ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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デザイン解析論(つくるデザイン解析) -産業技術大学院大学 「人間中心デザイン」

img_140913産業技術大学院大学、人間中心デザイン履修証明プログラムの復習レポ第4弾「デザイン解析論(つくるデザイン解析)」です。

「デザイン解析論」のうち「さぐるデザイン解析」ではRを使った対応分析を学びましたが。
「つくるデザイン解析」ではRを使ったコンジョイント分析を学びます。

デザインと感性について

デザイン=用と美
使用目的が明確に設定された、機能性を備えた美的なものを創るための発想や設計、計画

感性とは

  • 主観的で説明不可な働き
  • 先天的な性質に加えて知識や経験の認知的表現
  • 直感と知的活動の相互作用
  • 特徴に直感的に反応し、評価する能力
  • イメージを創造する心の機能

「機能性」を備えた「美的」なものを創るための感性

  • 機能性:生理的感性(皮膚を傷つければ「痛い」、熱湯に触れば「熱い」と感じる感性)
  • 美的:心理的感性(ある対象を「美しい」と感じかどうかの感性)

産業革命以降の工業デザインの発展と、感性に注目が集まってきた流れをまとめると以下のようなかんじでしょうか。

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産業革命以降工業化がすすみ、工場の機械にあわせた商品生産がおこなわれます。
結果、見た目も使い勝手もいけてない外観のものがでてきて残念なことに…

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「見た目も使い勝手も良いものを作れる人が必要だ!」とドイツではデザイナー育成のためにバウハウス(デザイン学校)が生まれます。

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そこで生まれたのが表現主義と機能主義。
「作者の感情をこめた美しい商品を作ろう」という表現主義。
「無駄な装飾はいやじゃ!工業デザインや大量生産にあう美しい商品を!」という機能主義。

表現主義・機能主義でゆれるが、バウハウスは機能主義をとるように。
(その後ナチス迫害をうけてバウハウスは閉鎖になるんだけど…)

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やがて工業は大量生産が進み、デザインされた商品が普及します。
供給が需要を追い越すので、需要を喚起するための戦略=マーケティング戦略に注目が集まりました。

結果、製品が多様化したり、(機能というより)外観を変えて流行を変えるという動きが主流となります。

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そして消費者は本当にほしいものしか購入せず、質をもとめるように。
『使用者の気持ちや感情に合う「本当に価値のあるもの」が求められる「感性の時代」』と感性工学の創始者・長町三生氏は表現しています。

世界史の流れの中でデザインを見ていくと。
今(人間中心デザインを学ぶ)私たちにとってはほんとにあたりまえな、使ってる人の様子や感情の動きを見て、デザインを考える・・・というのは、決してあたりまえのことではなかったんだと実感します。

1970年ごろ、当時生産システムと品質管理の研究を行う傍ら、日本大手の企業の指導を行っていたところ、品質管理綱領に記述されていた「顧客のための品質管理」という文章が真実でないことに気が付き、新たに顧客のニーズに合致した商品開発手法はどうするべきかを研究し始めた(長町ほか、1974)。

いわゆる“Human-centered”とか“Customer-centered”な考え方をどうすれば商品開発手法となるか、という課題である。Donald A Norman がEmotional Design(Norman, 1988)を提唱して以来 今でこそEmotionをデザインに取り入れることが当たり前になったが、当時はそのような思想は皆無であった。

長町三生 感性工学と商品開発イノベーション より引用
Kansei Engineering and Product Development Innovation

「感性工学による研究開発」を学ぶグループワーク

img_140914_6授業では、照明器具デザインをテーマにして、「感性工学による研究開発」の一連の流れを、グループワークで学びました。

「20代女性の寝室に置く」というようなターゲット設定をし、そのターゲットに最適なデザインコンセプトを抽出していきます。

※画像は感性工学とは – kanseidesign Jimdoページより引用しました

テスト設計

私たちの班は、「(私たちのような会社員が、)オフィスでのコミュニケーションを活性化させるための休憩室の照明」というテーマ設定をしました。
デザインの構成要素は以下。
ターゲットの設定にあわせて考えます。

色温度 ※以下2水準が決まっている
電球色、昼光色
タイプ ※以下から3水準を選択
ペンダントライト、シーリングライト、シャンデリア、ダウンライト、スポットライト、ブラケット、フロアスタンド、卓上スタンド、フットライト、足下灯
スタイル ※自由に3水準設定
北欧、和風、アーバン

この組み合わせをまともにやると、2×3×3=18種類のデザイン案テストが必要ですが。
直交表の作成により、9パターンのデザイン案テストで大丈夫となります。
直交表は工業実験の中で生まれたそうで、『戦後日本の製造業の発展は直交表の効果と言う人もいるほど重要な手法』という記述もありました。

ところで。
サービス開発において、効率的なテストって大事だよなー、受け入れテストも効率的にやらないと死ぬよなー、と私は常日頃痛感しています。
効率的なテストにむけて、組み合わせとかバグをひきやすい組み合わせを探してテストするという、自分の知識依存でテストをしてきましたが。
そうした知識依存でなくとも、効率化できる組み合わせをつくることができるんだ!ということに目から鱗でした。

さてテストに戻り。
デザイン案を評価する評価項目(感性ワード)は以下としました。

評価項目 ※5項目設定
生理的感性の評価:「明るさ」
心理的感性の評価:「リラックス」「みなぎる」「ワイワイ」「開放感」

このワードを選ぶとき、私はどうしても心理的感性のワードばかり選んでしまい、生理的感性のワードをあげるのを忘れがちとなってしまっていました。
画面の向こうのwebデザインばかりしてると、実は生理的感性を考えることってほとんどないので。。(画面の生理的感性を考えるのは、PCやスマホのメーカーだから。)
ワーク中にメンバーから指摘されて、はじめて「おおおー!」となりました。
たぶんプロダクトデザインをする人は当たり前のように考えてることなんだろうなと思います。

アンケート調査

9パターンのデザイン案を、5項目の評価(10点満点)を行い、その点数を分析します。
まずはユーザーに9パターンのデザイン案を評価してもらうのですが。

実際の照明を前に評価したわけでなく、それぞれのもつイメージで評価となってしまった点が気になりました。
私は照明に疎いので「スポットライトとダウンライトって何が違うのー?!」「電球色と昼光色ってどっちがオレンジ色?!」と周囲にききっぱなしとなってしまっていました。。

また、みんながそれぞれ照明や景観を考えてて、ブレがでるなーとも感じました。

例えば「お化け屋敷の照明」がテーマの班。
自由に設定可能な水準が「学校の廊下」の時、私は最初自分が卒業した高校のイメージをしていましたが、設備がそこそこきれいな高校であまり怖いイメージがもてませんでした。
仕方なく金田一少年で誰かが殺されてそうな廊下をイメージするようにつとめたのですが、みんながどういうイメージをもっていたのかなあと気になってしまいました。
そんなもやもや妄想した状態で答えてしまった部分もあり、妥当性のある答えだったかはあやしいです(涙)

逆に「(自分の家の)お風呂場の照明」がテーマの班のときは答えやすかったです。
まさに自分の家の風呂を思い出して答えることができたので。

なかなか限られた環境下において、テスト設計をするのは難しいなと痛感しました。

Rを用いたコンジョイント分析と、デザインコンセプトの決定

集計したアンケートに対して、Rを用いてコンジョイント分析を行います。
私はコンジョイント分析なんじゃそら?という状態でしたが、以下を読んでもやもやがはれてきました。

コンジョイント分析とは、商品やサービスを構成する要素(規格や性能)の最適な組み合わせを探る手法です。
(中略)
「どれを重視しますか」という単純な質問と人気投票調査だけでは、商品開発のスペック決定には対処できないことがお分かりでしょう。
コンジョイント分析は、こんな問題をきれいに解決してくれます。
コンジョイント分析とは-商品の最適組合せ | シストラットコーポレーション

そうなのー!デザイン案も結局いろんな要素を訴求できないから、何かを強めたら何かを引く、といったトレードオフを考えることがほんと多いのです。
この意思決定に定量化された数値がだせる、というのは非常に魅力的。

例えば、構成要素の重要性。
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各デザイン構成要素「色温度」「タイプ」「スタイル」が、評価項目にどのような影響を与えているのか?をみることができます。
例えば「明るさ」だと、「色温度」「タイプ」「スタイル」のうち、「タイプ」が影響度でかいのがわかります。
「みなぎる」だと、影響が大きいのが「スタイル」。
目的にあわせて、どの構成要素の影響がどう響いてくるのかが可視化でき興味深かったです。

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また、「色温度」という切り口で見ると。
生理的感性の評価「明るさ」には「昼光色」がよいという結果がでたものの。
心理的感性の評価全てで「電球色」がよいという結果がでました。

今回私たちの班は、コミュニケーション活性化の目的のためには、心理的感性が大事!と考え、「電球色」を採用する意思決定をしました。

このように、構成要素の重要性、各色温度・タイプ・スタイルでの評価を見て、どんなデザイン構成要素が最適かを考えていきます。
そしてだした結果が以下。
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※補足
オフィスイメージはレコチョク様のイメージがぴったりで引用いたしました。
最初は画像検索でこのオフィスイメージ見つけたのですが。
元のページを見たら『「コミュニケーションが生まれる場であること。」それがレコチョクの求める、オフィス空間のあり方だ。』と記載しており、私たちが今回検討してたデザインコンセプトと一致してて驚きました(笑)

定量データを見て、皆で意思統一しながら優先順位を議論しコンセプトを固めていく…というフロー、とても私はやりやすかったです。
皆が一つのデータをもとに考えるおかげで、人それぞれの知識に基づいた「絶対このユーザーにはこっちがささるよー」「いや違うでしょー」というような対決がなくなるので。

感性工学の活用事例

感性工学について調べていたら。
「感性工学からみた四国の河川」というプロジェクトを見つけました。

様々なステークホルダーがいる『川づくり』の意思決定をするために、住人の方や河川管理者に、日ごろ川をどう思っているのか(感性)を知るべく調査したというものです。
調査結果がおもしろい!

例えば「美的調和性」の項目。
住人の方、河川管理者とも「風景になじむ」を求めているというのがわかりますが。
住人の方は、「穏やかさ」「落ち着き」「ソフト感」「なつかしさ」を求めています。
河川管理者は、「快適な」「そばによってみたい」「美しい」を求めています。

img_140914_10さらに同じ「風景になじむ」を考えても。
住人の方、河川管理者が想起するイメージは異なります。

「風景になじむ」の要素としての護岸の種類について、住人の「植生護岸」ですが、河川管理者は「自然石」をイメージする人が多かったそう。

このプロジェクトにおいて、その後このデータがどのように用いられて、どんな川がつくられるようになったのか?というのがとても気になります。
おそらく、感性工学のこの結果が全てではないと思うのです。
生物学的な視点、時間的な制約、気候、金銭的な点など、政治的なあれこれ等、意思決定に影響していく点は多々あるはず。

それでもこのデータが役立てられた瞬間はどんなだったんだろう?
普通に考えてどこかの会議で決まった議事録を見る、とかなので厳しいとは思うのですが、みてみたいなーと思います。

おまけ:グループワークのテーマについて

何回かこの授業でグループワークをしていますが。
所属する人、特にファシリテートする人とアイディアだす人に大きく影響される部分があるなと気づきました。

例えば今回のグループワークで、ある班は「男子が女性を家に招いてよい感じになるための照明」というテーマを提示していました。
男性4人のグループで、しかも金曜夜に考えたという点においてだいぶテンション高かったんだろうなあとは思うのですが(笑)
アンケート対象(=生徒)はそもそも女性が半分以下。
男女分けての分析はしない中、半数以上男性がアンケートにこたえるのです・・・

┌(┌^o^)┐ホモォ

と考えてしまいました。

いやめっちゃ知りたいんですけどね、「男子が女性を家に招いてよい感じになるための照明」(笑)
このあたり私も「できるかどーか知らんがやってみたい!」的アイディアはだすのですが。
最終的には「知りたいこと」より「現実的に可能で成果がでそうなこと」を無意識で優先してしまうのです。
つまり遊びが少ない。。(会社は「現実的に可能で成果がでそうなこと」を求めてくる社風のためあまり問題がないのです。笑)

学校という場において、完全に毎回違うメンバーの中でグループワークをしてると、自分のチームの中での立ち位置と意思決定について考えさせられます。
遊びのあるメンバーとチームを組んだらどうなるんだろう?
何が生まれるんだろう?

また次のグループワークが楽しみになってきました。
わくわく。好きなことを学ぶ大学・大学院って楽しいところです。

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