webディレクターの阿呆な研究

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webディレクターの採用と転職活動の難しさ

「webディレクターがいない!」
ここ最近、採用関係に携わるwebサービス運営の事業会社、web制作会社、代理店、人材派遣会社、どの立場の方もwebディレクターの採用が難しいと嘆いている。

もちろん、webディレクター自体に応募している人はいるそうだ。しかし、「箸にも棒にもかからない」ということがままあるように見える。
それは応募者から見ても状況は同じ。複数の有名サービスから転職のお誘いや内定をもらっている人がいる半面、転職活動が相当厳しい状況を迎えている人もいる。

なんでそんな状況になってしまっているんだろう?ここ10年web業界でwebディレクターやってくる中で、現場からみた感覚をつらつら書いてみようと思う。
※あくまで私とその周囲の状況で、業界全体にあてはまることではない可能性もあるので、ご留意ください。

「webディレクターがいない」理由

私が現場からみて、ざーっとあげられるのが以下5点。

(1)継続しているweb業界の成長と、大手を中心としたwebディレクター等の採用の強化
(2)参入障壁の低さと価格下落がもたらす、低賃金や過重な労働
(3)web業界の技術的進歩に伴うwebディレクターの担う領域の拡大
(4)webディレクターの業績や能力を、公に公開することが難しい。また、公の場で発掘することも難しい。
(5)転職者と会社のマッチングの難しさ

(1)継続しているweb業界の成長と、大手を中心としたwebディレクター等の採用の強化

ここのところのちょっと浮いたり沈んだりの好景気不景気問わず、web業界は成長の方向性に向かい続けている。
たとえば、ECサービス。

(1)国内電子商取引市場規模
平成24年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模については、広義※1BtoB-ECは262兆円(前年比101.7%)に拡大し、狭義※1BtoB-ECは178兆円(前年比104.1%)に拡大している。
また、平成24年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、9.5兆円(前年比112.5%)まで拡大している。EC化率※2は、広義BtoB-EC:25.7%(前年差+1.4%)、狭義BtoB-EC:17.5%(前年差+1.4%)、BtoC-EC:3.1%(前年差+0.3%)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展している。
(中略)
なお、2020年時点での日本・米国・中国の越境EC規模は、最も拡大する仮定をおいて推計した場合、約2.3兆円に達すると推計され、越境ECは大きな可能性を有している。
電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(METI/経済産業省) より引用

国内は堅調にのび、また国境をこえたやりとり(越境EC)も大きな可能性を持っている。
実際、2013年はネットスーパーの台頭や、オンラインストア作成サービスSTORES.jpの隆盛(スタートトゥデイが運営会社を子会社化)など、引き続き業界の動きは活発だ。2014年も、amazonの予測出荷のニュースに度肝をぬかれたとおり、通販は引き続きサービスを磨きつつのびる分野ではあると思う。

当然、サービスを磨くには人がいる。
ゆえに大手の会社(リ○ルート系列の会社とか、ソーシャルゲーム・アプリを始め広いサービスをしているC社とかD社とかL社とかR社とか)、人数は中規模だけども開発力のある会社(お料理系のC社とか)が、業界随一の待遇でサービス開発や運用ができるwebディレクターを採用している。
また、上記の会社や他のサービス運営企業では、慢性的な制作工数不足に陥りがちだ。あふれた分はweb制作会社へ発注するので、やはり制作会社でもwebディレクターが必要不可欠となる。

ここで、大量の業務を「まわせる人」は重宝されて、待遇面がよい状況で会社に囲われる状況となる。
転職をしようにも、会社がだそうとしないよううまく囲う…そんな動きをしているのではないかと思う。
つまり、転職市場にとりたい人がでてこない。

(2)参入障壁の低さと価格下落がもたらす、低賃金や過重な労働

囲われる人がいる一方で、どんどんお給料が安くなっていく人もいるのも事実だ。
web業界は参入障壁がとても低い業界だ。そもそもテキストエディタと画像加工ソフトがあればwebサイトは作ることができる。大学等高等教育の場でのwebデザイン技術の教育の普及もし、業界に新卒で技術力をもった人が入ることも増えてきた。10年前からすると隔世の感。また、スキル次第で紙媒体のデザイナーがwebに転向したり、デザイナーがディレクターになったりなどキャリアチェンジも可能な状況である。

簡単なものを作れるひとは増えるので、当然その結果、市場では価格下落が発生する。
制作物の価格が下がれば、当然制作会社はおかねをもうけるために考えるのはただ一つ。「労働者に支払う給料に対する、納品物のコスパをあげる」だ。
技術的に優れた人は納品物の品質向上のための勉強に力を注ぐが、それはほんの一握りだと思う。たいていは労働時間を長くすることでカバーしようとするのが実情だ。
労働時間の超過がいきすぎると、裁量労働制という名の残業ゼロ徹夜上等の不夜城が完成したりもする。

こうした過重な労働対給料が発生しやすい環境でもあるので、子供がいる家庭の人や、福利厚生がしっかりした企業からの転職はどうしても躊躇してしまうんじゃないかと思うのだ。

(3)web業界の技術的進歩に伴うwebディレクターの担う領域の拡大

また、web業界は技術的な革新がずっと続いている分野だ。
webディレクターひとつとっても、基礎的なデザイン知識、コーディング知識、チームビルディングやクライアント交渉等のコミュニケーション能力をベースに、さらにUI設計能力、コピー書く能力、アクセスログを分析する能力、定性調査する能力、プログラミングに対する知識、webマーケティングの知識だとか、求められるものがとにかく多い。技術革新とサービスの改善とともに、年々その領域は広がってきてるように思う。

技術は年々アップデートされていくので、常にディレクターは幅広い分野を勉強しつづけ、業務をまわしていく必要がある。
勉強しつづけることができず、安穏としていたらすぐに自身の市場価値は下落する。結果、ゆるい環境にいる人は気づいたら転職市場で価値がないとみなされてしまう事象も頻繁に発生する。

たとえば、大手の紙媒体に勤務している知人。ここ数年自社web媒体のweb担当をしているが、メインは紙媒体だし、年功序列的な環境に嫌気がさして転職を考えてみたら「求める待遇(給与)での採用が全然ない」「低い年収の仕事しかない」という話をしていた。
「自分がやっていた仕事の領域が相当せまい」ということも同時にわかり、しかし現職では仕事の領域を広げることもままならず八方塞がりだ・・・そんな話をきいて、私はとても人ごとだとは思えなかった。

(4)webディレクターの業績や能力を、公に公開することが難しい。また、公の場で発掘することも難しい。

デザイナーはデザインポートフォリオをつくれるし、エンジニアはgithubにコミットするとか明確な成果物がある。
しかし、webディレクターは自分の成果物を公にだす機会がとても少ない。外部の人が自分の成果をみて、声をかけてくれる・・・ということが難しい職種であるように思う。

たとえば私の場合、開発案件におけるIA設計UI設計、UXデザイン、進行管理が現在の業務だが、いずれの書類とも外部にだしてはいけない。
成果物として動くサイトはあるが、そのグラフィックデザインをしたのはデザイナーだ。どこまで自分がやったのか、というのが説明をつくさないとなかなか人に通じない分野なのだ。

しかも書類を外部にだしてはいけないし、成果についてもCVRとか売上とかの生々しい数値を論じることはNGだ。
したがって公の転職活動の場においても「この施策で月に+2日分の売上増加になりました」とか、数字を語るのに相当考慮しながら進めねばならず、骨がおれる。

(5)転職者と会社のマッチングの難しさ

webディレクターは技術的専門職でもありつつ、デザインチームのリーダーとしてデザイナー、コーダー、時にはエンジニアやマーケター、サプライチェーンやカスタマーセンターの人も一緒になったチームを率いることも求められる。専門職の側面ももつ、コミュニケーション能力も相当に求められる職種だ。
だから、そのコミュニケーションや仕事の志向が会社の文化とうまくあってないと、チームがまわらず崩壊することもよくある。


※引用元:「サドは一芸を極め、マゾは多芸に通じる」ディレクターの性格と案件のマッチング

この図で私は完全にS的事業の志向の持ち主。
論理的な改善を好み、サービスの深いところまで知って意思決定を自分でしたいタイプだ。数字を伸ばすような施策立案とPDCAを勢いよくまわすコミュニケーション能力はあっても、クライアントとの交渉能力とか営業のようなコミュニケーション能力は一切持ち合わせていない。あと緻密な進行管理もできない。いわゆる受託開発における「使えない人」の代表格だ。えっへん。
きっと、私の真逆の方もたくさん業界にはいるんだろうなと思う。

また、S的事業の中でも、GMOペパボのようにクリエイティブな方向性をとても大事にする企業もあれば、楽天やDeNAのようにデータドリブンな会社もある。この方向性もあってないと、組織の意思決定手法になじめず、仕事も思うように回らないことが多くなる。また、あった文化にはまれば、仕事の成果もあがるやすくなるし、長く居続けたいと思う会社環境になりえると思う。

こうした志向と、会社の文化をお見合いするのが採用面接の場だ。webディレクター職はコミュニケーションをもってこれまでの成果や志向を説明しなければいけないので、非常に難易度が高い採用面接となると思う。スキルが合致していても、企業の文化になじめず退職していく方たちに私は何回も出会った。(制作会社でも、事業会社でもそれは同じ。)

転職したいwebディレクターがやればよさそうなこと案

スキルと待遇が見合わず転職に足踏みしてる場合や、スキルが足りないとしたら。
webサービスを運用している会社で3年間、とか期間決めて下剋上目指すのがいいのかなと思う。
web系の企業の多くは年功序列くそくらえだし、サービス運用してるとどんどん仕事はわいてでてくる。先輩ディレクターのアシスタントを最初はしつつ、だんだん業務になれてきたら先輩から仕事を奪っていく。先輩だってどうせ忙しいので後輩が仕事を奪うのは大歓迎だ。
また、そうやって仕事をうばっていったうえで勉強もしていけば、勉強してない年長の先輩は比較的簡単にぬかすことができる。かくして下剋上は成立するのである。
このあたりの話は分裂勘違い君劇場の指摘が素晴らしい。

ところが、この単純作業というのが、いくらでも工夫の余地のあることが、とても多い。そもそも、けっこうよく考えなきゃならないような要素がかなり多いのに、忙しいもんだから、無理やり単純作業であることにしてしまっているケースがたくさんある。だから、企業によっては、もとは時給1000円だったバイトちゃんが、「こいつ、もしかしたら、このぐらいの作業もできんじゃないの?」とか思われるたびに、どんどん難易度の高い仕事を振られるようになり、気がついたら、一年もたたないうちに、年収400万とかのアシスタントディレクターになっているケースなんか、それほど珍しくもない。ぼくの知り合いには、そういう人がけっこういる。
(中略)
ここが、いちばん重要なポイントなんだけど、職位が低い間は、「会社からもらっている最大の報酬はスキル」であって、その資産価値に比べれば、「もらっている給料なんて、倍になろうと半分になろうと、誤差」なんですよ。
無学歴、無職歴、無実力のニートが年収500万円の正社員になる方法 分裂勘違い君劇場

この点私は激しく同意。どこでもやってけるレベルのスキルを培って貯めていく期間を人生のうち数年間区切ってとるのは、キャリアアップに必須の作戦だと思う。(なお「会社からもらっている最大の報酬はスキル」というのを会社側がいいだしたらその会社はクソ認定していいきがする・・・)

数年間で区切って、というとこがミソ。その会社で完全な下剋上で天下取ってお給料もらえれば万々歳。天下とまではいかなくてもある程度のスキルためたら企業のブログで執筆したり、勉強会を主催したり登壇するなどして公の場に名をあげ、よりよい待遇の会社に転職をすればいい。

自分にあう企業を選ぶ方法、企業が自社文化にあう人をみつける方法に関しては、私もいまだに確固たるものはない。
けど、勉強会とか同じ業界の先輩等、つながる人をふやしていけば、転職者は企業文化の生々しいを仕入れることはできる。会社も所属する人から面接候補者の人となりなど生々しい情報を仕入れることができる。お見合いの場において、確度の高い情報を交わしあえるようにはなると思う。

※なお、「アシスタントとして入りやすい」についてはweb制作会社のほうがレベルは高く入る難易度は高いと思う。web制作会社は技術を売っている会社だから相当の技術的スキルがもとめられるので。また、下剋上についてもweb制作会社のほうが知識面等の勉強は割としっかりみてくれるので下剋上はしづらい印象。
サービス運営事業会社のほうが、かんたんな集計とか資料まとめとか、よりアシスタントとして入りやすい仕事が多い。あと技術を売りとするわけではないので、勉強しない人も絶対にいる。ゆえに下剋上しやすい。(制作会社に4年、事業会社に5年強いて両方みてるのでそう感じてます)

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以上、現場からのwebディレクターの採用および転職活動に対する見解でした。
採用も、自分のキャリアパスを描くことも、なかなか難しいお仕事だなあと思います。

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