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HCDプロセス論 -産業技術大学院大学 「人間中心デザイン」

img_hcdptopだいぶ授業から時間がたってしまいましたが。
産業技術大学院大学、人間中心デザイン履修証明プログラムの復習レポ第8弾「HCDプロセス論」です。

HCDプロセス論は、その名の通り人間中心デザインのプロセスを学ぶ授業ですが。
手法を学ぶのではなく、その手法の背景にあるものが何なのか?についてを扱います。

「背景を知らないと手法におぼれてしまう」そう安藤先生はおっしゃっていました。
私たちが現場で、プロジェクトにあわせて「なぜその手法を選ぶのか」「どう活かすのか」考えるためにとても重要になってくるのだと思います。

HCDプロセス論
↑人間中心デザインのプロセス。
「ユーザー調査・分析」「ユーザー評価」の区分でプロセスをみていきます。

ユーザー調査・分析

ユーザー調査・分析の目的と手法

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ユーザー調査・分析の目的は、『デザイン行為の一部』と明言していたとこが印象的でした。
ユーザーの利用状況や嗜好、価値観を知り、ユーザーをモデリングすることで、はじめてユーザーの利用状況に基づいた製品を考えることができるんですね。


ユーザー調査・ユーザー分析の原典はContextual Design: Defining Customer-Centered Systems (Interactive Technologies)という書籍です。
大事なのは、「フィールド情報を集めること」「モデリングすること(ユーザーの文脈を可視化すること)」。

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フィールドの情報を集めるのに有効なのが、『コンテクスチュアル・インクワイリー』と『観察法』です。

コンテクスチュアル・インクワイリーの目的
・ユーザーの利用環境の中で、ユーザーが物を使う日常行動・利用状況(利用文脈)をさぐるためのデータを得る
・ユーザーの行動の背後にある本質的なゴール・潜在的なニーズや価値観を探る
コンテクスチュアル・インクワイリーの方法
・『師匠と弟子モデル』(ユーザーが使ってるところをみせてもらって、意味やコツをきく)
・とはいえ家の中等みせてもらうのが難しい場合、写真や実物見て使い方を説明してもらう、『人工物ウォークスルー』等で工夫して代用する
観察法の目的
・ある状況のユーザーの行動・ふるまい・反応に関する情報を収集する
観察法の特徴
・観察者が五感を使って、フィールドワークでのユーザーのふるまいに関する情報を収集すること

印象的だったのは、「なぜこの人はこういう風にしているんだろう?」というように、「問いをたてて観る」という視点。
仮説をたてておくと、何を知りたいかが明確になるので集中はできるんだけど。その仮説にそった何かの答えにしか目がいかなくなる怖さがあるなー・・・とユーザーテスト等現場で実施してて痛感しました。
事業会社の人が考えてる大量の仮説なんて、そもそもおぼえてらんないし。

「なぜこの人はこういう風にしているんだろう?」という問いをたてて、その問いを深掘りしていくと、その行動の理由のみならず、価値観、人の人間としての在り方がみえてくるのがおもしろいなあと最近感じてます。

例えば、私が授業中のノートをとっているとき。

  1. ノートをとる過程について「先生の配布資料の有無を確認」してから必ずノートをとりはじめます。
  2. 配布資料の有無を確認するのは、「ノートをかきながら『自分が今どこにいるのか確認できる』」地図=配布資料があるのかどうかを知りたいから。
  3. なんで『自分が今どこにいるのか確認できる』のが必要かというと、ノートの中で情報を構造化する大きな手助けになるから。
  4. 『ノートの中で情報を構造化』するのがなんで大事かというと、視覚的にぱっと入るとそれを見ながら色々思い出して記憶をつなぎ、自分に定着させることができるから。
  5. 『視覚的にぱっと入るとそれを見ながら色々思い出して記憶をつなぎ、自分に定着させる』ことをなんでやってるかというと。ぼけーっとしてて人より記憶力が低い自分が、自分の好きな勉強とか仕事は楽しく理解して、周囲の人においつき、極めたいから。
  6. あぶりだされた価値観:劣等感はんぱないけど、人に負けたくない。自分の好きな学問とか仕事を理解したいし極めたい。

・・・・劣等感駆動・・・。
自分で書いてて、うわああああああ三十路が何をいまさらしょーもないことことほざいているんじゃーと叫びたくなりました。
自分でブログに書くの恥ずかしいんだから、人から指摘されたらこれ恥ずかしくて死にたくなること間違いありません。( ゚∀゚)アハハ八八

ユーザー調査・分析の結果を、いかにデザインへ繋げるか

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ユーザー調査・分析と、デザインがつながらない。
現場にいてもこれはひしひし感じることで、結局予定調和的な結論(要件)しかだせず、「それ調査する意味あったの?」と思うことも過去何回もありました。
制作会社にいたときも、ペルソナ作って放置されるなんて日常茶飯事だったし(笑)

安藤先生が何回も強くいっていたのは、「ペルソナを作ることが目的ではない」ということ。
ペルソナはあくまでモデリングの一技法であって、ユーザーのシチュエーション、ゴールをわかりやすくするものなのです。

ゴールをわかりやすくしてくれるとはいえ。
ペルソナを現場で使いづらいのには理由があるんです。
例えば、どうやってつくればいいのかわからん、1人のペルソナでは補いきれないニーズがあるのでペルソナ複数になったらカオス、ペルソナの個人設定にこりすぎてアイディアが偏るなどなど。

「ペルソナをつくる前に必要なのは、調査から洞察を得ること」。
洞察を得る方法として安藤先生が挙げられたのが、『ユーザーモデリングの3階層』でした。
※洞察…物事を観察して、その本質や、奥底にあるものを見抜くこと。見通すこと。

エスノグラフィック・デザインアプローチ from Masaya Ando

属性層・・・ペルソナ
行為層・・・カスタマージャーニーマップ
価値層・・・KA法価値マップ
という位置づけで、モデリングすることができます。
このモデリングの3階層のうち、今自分は何を見ているのか?を考えるといいのかなと思います。

モデリングのメリットは以下の三つ。

  1. フィールドから得た情報を解釈しモデル化することで、ユーザーに対する深い理解を得られるようにする
  2. ユーザーの世界の全体像を可視化することで、関係者間で共有しやすくする
  3. 概念や行為を脱個人化、構造化することにより、デザインすべき領域や方向性を発見しやすくする

授業では、価値層を導出するためのモデリング手法としてKA法を学びました。

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ユーザー評価

ユーザー評価の過程では、「ユーザー調査・分析」で行ったことをベースにデザインを行い、ちゃんと要求にあったものをつくれてるよね?とチェックすることになります。

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ユーザー評価のうち、現場で多いのは『問題発見→改善検討』を目指した形成的評価です。
特に、ユーザービリティテストが多いのが昨今の現場ではないでしょうか。
(ニールセンが提唱したヒューリスティック評価もあるけど、UI設計する人なら当たり前に知ってるべきことだと思ってるので、どんだけ効果があるのかは個人的には不明です・・・)

ところで。
「ユーザビリティテストに大事なのは、被験者のモチベーションだ」という点が、もう現場の感覚とどんぴしゃだったので、うなずきまくってしまいました。
モチベーションといっても、おだててちやほやして、という話ではなく。
ユーザーの利用状況を再現する=自分で操作するモチベーションが上がる状態にする、というのが大事なんです。

理想をいえば、自分の家でやってもらうのが一番いいかもしれません。
まあそれは現実的ではないのでユーザーテストのラボでやるのですが。
普段の利用状況と場所がかけはなれてしまっていても、類似するような環境は作ることができるので、そうした環境=タスク設計をいかに作るかが大事なのだと思います。

ユーザーエクスペリエンスのための手法と手順

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UXデザインのための手法として大事なのは、ユーザー調査・分析のあとに、『ビジネスの現場からユーザーにどんな価値を届けられるか』を考え、次に『アクティビティを考え』、最後に『インタラクションを考える』ことです。

このあと、構造化シナリオ法(浅野先生の授業)でもでてくるんですが、みんなインタラクションシナリオを書く=デザインを考えるのはとても上手なのです。
でも、先に考えるべきはそこではくて。
価値、そしてその価値を達成するためのユーザーのアクティビティなのです。

ユーザーのアクティビティを考えるのに大事なのが、『体験を可視化する』ということ。
この体験がクソだとインタラクションがどうあがいても無駄なので、『体験を可視化』して評価するのが大事となってきます。

体験を可視化するには、ストーリーボード、アクティングアウト等の手法があります。

スマホサービスに最適なUXを考えるアプローチ方法 #yxdena from Yahoo!デベロッパーネットワーク

↑アクティングアウトの有用性はこのスライドがとてもわかりやすかった!
自らユーザーの体験もしつつ、観察者としてユーザーを観察することで、新たなニーズに気が付けるとのこと。

おまけ:UX王子が答えるお悩み相談室

HCDプロセス論の宿題として、みんなのUXデザイン現場でのお悩みをかきだしてくる、というものがありました。

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やっぱり多かったのは、「自分の職場で、どう人間中心デザインをひろめていく・説得して用いていけばいいのか?」という点。
12月以降のHCD導入論の授業でそのあたりは考えていくことになるのですが、一例として挙げられたMTIさんの話がとても興味深かったです。

ビジネスモデルが崩壊し、会社として困っている中、安藤先生と一緒に管理職の方々がUXデザインのワークショップを行ったそうです。
MTIさんでは、ビジネスの機能を、ユーザーの体験価値からとらえなおした結果、自社が満たしてないユーザーの価値があるということに気が付きます。
そして、『サービスイン報告会』という会議は『体験価値実現報告会』と名前を変え、マーケティングと一体になってサービスを考えていくという状態になったとのこと。

ユーザー中心デザインでのサービス開発(製品開発)とマーケティングって、実は不可分なんだと思います。

マーケティング(英: marketing)とは、企業や非営利組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動」の全てを表す概念である。
wikipedia

ユーザー中心デザインでのサービス開発では『顧客が真に求める商品やサービスを作り』、そのサービスについて『その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする』という販促活動があります。
この一連の流れがうまくいってこそ、お金を頂き続けることができるサービスを作れるのではないでしょうか。

HCDプロセス論の授業の随所で、安藤先生は「KPI中心設計は限界がくる」とおっしゃっていました。
自社を含め、KPI中心設計で動いている会社はやはり多いと思います。
でも、KPIをどんだけ上げようとしても、ぜったいどこかで頭うちにはなると思うのです。

ボタンの色とか、文言を変えるようなABテストをくりかえしたって、あるユーザーの利用状況のほんの一部の部分最適はできるかもしれないけど、『価値』まで届いて心を動かすことはできません。
もし『価値』を動かすにしても、それは偶然の結果であって、再生産するのは難しいのではないでしょうか。

成長していく組織内で大事なのって、すんげー職人さんの個人的な経験に頼って何かをすることではなく。
皆が手法とその背景を学んで、すんげー職人さんに近いレベルのことができる=再生産できるようになることなんだろうなあと最近は思います。

なかなかハードル高い部分はありますが、それでも私が今できることを考えるとしたら・・・自分のプロジェクトにおいて、ユーザー調査・分析・評価のフローを常に実施してぐるぐるまわしていくことだと思っています。
時間制限あるし、納期命だから、全部のフローを美しくみんなとやる、なんてなかなか難しいけれど。
常にプロジェクトにあわせて「なぜその手法を選ぶのか」「どう活かすのか」を考えつづけてまわしていけば、きっと何かが得られるだろうと信じています。

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