わりと影響でかく、ステークホルダー多く、先がみえづらい開発案件を複数抱えるに至った。どれも進行管理に骨の折れる案件。
私はディレクター業務のうち、進行管理が苦手だ。
新卒時には最低限のデザイン・コーディングの作業内容はしっていたものの。
致命的に進行管理の仕事ができず、先輩方に迷惑かけまくってしまっていた。
十年かけてようやく人並みぎりぎりセーフにはなれたけど、自分が価値を発揮できる仕事分野ではないなあと思っている。
さてそんなことを考えてた矢先。
産業技術大学院大学「人間中心デザイン」にてこんな話をきいた。
課題分割
・人は複雑な課題をより単純な課題の組み合わせに分割しようとする。
・機械音痴のひとは、課題分割を行わないなどの特性があることを示した。
・課題分割・・・タスクを詳細化する能力
・機械音痴の人はできない、ではなく、やらない。あるいは仮定するのとは全く異なった形で課題分割を行う。(やらなくても生きていけるから・・・)
・課題分割方略を教えて(朝起きて服を着る話)すると、達成時間、エラー率が統制群よりよくなる。
ウィザード形式は、課題分割をしないので、課題分割しない人にとっては使いやすい。
人間中心デザイン入門 -産業技術大学院大学 「人間中心デザイン」
この課題分割の話、なるほどなあと思ったものの。
「でも課題分割できても、なぜかすぐ進行管理そのものができるようにはならなかったなあ」と思った。
なんで進行管理は、課題分割できたとしても、私のようにできない人がうまくなりづらいんだろうか?
進行管理がうまくいかない理由
自分の経験と照らし合わせて、進行管理がうまくいかない理由って2点あるなあと思っている。
- 課題分割ができてない
- 併走する課題を認識できてない
このうち、「課題分割ができてない」については、その案件状況に応じた課題分割できれば割とすぐできるようになるんだけど。
「併走する課題を認識できてない」についてはできるようになるまで時間がかかるし、難易度が高いなと思う。
例えば料理で考えてみる(単品料理と献立)
料理で考えると。
「課題分割ができてない」は「レシピを知らない」。
「併走する課題を認識できてない」は「一品は作れても、献立をつくる過程を認識できていない」となると思う。
一品料理の工程例
例えば「豚ともやしとピーマン炒め」。
「豚ともやしとピーマン炒め」がつくれない人に対して、以下レシピの工程を教えると、そのレシピどおりに作れば普通に食べれる物を作ることはできる。
「豚ともやしとピーマン炒め」の工程は以下だ。
1-1:豚バラ肉180gに醤油おおさじ1、すりおろしたショウガをもみこむ
1-2:ピーマンは千切りにしておく
1-3:豚バラ肉を中火でいためる
1-4:火がとおったら豚肉をいったん出す
1-5:もやしとピーマンを強火で炒めて、概ね火が通ったら豚バラを追加
1-6:塩コショウで味付けして、完成
しかし、これが献立となったらどうなるだろうか。
献立一品一品の工程例
仮に1汁2菜のシンプルな献立と仮定する。
・主菜:豚ともやしとピーマン炒め
・副菜:なす煮浸し
・汁物:じゃがいもと人参の味噌汁
・ごはん
それぞれの調理工程はこんなかんじ。
2-1:なすを洗って、高さ5cmくらい、幅1-2cmくらいに切る
2-2:皿になすを並べ、ラップをかけ、レンジのゆで野菜コースでチンする
2-3:ごま油おおさじ1、ぽん酢おおさじ2、砂糖小さじ1、だし汁100mlくらいまぜて煮びたしの汁を作っておく
2-4:なすがあついうちに、2-3のつけ汁につけて冷蔵庫へいれて冷ます
2-5:ねぎ、おかかなどをちらして盛る
3-1:じゃがいもと人参の皮をむいて一口程度に切る
3-2:だし汁にじゃがいもと人参をいれて火が通るまでゆでる
3-3:火が通ったら、味噌をときいれて完成
4-1:無洗米なので、計量して2合分を炊飯器にいれる。
4-2:水は2.3合分くらい入れてスイッチオンしてたけるのを待つ
4-3:たきあがる。
たぶん料理としてはカンタンなものばかりだ。
でも、献立で作ろうとすると、とたんに難しくなる。
試しに1-1から4-3までこの順番でつくってみてほしい。
ごはんがたきあがる頃、「豚ともやしとピーマン炒め」は冷めて水っぽくべちゃべちゃになってしまってるだろうし、ごはんをまってる人はお腹と背中がくっついていると思う。
献立を作る時の進行
献立をつくるときの肝は、「時間がかかる工程を把握」と「特性把握」と思う。
「時間がかかる工程を把握」は例えば以下工程だ。どれも時間がかかるけど、放置もできるのがポイント。
- 2-4:なすがあついうちに、2-3のつけ汁につけて冷蔵庫へいれて冷ます(20分)
- 3-2:だし汁にじゃがいもと人参をいれて火が通るまでゆでる(10分)
- 4-2:水は2.3合分くらい入れてスイッチオンしてたけるのを待つ(早くて30分、遅くて50分)
「特性把握」は以下となる。
料理をおいしくする(まずくしない)コツ、といえばいいのかな。
- 1-4:火がとおったら豚肉をいったん出す
→肉は炒めすぎると固くなる - 1-5:もやしとピーマンを強火で炒めて、概ね火が通ったら豚バラを追加
→野菜炒めは水分でぺちゃっとならないよう、強火で短時間で炒める。食べる直前に作る。 - 2-4:なすがあついうちに、2-3のつけ汁につけて冷蔵庫へいれて冷ます
→味がしみるのは、あついものが冷める過程。味をしみこませたいなら冷ますの大事。 - 3-3:火が通ったら、味噌をときいれて完成
→味噌とき入れるまでは放置しててだしの味含ませてもOK。ただし、味噌いれた後は沸騰させたら台無しなので、常にコンロを見はる状態のときに実行。
以上の「時間がかかる工程を把握」と「特性把握」をすると、工程は以下のように再構築される。
- 工程A:特に時間がかかる系工程を潰す
- 4-1:無洗米なので、計量して2合分を炊飯器にいれる。
4-2:水は2.3合分くらい入れてスイッチオンしてたけるのを待つ - 工程B:時間がかかる系工程の準備をする
- 2-1:なすを洗って、高さ5cmくらい、幅1-2cmくらいに切る
2-2:皿になすを並べ、ラップをかけ、レンジのゆで野菜コースでチンする
3-1:じゃがいもと人参の皮をむいて一口程度に切る
2-3:ごま油おおさじ1、ぽん酢おおさじ2、砂糖小さじ1、だし汁100mlくらいまぜて煮びたしの汁を作っておく
※2-2を待つ間に3-1、2-3をやる。 - 工程C:時間がかかる系工程をつぶす
- 2-4:なすがあついうちに、2-3のつけ汁につけて冷蔵庫へいれて冷ます
3-2:だし汁にじゃがいもと人参をいれて火が通るまでゆでる - 工程D:Cやってる間に対応
- 1-1:豚バラ肉180gに醤油おおさじ1、すりおろしたショウガをもみこむ
1-2:ピーマンは千切りにしておく
1-3:豚バラ肉を中火でいためる
1-4:火がとおったら豚肉をいったん出す - 工程E:仕上げ
- 4-3:たきあがる。
2-5:ねぎ、おかかなどをちらして盛る
3-3:火が通ったら、味噌をときいれて完成
1-5:もやしとピーマンを強火で炒めて、概ね火が通ったら豚バラを追加
1-6:塩コショウで味付けして、完成
→皿にもってだす
この過程においては、4品それぞれ課題分割を行い、献立全体で並列させて、進行を再構成している。
テキストで書くとなんかすごそうだけど、実際台所でやってるとこみると普通である。
世のおかんが何気なくやってることばかりだ。
献立を作れるようになる方法
一品しか作れない人が、いきなり献立を作ろうと思うとぶちあたる壁は、この「それぞれ課題分割を行い、献立全体で並列させて、進行を再構成」する過程なんじゃないかと思う。
「それぞれ課題分割を行い、献立全体で並列させて、進行を再構成」する能力を育てるには、既存のワークフローを体で覚えることが一番だと個人的には思う。
料理だと、既存ワークフローで私が一番よかったのが、行正り香さんの「19時から作るごはん (講談社+α文庫)」だった。
献立で数品つくる過程を、上記のように進行を再構成した状態で提示してくれており、しかもどれもカンタンでおいしい。
この過程を1冊とおすと、料理における「時間がかかる工程を把握」と「特性把握」の基礎が身に着くと思う。
基礎が身に着くと、単品から二品、三品と増やしていくのはそんなに難しいことではないし、新しい料理にチャレンジするときも献立の中でどう組みいれればいいか、というのが身に着くと思う。
たとえば献立のアンチパターンとして最たるものは、野菜の炒め物オンパレードだと思う。
「仕上げ」工程で炒めが集中すると、先につくったものから水っぽくなるし、フライパン一個でそもそもオペレーションできないので(作っては洗うはめになる)、時間もかかることとなる。
第一なんか同じ調理方法のものばかり献立にあると、飽きる。
だとしたら、煮物を先につくって、味をふくませてる間に炒め物する、とか工程組み合わせたほうが合理的だし、食べてるほうも食感や味にバリエーションあってうれしいんじゃないかなと思う。
とにかくここは、数をこなして、食べてみておいしいかマズいか、嬉しいか嬉しくないかトライ&エラーしてくとよい。
おいしいものができたら、自ずともっと美味しいものをつくりたくなるし、特性把握の知識も仕入れたくなってくる。
「一品料理できるから、献立作れなくてもいいじゃん」
もちろん、中には「豚ともやしとピーマン炒め」だけつくれればいい、という人もいると思う。
「一品料理できるから、献立作れなくてもいいじゃん」派。
たしかにその時一回はいいかもしれないけど。
毎日ごはんをたべるのに、単品のみだと栄養かたよってしまうので望ましくはない。
「他の料理はお母さん/妻/彼女がつくってくれるから大丈夫」という考えもあるかもしれない。
でも、それは「それぞれ課題分割を行い、献立全体で並列させて、進行を再構成」を放棄しているともいえる。
webデザイン制作におけるワークフローでも、プロジェクトのごく一部は担ってもらえるけど、プロジェクト全体を担ってもらうには不安な人っていると思う。
新卒のときの私のように。
そういう人って、えてして「それぞれ課題分割を行い、献立全体で並列させて、進行を再構成」する力が不足しているのだ。
そんな人がいきなり献立全体をまかされると、炎上→病むコースまっしぐらになる。
「既存ワークフローを体でおぼえる」のも大変だと思うけど、小さく失敗しながら、そこをがんばるしかないと思う。
1週間分の献立全てを構築できる、進行管理エキスパート的な人たち
ちなみに、私の周囲には、進行管理のエキスパートなディレクターさんもいる。
たぶん一週間の献立全体を考えて、そのための食材を事前に仕入れ、毎日きちんと作れるタイプの人だ。
ちなみに私は、一週間の献立全体を作るのは難しいなーと思う。
仕事の具合によって作れるタイミングよみづらいのはあるが、唐突にこれが食べたいとかの食欲ドリブンでごはん作りたいからだ。
計画しすぎると料理楽しくなくなるし。。。
もちろん食材使い切るためのコントロール(共働き夫婦が、パルシステムの宅配サービスを4年続けた結果の考察 参照)はしてるけど、完全に使い切ることができず、食材的にもむだがでるときも発生する。
アジャイル的な進行方法でうまく日常生活はのりきってるけど、冷蔵庫できゅうりが溶けてる等の事象もたまにみえるので、そのへん自分の進行管理の限界かなーと思う。
ちなみに普段のwebデザイン、サービス開発のプロジェクトも、組織内にて相応の根回しはしたうえで、やっぱりアジャイル的なやり方になってしまう。
WBSきっかりひいて、実行できる人尊敬するぜ・・・。
「それぞれ課題分割を行い、献立全体で並列させて、進行を再構成」する力を養う方法
それぞれ課題分割を行い、献立全体で並列させて、進行を再構成」する力を養う方法として、一番なのは、やっぱり『やらざるをえない環境に身をおくこと』と思う。
案件が大炎上しない程度に、制作会社、事業会社で本数こなして成功・失敗をしまくることが大事だ。
また、そこそこの失敗があること前提に、プライドへし折られても気にしない心をもつこと、かなあ。
そうやって積み重ねて、毎日献立つくりつづけると。
ある瞬間から、たとえ失敗はしていても、その数の分自信がわいて「自分は大丈夫」と思えるようになる。
この自信はラーニングの数でもあるから、自ずとプロジェクトも成功に導ける進行管理ができるようになると思う。
ちなみに。
仕事というより、体に「課題分割と再構成」をしみこませる訓練としてよいのは、やっぱり料理、特にお弁当づくりだ。
・やらざるをえない環境=お弁当友達つくる
・影響=自分のみ まずくてもおいしくても自分の責任だし。
うまくできるようになると、誰かに食べてもらいたくなる。
お弁当の時間が楽しみになる。
私は納豆天ぷらテロ等の失敗しつつ、前職ではお弁当をつくるのが本当にたのしかったし、お弁当を作ることで「課題分割と再構成」が身についてきた。
あと、お弁当を周囲の先輩とかこむことで、コミュニケーションの総量もぐっと増えた。
プロジェクトがだんだん効率的にまわせるようになった要因になったのかもしれないと、今にして思う。
—-
というわけで、進行管理が死ぬほど苦手で(人並みレベル程度に)できるようになりたい人はお弁当をつくるといいよ、というお話に着地しました。
食欲ドリブンな方はぜひお試しあれ。
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