産業技術大学院大学、人間中心デザイン履修証明プログラムの復習レポ第6弾「発想ファシリテーション論(2:ファシリテーション)」です。
今回はグラグリッドの三澤直加先生による『ファシリテーション』がテーマ。
発想が生まれる環境・ファシリテーションについて学びました。
ファシリテーションについて学ぶのは人生で2回目。
環境NGO A SEED JAPAN(以下A SEED JAPAN)で市民活動に関わってた時に教えてもらい、実践する機会をいただいていました。
教えてくださっていたのは、マーキーこと青木将幸氏、 コミュニティ・ユース・バンクmomoの木村真樹氏、「環境・持続社会」研究センターの田辺有輝氏など錚々たるメンバー。
様々なメンバーが集まる活動において、どう合意形成をしていくのか?どう会議を進めていくのか?について、A SEED JAPANでの経験が今の自分の会議スタイル(アジェンダと論点明確にして、限られた時間で合意形成してく)をつくっているといっても過言ではありません。
会社では進行役兼発案者になってしまい、『ファシリテーション』と呼べるような合意形成をしていく機会は少なくなってしまったものの。
市民活動の現場、そしてデザインの現場。
いっけんかけ離れてるようにみえる2つの現場が私はとても好きです。
でも「なんで市民活動と、デザインが自分の中でつながるんだろう?」という問いに、ずっともやもやしていました。
今回、その問いに答えるカギとなるのが『ファシリテーション』だったのだと気が付きました。
発想が生まれる環境
発想を抑圧する環境って?
まず、アイディアが生まれない会議はどんな会議?という話からはじまりました。
- テーマが不明瞭
- プレッシャーがある
- 突発的な発言が許されない
- 政治的視点を持ち込む
- 参加者の背景が見えない
- 遊びのない空間
- 過程が記録されない(全員が見えるように)
- 流れが計画されていない
- 進行役(ファシリテーター)がいない
あるあるあるある \(^o^)/
グループになってみんなの現場の話をだしあったのですが、悩みはつきません。
自分の班では上記の他、「ダメだしされるとテンション下がる」「インプット不足で発言できない人がでてくる(先輩が発言して、後輩はついてけなくなる)」「眠い。ランチ後やばい。」という発言がでてきました。
そんな会議を打破するために。
アイディアがうまれる会議のために必要なのは「場の設定」「時間の使い方」「記録の取り方」の3点です。
- 場の設定
-
・会議のテーマ設定
・場の雰囲気に応じて盛り上げ/引き締めをする
・人数の調整/様々な人をつなぐ - 時間の使い方
- ・テーマにアプローチできる時間の使い方の事前計画
- 記録の取り方
-
・過程の記録
・共有認識となる記録
・発想を刺激するイラストや文章
そして実際に、「場の設定(人数)」を考える8・4・2ゲームを行います。
同じお題を、同じ制限時間(5分)内で、人数をかえて、どのように会話が変わるかを考えました。
個人的には。
8人だと多くのアイディアがでるが、深堀りしづらい。
4人だと各メンバーのアイディアと「なんでその人がそのアイディアを持っているか」をそれなりに深堀りできる。
2人だと、パーソナルなことをきくレベルまで会話を深めるけど、会話続けるの難しい。。あとメモがとれない。
というかんじでした。
先生曰く。
「8人でもみんなが仲よさそうに話してて、思った以上に活性化してしまった」とのこと。
確かに初対面だとみんな出方を探って、活性化にはほどとおい状態になりそうですが。
産技大のメンバーは出会って二カ月、ほぼ毎週のように顔をあわせて、ランチ食べたり酒飲んだり、グループワークしたり、ハイタッチしてるので、みんなとても仲が良くなっていたのでした(笑)
学校という中だから、上下関係やしがらみがないし。
発想ががんがんしやすい環境なんだなーと改めて感じました。
発想を促進していく!
そして次は発想を促進していく方法について。
発想を促進するものとして、特に印象的だったのは、『ねばり』と『大勢の脳みそを使う』ということ。
『ねばり』については、最初は絶対、表層的なものしかでてこないんですよね。
カンタンに見えるものを、広く材料を集めて、深く潜って、深海の底にようやく見える何か。
その何かは、実は寝る前とか、帰宅する電車の中でとか、風呂に入ってる時とか、日常で思いつくこともしばしば。
私はしょっちゅうそういう何かを一人で考えてはぼげーっとしており、その『ぼげー』がねばり成分なのかもと思う反面。
組織の中全員に、日常までの『ねばり』までも求めることって厳しいかもなあと感じます。
会議や仕事の中で求めていくしかない。
そこで必要なのが、『大勢の脳みそを使う』という部分。
つい論拠が足りない意見・検討はずれな意見を論破して、議論を早く進めたがる傾向にあるので、ここは乗り越えなければいけない課題だなーととらえています。
ワークでは、一人で考え抜く手法のマンダラート、大勢の脳みそを使う手法のブレインライティングをやっていきました。
いずれも制限時間があり、強制的に発散させられます。
マンダラート、ブレインライティングを実際やってみて、今の自分の会議進行改善にとりいれられそう!と感じました。
いずれも、発言がしづらい人の参加を促しやすいのです。
私のようなでた意見を論破しようとするやっかいな人を抑えて、自由に思考を発散させるのにぴったり。
また、会議を他人事として考えている人の参加を促すのにむいてるなと感じました。
例えばUIのプロトタイピングで「書けない!」「えーもうこれ以上書くのむりー」と立ち止まってしまった後輩に対して。
ベースとなるイマイチUIを用意して「商品イメージが伝わりやすいこと命」「割引価格が目立つこと命」「購入ボタンがファーストビューで目に入りやすいこと命」みたいなかんじで方向性を無理やり出し、制限時間内にプロトタイプをだしていく、とか。
発散⇔収束を小さく繰り返し、でてきたアイディアをつぶしてると、結局何もでてこないので。
発散する時間、収束する時間、自分で作業するときも、他人の脳みそを使うときも、意識して進行していこうと思いました。
発想が生まれるファシリテーション
ファシリテーションをどうやって使っていくか?
次は、発想が生まれるファシリテーションについて、『ファシリテーターの役割』『人間中心デザインでどう使っていくか?』『どう自分が使っていくか』について考えていきます。
発想のプロセスで、特に刺さったのが『合意形成』の部分。
発想のプロセス、決定事項の視覚化としてのグラフィックレコーディングの存在です。
・なぜ 創造にはビジュアライズが必要なのか?
・創造的なプロセスだからこそ必要なこと
創造的なプロセスでは、進んでいる方向、目的地がわかりにくい。
直感的アイデアは、すぐに消えてしまう。
多様なメンバーでは、同じ言葉で語り合っても、異なる世界が見える。
だからこそ、個々の考え、意見、アイデアを、その場で即座にビジュアライズしていく必要がある。
Visualization for Creative projectより引用
私は学生時代から、知らず知らずの間に『スケッチノート』と呼ばれる部類のことをやっていました。
このブログにも随所にのってるノートは、『スケッチノート』とよばれるグラフィックレコーディングの一種です。
ノートを書いてる理由は単純で。
人より理解力低い自分が、人に追いつくためには、一瞬で見てわかるものが必要だったから。
中間・期末テスト、受験勉強、レポート、卒業論文。
『自分がわかるようにする』というために情報の編集をしまくった結果、『人にも伝わる』何かを書けるようになり、UIワイヤーフレームとか構成案とか書くのが得意なwebディレクターになりました。
今でも、私のUIプロトタイピングのときの品質基準は「理解力低い自分が、一瞬で見てわかるものを作る」です。
(だから突飛なUIは得意ではないです。ふつーにあたりまえに使いやすいものを作るのが好き。)
話はそれましたが。
皆が頭を使って案を出し合い、合意をして、次につながって何かを創っていこうとする瞬間が私はとても好きです。
グラフィックレコーディングはそんな時間を支えることができる。
創るものの対象は、デザイン、社会問題を解決するためのアクションと様々ですが。
その瞬間を生み出す場において、自分が貢献できるというのがとてもありがたいなあと感じます。
ワークショップを設計するワークショップ
さっそくファシリテーションを実践してみよう、というわけで。
ワークショップを設計するワークショップです。
お題は、会社内でのプロジェクトキックオフミーティングをイメージして、『10分間でメンバーのことをわかりあえるワークショップをチームで設計してください』。
設計したワークショップ=10分、という短さなので、できることは限られています。
その10分をどう使うのか?メンバーで案をがしがしだしあっていきます。
私たちの班は、「みんな少しお互いのこと知っている。けど業務のことしかしらない。業務のことを深堀するより、パーソナリティがでるほうがいいよね」というような主旨でワークショップを設計しました。
↑4人一組になり、このシートの「○○さんは・・・」と書かれた人のイメージを、1項目ずつかいて、次の人にまわしていく・・・というものです。
実際にイメージを書いていったら、みんなでみせあいっこして、ファシリテーターがツッコミをして会話を広げていきます。
例えば、私の場合はこう書かれました。
1:得意そうなこと、好きそうなこと 『ラザニアが好き』
2:苦手そうなこと 『自転車の立ち乗り下手』
3:ひょっとしてこの人・・・ 『アニメおたく?』
※各項目、1はAさん、2はBさん、3はCさんが書いています。
…『自転車の立ち乗り下手』そうか… (゚∀゚)アヒャヒャ
で、ファシリテーターから「Bさん、なんであなたはazumiさんが『自転車の立ち乗り下手』そうって思ったんですか?」とか、「azumiさんはほんとに自転車立ち乗り下手なの?!」とツッコミが入るかんじ。
Bさんや私、そしてグループでその会話をきいてる人、みんなが意外な一面をみれることを期待していました。
実際、グループ内では『好きなこと:金魚すくい』『好きなこと:ロウソク』(意味深w!)とか、『苦手なこと:女子からの怒涛のアプローチ』『ひょっとしてこの人:(男子だけど)ケーキバイキング好き』など、みんなツッコミどころ満載の回答がでてきて激しく盛り上がりました。
で、「これいけるよね!」と満場一致で隣の班にワークショップをやってもらったのですが。
現実はなかなか難しい!
課題が見えてきました。
実際に他の班にワークをしてもらった際、例示のシートをだしそこねたため、ワークをするメンバー同士が何をかいていいかわからず、表層的な答えが中心となってしまいました。
パーソナリティがなかなかひきだしづらい。
また、ファシリテーションをしたメンバーが盛り上げ上手で、その人の人を笑わせて進行するパワーに依存してるなとも気づきました。
ファシリテーターのスキルに超依存するワークだったのです。
こういうのは、実際にワークをやってみてでないと気づけない点でした。
たぶんワークショップデザインの現場でも実施→省察→改善案考えて再び実施・・・を繰り返していくんだろうなと思います。
DevLove現場甲子園で、山岸ひとみさんがワークショップデザイン過程では「サービスデザインやUXデザインなどで、使われる手法を積極的に応用してワークショップをデザインしています。」と述べられていました。
ワークショップデザインは、ユーザーの体験をデザインすることに他なりません。
webでのサービスデザインも、プロダクトデザインも、ワークショップも。
ユーザーが何かを『わかった!』『できた!』とするためのものなのです。
@azumi0812 エンジニアは「できるーできない」というパラダイムで戦っていて、デザイナーは「わかるーわからない」というパラダイムで戦っているので、デザイナーのわかりやすくするプロセスの方がすごいと思います(笑
— ちゃちゃき(概念) (@chachaki) 2014, 10月 1
↑このちゃちゃきさん(@chachaki)の指摘は、デザイナーの存在意義、エンジニアの存在意義を見事についています。
私は今、旅行会社のwebディレクターという立場で、デザインの現場に今は関わっていますが。
デザインの現場でも、市民活動の現場でも、「わかるーわからない」というパラダイムは、何かをいちから創りだす時には必ず発生しています。
現場は人生のステージによって変わってゆく。
それは市民活動かもしれないし、デザインの現場かもしれないし、まだ見ぬどこかの現場かもしれません。
社会で生きることが、社会で自分の能力を活かしていくことだとしたら。
混沌とした情報カオスの中で、『わかる』を組織のみんなや、使ってくれる人たちの生活に広げてまきこんでいくことが、私のミッションなんだろうなあと思います。
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