティア開拓は、マニフェスト・デスティニー(明白なる運命)で、神の与えた使命。
今のモバイルUXデザイナーは、神の与えた使命を果たすためにいる・・・そう考えると、日々の仕事がおもしろくなりそうな気もする。

でも。私は「フロンティア」という概念が、自分が向き合ってる、モバイルUXデザイン業務にぴったり・・・とまでは思えなかった。
フロンティア開拓の歴史は、とても利権狙いにまみれたものだ。ユーザー中心を提唱する、モバイルUXデザインの流れとはちょっと違うんじゃないのかなあ、と感じたのだ。

フロンティア開拓の背景には、アメリカの資本家・農場主・労働者3者の利権狙いがある。北部の資本家にとっては工業製品販売の市場拡大、南部農場主にとっては綿花栽培の耕地拡大の狙いがあった。また、政情不安のヨーロッパから流入したたくさんの移民たちは、かつての権力にとらわれない場所を求めていた。

結果、マニフェスト・デスティニーというかけごえのもと、インディアン(ネイティブ=アメリカン)からの土地のとりあげが正当化され、彼らを奥地へ奥地へとおいやることとなる。
その姿が最も顕著なのが、7代大統領ジャクソンだ。彼は「ジャクソニアン・デモクラシー」を展開し、男子普通選挙の実施、公立学校の普及につとめた。他方、インディアン強制移住法を制定し、人種差別政策を推進した。

もちろん、そのどこか遠くのすてきな何かを目指す勢いはすごいと思う。
でも、その勢いは誰かの利権のためであり、誰かがおいやられて泣く世界だ。
それを「フロンティア開拓」として、モバイルの発展になぞらえるのが、はたしてあっていることなのかなあ・・・と私は感じてしまった。

モバイルUXデザインについて、すごく個人的で僭越な思考かもしれないが。
私はモバイルUXデザインは、お弁当を作る概念に似てるんじゃないかなあとずっと考えている。

モバイルUXデザインは、お弁当づくりに近い

お弁当は通常の料理行程に加え「さめてもおいしい」「朝の限られた時間内で作る」という制限がより多くつきまとう。この制限を毎日クリアしてると、「限られた条件内でもどうにかなるか!あはは!」というよくわからん自信がわいてくる。

お弁当づくり=制約のあるUXデザイン -母の弁当と納豆天ぷらテロの思い出-

お弁当づくりは、通常の料理工程と違う点がよりでてくる。通常のおうちご飯用の料理と、お弁当作成の関係性は、PCのGUI中心のデザインとモバイルUXデザインの関係性に、非常に近いと思うのだ。

現場でデザインするということ

たとえば、「現場でデザインする 会議室でブレストするんじゃなくて現場で考える」
お弁当はその場所場所で食べたいものは当然ことなる。

遠足で高尾山にのぼったときには、塩がちょっときいたおにぎりや、唐揚げなどの固形のおかずがベターだと思う。山頂に上るまで汗をかくからしょっぱいものがうれしかった。また、リュックサックの中は登山で相当ゆれるので、水分がでる可能性がある炒め物(炒め汁を片栗粉でかためたものだとしても)よりは、唐揚げなどの固形のおかずのほうがおいしく食べられる。
せまめのベンチとか、足場が不安定めなところで食べるので、おにぎりや唐揚げのようなしっかりグリップできる固形物は食べやすいと思う。

他方、受験のときのおかずでうれしいのは、私はとんかつだった。
「受験に勝つ!がんばれ!」という、お弁当制作者である母からのメッセージがダイレクトにつたわってきたからだった。(ちなみにとんかつは、消化がなかなか大変なので、食べ過ぎ注意ではあるけれど。笑)

現場で自分がかんじたことを、こんどはお弁当のむこうにいる相手を思ってつくる・・・なんだか、モバイルの画面もおんなじだと思うのだ。

インターフェース要素ではなく、コンテンツにつなげる

また、「インターフェース要素ではなく、コンテンツにつなげる」について。

多くの場合、タッチUIのコンテンツ要素には、メッセージと操作可能であることを示すアフォーダンス両方を含める必要があります。iPadのgoogle マップで角が折り返されている表現は、タッチUIのよい例です。
モバイルフロンティア

お弁当でも同じ。よくある例としては、花形に飾り切りしてだしで炊いたにんじんの煮物だ。かわいくて、いろどりがよくて、しかもカロチンたっぷりな栄養があるおかず。普通の料理では彩りをかんがえたとき、ソースやかざりの唐辛子で色づけする。でも、お弁当では広さや容量の制約、水分の制約がある。だからこそ、崩れづらく栄養もある内容をいれざるをえない=デザイン要素そのものがコンテンツそのものとなる状態が発生するのだ。

九州大学大学院助教の佐藤剛史氏は、「すごい弁当力!―子どもが変わる、家族が変わる、社会が変わる」の中で、食卓(弁当)についてこう述べている。

子どもにとっての理想の食卓は、普通の食卓だ。一緒に食べる人がいる食卓、食事の時間が楽しい食卓。家族のために作った料理が並ぶ食卓だ。
たかが食卓。しかし、子どもは食卓で育つ。食卓で愛情も食べて育つのだ。だから親は食卓の上に、「あんたが大切なんよ~」というメッセージを載せなければいけない。
弁当に込めた親の思いは、子に伝わる。
「すごい弁当力!―子どもが変わる、家族が変わる、社会が変わる」

相手が大切なんだよ、というメッセージ。
それって、私たちモバイルUXデザイナーがサービスにこめた思いをユーザーに伝えることにとっても似ていると思う。
たとえば、私は旅行のECサイトを運営する会社でモバイルUXデザイン業務にかかわっている。

「旅行いくんだ、いいねえ!あなたの旅行にいい航空券はこんなのも、こんなのもあるよ!」
「むふふあなたの旅行はマニアックだねえ。そんなマニアックなものそろってまっせ☆」
「スマホで旅行買うのには、パスポート名も入れるとか、どうしても入力項目多くなってしまうんだ。うう、入力大変だよね。ごめんよう。でもできるだけ、あなたがらくらく入力できるようにするね。」

まさか直接ユーザーにそう語りかけることはできないけど、画面のUIを通じて、私たちは伝えることができる。ユーザーが何かしようとしている気持ちによりそうことができるのだ。

だから、私は「フロンティア開拓」という、情報発信者目線で新たな何かを開拓していこう、という感覚よりは。ユーザー中心の「お弁当づくり」という精神でもって、モバイルUXにむきあっていきたいと思ってる。それだけのことが、じつはすんごく難しいんだけどね。
お弁当のむこう、画面のむこうにいる人へむけて。きっといつか、一人でもおおくのひとに、とどけられたらいいなと思う。

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