ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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発想ファシリテーション論(1:インプロビゼーション) -産業技術大学院大学 「人間中心デザイン」

imprro_img産業技術大学院大学、人間中心デザイン履修証明プログラムの復習レポ第5弾「発想ファシリテーション論」です。
「発想ファシリテーション論」では、主に以下3つのトピックを切り口に、メンバーと一緒にアイディアをだす→まとめあげていく過程を学びます。

  1. インプロビゼーション(専修大学 上平崇仁先生
  2. ファシリテーション(グラグリッド 三澤直加先生)
  3. KJ法(上平崇仁先生)

この「発想ファシリテーション論」、私の人生に深く関わるテーマでした。
現在進行形で進んでいる授業ゆえ、足りない情報はでてくるかもしれませんが、1つずつ分解して記事を書いていくことにします。

まずは、「インプロビゼーション」から!

「教え」られると、人は思考停止する。

上平先生の授業の中で印象に残ったワードは『「教え」られると、人は思考停止する。』。

こうするんだよ、という指示が示されると、幼児も大人も「この道具は、このために使うもの」という、機能的な固着を生みだしてしまう。
それ以外の使い方ができなくなる。
ワークショップと学び1 まなびを学ぶより引用

デザインの現場で教育している中で、この思考停止状況に人を導いてる気がして、ふと怖くなる瞬間が最近多々あったのです。

自分は10年間ワイヤーフレームを書きつづけてきた結果、定量定性調査をベースとし、発散・収束の過程を行って、比較的短時間で「組織で合意形成できそうなワイヤーフレーム」を書くことができるようになりました。
メンバーの書くワイヤーフレームを見て、「次にこういうこと考えて書いてみようよ、その次はこうしよう」「こういう視点もあるよね」という指導もしています。

でも、その視点って、『私の視点』でしかないわけで。
ワイヤーフレームを書く初心者にむけて、書くための過程を課題分割すればするほど、『私の視点』が強く反映されて、思考停止に相手を導いているようにも感じました。

教える相手は、ただただ『私の視点』に従うだけだから、たぶんツマらない。
『私の視点』には相手はならないから、自分はもやもやがのこる。
もやもや。もやもや。

どうすればいいんだろう?

まさに『「教え」られると、人は思考停止する。』は自分の状況を示しているようにきこえて、打開したかった状況そのものなのでした。

発散的な思考の基盤

アイディアは発散⇔収束の過程を繰り返して生まれるもの。
この発散の過程について、授業では以下のように話されていました。

基盤1:入力・分解・蓄積・想起・出力…の各プロセスにおける豊かさ
トレーニング例:オブザベーション(観察)、リフレーミング(違う見方に切り替える)、アイデアマラソン(雑巾を絞り、さらに絞り続けるように出力する)
基盤2:意識の裏側に隠れている、無意識/身体感覚
トレーニング例:体力をつける、栄養をとる、散歩する、瞑想する、交流法、演劇法(インプロビゼーション)

インプロビゼーションで、『基盤2:意識の裏側に隠れている、無意識/身体感覚』の基盤をトレーニングし、アイディアを発散していこうというのが今回の授業のテーマでした。

Let’s インプロビゼーション!

というわけで体育館みたいなホールで、体がなまりまくった社会人たちが軽い運動を開始します。
例えばこんなかんじ。

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他、ミラーリング、手拍子まわし、イマジナリーボール、サンキューゲーム等を行いました。

ワークがすすむごとに、どんどん体と同時に気持ちがほぐれていくなーと感じました。
理由は、自分がヘマをしても、誰かがそれをうけとめて笑ってくれたり、「YEAH!」でうけとめてくれたり、どーにかしてくれるから。

特に心にのこったのは、YES&YEAH!ゲーム。
私は人から出たアイディアに対して、攻撃的な意見をだし、相手を論破しようとしてしまう傾向にあります。
ものすごーーーく正直に言うと。
「仕事で意見をだすには意見と論拠が必要。論拠がないものは信頼できない。意見ださない=その人の存在意義がない。片方もしくは両方欠けてるモノに金とか工数使うのは無駄じゃー!いやじゃーー!!このあほんだらーーー!!!」と思っているので。

(ストレングスファインダーで「目標志向」と「指令性」が生みだすハイパー猪突猛進独善モードなんだろうなあこれ・・・)

でも、この姿勢が人の発散するアイディアをつぶしているのかもしれません。
どんなに意味不明、わけわからん発言がでても、そこにのっかっていくという態度が、アイディアの発散には必要なんだろうなあと思います。

例えばワイヤーフレームを書くという過程においてなら。
『メンバーのだしたアイディアにどんどんのっかっていって、たくさん案をだしていく→そこからメンバーと収束させて合意形成をとる』という進行方法が考えられます。
たぶん、自分がワイヤーフレームを書かない時には特に有効かも。

自分の持ち味である『定量定性調査をもとに、アイディアは一人で発散収束させ(その過程で簡易的ユーザーテストすることはある)、できたワイヤーフレームいくつかをメンバーにシェアし、最速で合意形成とる』というスピード命なスタイルと、『メンバーと一緒に発散⇔収束させていく』スタイル。

両方状況に応じて使い分けられたら、組織でのデザインってもっとおもしろくなっていきそうです。
他人のアタマをよりたくさん使っていけるようになれば、組織としての力も上がるしね。

メンバーの力、そして組織の力を活かしていくという目標に向かって、自分の進行のあり方をみなおすきっかけになりました。

ブレストのルールと、即興演奏

授業では、ブレストのルールについてこう述べられていました。

1:自由奔放
奔放な発想を歓迎し、とっぴな意見でもかまわない
2:批判厳禁
どんな意見がでてきても、それを批判してはいけない
3:質より量
数で勝負する。量の中から質の良いものが生まれる
4:便乗発展
出てきたアイディアを結合し、改善して、さらに発展させる

これって、即興演奏そのものなのです。

「渋さ知らズ de 怖いもの知らズ」のワークショップに2年連続で参加し、そのメンバーと「青鯖」というバンドを組んで即興演奏を続けてきました。

みんなが自由にその場で考えたことを、試してやってみて、相手の音をきいて、ダンスをみて、また音を出していく・・・その過程で、初心者のメンバーでも演奏した何かがちゃんと曲として成立していくのです。
特に渋さの不破さんの生みだすつながりはすごかった。
音と音、目線と目線、動きと動きが連なって、新たな空気が生みだされていくのに毎回ゾクゾクしっぱなしでした。

もともと私は、与えられた譜面をいかにうまく演奏するか、という手法で音楽と向き合ってきました。
小さいころ弾いてたピアノは発表会目指してのものだったし、吹奏楽部に入ったらコンクール入賞狙うために青春ほとんどささげて朝も昼も夜も練習漬け。
社会人になってスティールパンをはじめたときも「もっとうまくなりたい!!」と勢いあまって、下手なのに上級者向けなバンドに入って譜面の量をこなしていったり。

何かを自分が学んでいくという過程そのものが、とても面白かったのだと思います。
そんな中、フジロックで上原ひろみを見て「もっと音楽うまくなりたい!!」という欲望がわいてきて。

「ソロでも弾けるようになりたい」

「(上原ひろみすげーし、ジャズの)即興演奏やればうまくなれるんじゃね?!」

「ジャズも即興も全然できないけど、とりあえず渋さ知らズのワークショップにいってみよう!」

「なんじゃこりゃー!」

と相成りました。
渋さワークショップ初日は、何やればいいのかわからなすぎて、死にたくなりました。
涙目。

でも、みんなが楽しく一つのバンドで何かをだしていこう、という態度があったこそ。
支えられて、たくさん転びつつ演奏をつづけられてきたんだなーと思うのです。
自分一人の技術力アップを考えていたら、皮肉にも「まわりから発想を得て、それをメンバーに返して、さらに音楽を発展させる」という即興演奏手法にたどり着いてしまいました。

渋さ知らズのダンドリスト不破さん、そしてよく青鯖の演奏に一緒に入ってくれるバリトンサックスの鬼頭さん、入谷なってるハウスに呼んでくださるリマさん。青鯖のメンバー。
みんなが見せてくれる音楽への前向きな態度が、最近は一番の自分の勉強になってるなーと感じます。
音楽にも、そしてデザインの現場にも。

授業でも、上平先生はこう言っていました。

発想の最大の秘訣は、上機嫌でいること。

『メンバーと一緒に発散⇔収束させていく』スタイルをおこなうとき、これだけは絶対に守ろうと思います。
YES&YEAH!!!

「持ち運ぶためのペーパーバッグ」をつくってみよう

最後に、「持ち運ぶためのペーパーバッグ」をつくってみよう、というお題で、バッグのデザインのワークを行いました。

・「論理」以外の方法で考えてみる
・「関係」の視点をデザインに活かす
・アイディアの芽を摘まず、対話を重ねつつ拡げていく

バッグの単なるデコレーション、ではなく。
普段のバッグの持ち方を観察して、ブレストして、チームでアイディアをだしていきます。
体を使ってブレストしていく、ボディーストーミングの手法です。

DSC_1287

いろんなバッグがでそろいましたが、特に私が気になったものは以下!

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↑ねこバッグ。
お買い物のときに、バッグにねこのうでをつるしてもちあるくんだけど。
実はお子様用バッグ(子猫)もいて、小さいバッグを使わない時は親猫バッグが子猫バッグを加える、というデザインでした。

親子でもったらかわいいだろうなーとワクワクしてしまいました!

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↑酒屋さんとかでお酒をかったときに渡される袋。
酒がはいってた袋を開くとあら不思議。
レジャーシートにはやがわりするというものです。

外でごはんをたべたいとき、芝生が湿っていてすわりづらいなーということがよくあったので、これはほんとに商品化してほしい!と思います。

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↑商品持ち帰りに使った後、誰かに何かを渡す時に再利用できる紙袋。
バッグ形式になっており、中をひらくと・・・

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お手紙をかけるエリアが!

借りたCDや本をかえすとき、これにいれれば、つい「ありがとー!」と一言かきたくなりそうです。
結果、相手とのコミュニケーションも一つ増えるのです。

このバッグは大人気で、クラスでナンバーワンの支持率を誇っていました。

まとめ~体全体で「Yes&YEAH!」を表現するということ

アイディアを生みだす「発散」の過程で、体を使うことの重要性ってあなどれません。
相手の発言をきいたうえで無理やりにでも乗って「YEAH!」といったり、ハイタッチしたりしていくと、批判的な心までがなんだか変わっていくような気がするのです。
体が、心を制御する。

だから、もしメンバーの力をフルに引き出すブレストをしたいのなら。

  • 発散するのが目的であることを認識して、全体進行におけるワークショップを計画する
  • 自分は体全体で「Yes&YEAH!」を表現する

をやっていこうと思います。

ちなみにこのブログも、自分の手を使って書いて、何回も目で読み直します。
体で心を制御し、血肉としていく一環なのでした。

—–

そういえば、「YES&Yeah!」=「YouMe方式」の精神と同じなんですね。
「YouMe方式」とは、早稲田大学 友成真一先生の提唱されてた、互いの夢を実現しあう方法です。

(「YouMe方式」とは)「一人ひとりが自分の夢を追求する世界」から、「グループで互いの夢を支援しあう世界」への転換を目指したものです。
問題は「タコつぼ」ではなく「タコ」だった!? 「自分経営」入門 (ディスカヴァー携書)

友成ゼミではグループディスカッションを通して、「社会の中で、自分の人生をどう活かしていきたいのか?」を徹底的に考えさせられました。

例えば「新しい土地で困っている留学生(弱者)が学校(社会)に参加できる機会をつくりたい!」というメンバーが立ち上げた「ホストバディプロジェクト」。
私はその一員になって、留学生と学生を繋ぐイベントや仕組みを企画&webサイト運営してたりしました。
私はずっと、サービスと人をつなぐモノを、誰かと一緒に作るのが好きだったんです。

それが今の社会人人生にもつながっている。

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