ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

Read Article

情報の視覚化とエンパワーメント~グラフィックレコーディングとグラフィックファシリテーション

10940415_1543915892531253_4796256665745083247_nここ一週間、情報の視覚化にどっぷり漬かっております。
2月末に立正大学熊谷キャンパスで、グラグリッド三澤直加さんの講演・ワークショップ『描きながら考える会議』でグラフィックレコーダー&ファシリテーターとして参加。
2/28(土)には、産業技術大学院大学人間中心デザイン履修証明プログラム最後の授業にて、7時間くらいグラフィックレコーディングを描きまくっていました。
翌3/1(日)には仲間と立ち上げたグラフィックレコーディング勉強会、『グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ』にて全体ファシリテートを務めさせていただきました。

イベントの総括は会社のほうのブログでやるので。
この一週間で、情報を視覚化することについて特に考えたことがいくつか書いていこうと思います。

絵・図・文章・数字の使いどころ

三澤直加さんの立正大学でのワークショップのテーマは『描きながら考える会議』。
グラフィックファシリテーションを行ってその感想をきくと、えてして「絵を描くと議論がしやすいねー意見だしやすくていいねー」という話が中心となるのですが。
今回、先生方から使いどころについてとてもよい指摘があったのが印象的でした。

Scribing thinking grareco from Naoka Misawa

印象的だった参加者の発話は以下。

Scribing thinking grareco from Naoka Misawa
・余計な絵(情報としての絵)をいれず、図式化している。
・図にすることは先生はいつもやっている。下の学年のときには図を中心に説明するが、高学年になればなるほどあえて図式化はせず「話す」。生徒自身が図式化をするトレーニングとなるので。
・図解もへったくれもないものもある。
・頭の中に皆先生方は同じ図式ができているので、議論がかみあうので必要性を感じない。

時々グラフィックレコーディングの話をすると、「絵をかくんだ、ふーん。何の役にたつのそれ?」という反応がみられるのです。今回もまさにそれ。
この反応がなんなのかが自分のなかで言語化できずもやもやしていたのですが。今回はっきりみえたのは、『絵の使いどころ』でした。

絵の特徴
・ストーリー:ストーリー全体を俯瞰できる。
・発信者:発信者の情報に多様な意味をもたせて、相手のイメージをふくらませることができる。
・受け手:情報の受け手が感覚的にとらえられるので、とっつきやすい。
図の特徴
・ストーリー:ストーリーの全体俯瞰もできるし、部分をみることもできる
・発信者:発信者の示唆する意味が明確で、多様な解釈はできない。明確なコミュニケーションができる。
・受け手:受け手が明確な意図を短時間でつかみやすい。
文章の特徴
・ストーリー:俯瞰できず連続性が大事。順番に読まないとストーリーはわからない。
・発信者:発信者の情報の意味は一意的。(他方、小説等のイメージ喚起させる用途のものもある。)
・受け手:文章をはじめから最後までよまないと意図はつかめない。
数字の特徴
・ストーリー:他の数字との比較がストーリーを生む。
・発信者:事実としての数字なので正確な伝達ができる。ただし同じ数字でも、読み取る人によって解釈のレベルが大きく異なる。
・受け手:数字を読み解くのが必要になるし、扱う数字の背景知識も必要となることも多い。

えてして、この『数字』が求められる場面が多いその人の状況において、『絵』についての有用性を語ると「なんで必要なの?」と不思議な顔をされることが多いです。
また、『図』についても同じ。知識伝授など意味の多様性を求めず効率的に伝えたいという場合、『図』が適切なのだと思います。また、数字や図などを参照して論じ、コンテキストを大事にするもの(例:論文)においては、やはり強いのは文章なのかなーと思います。

となると『絵』を使いたいときはこんなかんじ。

  • 全体を俯瞰したいとき。俯瞰しないと見えない情報もある
  • 多様な解釈にもとづいた、発想を促したいとき
  • 参加者の参加を促したいとき

ちなみに、私はグラフィックレコーディングでは簡単めな絵や、図やテキスト(短文)が多く、グラフィックファシリテーションするときは図やテキスト(短文)メインとなります。

▼簡単めな絵や、図やテキスト(短文)が多いグラフィックレコーディング。
rissyo

▼図やテキストがメインとなる、グラフィックファシリテーション。
rissyo_02

グラフィックレコーディングやってみせてると、「絵はいいよ、絵はいいよ」っていってるように見えるかもしれませんが。
あくまで利用状況なんだよなーと思ってます。
情報を可視化する人は、別に絵がかければいいとかじゃなく(←よくある誤解)、絵・図・文章・数字を適切に用いて相手に伝えられる人なんじゃないかなーと思うのです。
グラフィックレコーディングは、その中の「絵・図・文章」を聴きとった情報から解釈して、必要なものを選んで紙におとすかんじ。Excelにあるような細かいたくさんの数字を全部描きだすのは無理。

『グラフィックレコーディング』の持つ、エンパワーメント力

なお、デザインにおけるプロセス全体やイノベーションにおいては、理解や発想を促す『グラフィックレコーディング』は相当なエンパワーメント力を持つと思っています。

エンパワメント(Empowerment、湧活)とは一般的には、個人や集団が自らの生活への統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与えるようになること、人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させることと定義される。
エンパワーメント

グラフィックレコーディングから生まれる、理解・コミュニケーション・発想

例えば、産業技術大学院大学でのグラフィックレコーディング。
人間中心設計(HCD)を自分の会社でどうとりいれていくかを考える、という授業で、先輩方のプレゼンや、千葉工大安藤先生・コンセント長谷川さんのディスカッションから考えるというものでした。

aiit_01

aiit_02

aiit_03

aiit_04

ずらっと並ぶグラフィックレコーディング。
aiit_last

みんながグラフィックレコーディングを見ながら、新たなディスカッションをはじめていくのです。
その景色は、「グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ」でも見られました。
grw_01


絵や図だと俯瞰ができる。
わからなかったことをきく、コミュニケーションする、きっかけになる。
見ようと思ってもらえるからこそ、また見たり参照してもっらえて、理解が深まる。
意味がたくさん持てるからこそ、発想がふくらむ。
参加したくなる。

解釈の多様性がもたらす、何がおきるかわからないワクワク感

また、グラフィックレコーディングをしていると、よく「正確にかかなきゃいけないんじゃ」という声をききます。
確かに、発話者の主張を適切にとらえる必要はあるものの。
グラフィックレコーディングは、情報の取捨選択と、絵にする=意味の多様性を許す以上、完全に『正確』な情報にはなりえないと思います。描いた人の解釈が絶対に入ります。
でも、その解釈の違いこそおもしろいのではないでしょうか。

たとえば私のワークショップでのプレゼン。

グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301 from Azumi Wada

『聴きわける』のパートでのプレゼン中。
参加者の方が「主張ってどうぬきだすの?」という質問をしてくださいました。
私は「この人ならではの情報をぬきだす」と答えたところ。
グラフィックレコーディングの和波さんは、そこをすごく強調してくれました。

grw_03

実は「この人ならではの情報をぬきだす」について、私はグラフィックレコーディングや文章要約、ユーザー分析においてもとても大事にしてる部分なのです。

例えば「肉を食べたい」という場合。
「(糖質制限ダイエットをしているから、たんぱく質としての)肉を食べたい」
「(ジューシーでボリュームがありアッツアツ、しかも景気よいもの=肉だから)肉を食べたい」
肉を食べたい、の後ろに含まれる文脈がとても大事。
この文脈こそがその人らしさだし、ストーリー展開に大事な部分だと思うので、必ず細かくても描きとるようにしています。
この文脈を大事にするという要約方法、実は小論文で磨いたものなのです。

和波さんは、プレゼンにはなかったその部分を抜き出して、強調してくれました。
実は今回初めて描かれる立場となったのですが。描いてもらった=「わかってもらえた!」という嬉しさって格別なんです。しかも、それが自分らしい何かだとなおさら。

グラフィックレコーディングは、こうした事前に用意したプレゼン資料にはない『その人らしさ』『会場の雰囲気』をも表現する力をもつのです。
個人的には、ただプレゼンをきいてそれをきれいに描きとるだけよりは、そうしたその場の予測しえない何かを描くことがおもしろい!と思ってます。
予定調和に絶対ならない。むしろ、どんどん外れてく!
だから、同じ会場のものをきいてても、描く人によってまったく違うものになるのはごく当たり前のことなのです

この、「次に何がでてくるのかがわからない、自分も絵に参加できる!」っていうのが、グラフィックレコーダーを眺めて議論する楽しみでもあるし、グラフィックレコーダー自身が描く楽しみでもあると思います。
複数いれば、いろんな視点がみえてなおオモシロイ。

▼『描きながら考える会議』での、私、常葉大学福士さん&小野寺さんのグラフィックレコーディングを並べたもの。
私が『視覚をその場でしていく』必要性のストーリー構造を私が核としてひろっているのに対し、福士さん・小野寺さんは『ファシリテーショングラフィック』をメインに絞ってまとめています。
greco

ゆえに、正確性をもとめるの場なのであれば、発話記録や数字を用いたほう適切だよねーと考えています。
例えばワークショップ中にきかれた「自分のための記録なら自分がふりかえるにはいいけど、グラフィックレコーディングを見て他人がほんとに自分と同じ理解をしてくれるのか心配・・・」という声。

同じ理解を求めるなら、絵に加えさらなる文章・数字での説明等が必須になってきます。
むしろ、絵の価値はそこにあるのではなく「おっ見よう!」って思ってもらうことにあると思います。
感覚的にうけとることができるからこそ、参加障壁がぐっと下がる。

grw_02

実際に同じプレゼンをきいても、参加者の描くものは本当にひとそれぞれ。
他の人のグラフィックレコーディングを見ると、自分もそのプレゼンを再び理解するきっかけとなり、すごく勉強になります。
実は『グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ』については、産業技術大学院大学での浅野先生の授業や、浅野先生の書かれてたブログ記事「アトリエ的学習環境」から学びを得てつくっています。

「アトリエ的学習環境」という考え方がある。
公立はこだて未来大学の美馬のゆり先生や東京大学大学院情報学環の山内祐平先生が提唱した考え方で。
作品を制作する学習環境のことだ。
通常の教室環境と異なる点は、学習者の制作過程が授業者や他の学習者に公開され、物理的なものだけではなく、そのインタラクションが共有されること。
(中略)
美術系大学のように、同級生がその授業から何を受け取っているのか、それに対する教員のコメントも共有することができれば、その内容に対してさらに深い理解につながるはずである。
 こういった環境を「アトリエ的学習環境」と呼ぶ。
ワークショップにおけるコツの研究(15)アトリエ的学習環境

実際参加者の方のアンケートもちらっと読んだのですが。
「他の人の作品がみれるのがよかった!」という声が複数みられました。狙い通り!

grareko

参加者全員で書いたグラフィックレコーディング、壮観!

これからもう少しつきつめたいこと

最後に、これからつきつめたいなーと思うことがどんどんでてきたのでメモしておきます。
今後も何かしらやっていきますので、気になった方はぜひグラフィックレコーディング勉強会に「いいね!」してくださいねー!

『聴きわける』『表現する』『構造化する』という、グラフィックレコーディングにおける課題分割の再検討

ワークのみなおしと、より「やってみたい!」って思う方が学びを得ることができるワークショップ設計をしていきたいと思います。
人間中心デザインにおける「評価」を行った状況なので、次は利用状況の調査→モデリング→設計、とまわして、ワークショップをまた行いたいと思います。
そのスパイラルを何回かまわして、ワークブックにすることが目標。

初学者の人が楽しめるグラフィックレコーディングの『本番』(でもどんどん失敗もできる場)づくり

即興演奏やっていると、「100回の自分一人の練習より、1回のひととの本番セッション」というような言葉があります。
グラフィックレコーディングも、場の音を聴いて、即座にそれをアウトプットしていくのが大事なのでおんなじなんです。
私が即興演奏をおっかなびっくりやっていくのに、渋さ知らずワークショップや『青鯖』というバンドがあってくれるのが実はとてもよかったので。おんなじことをグラフィックレコーディングでもやりたいなーと思っています。
失敗してもどんどんチャレンジしていける、楽しい発想の場。本番の場。
あ、ちなみに4/4(土)、江古田バディで『三共江』ライブやります!よかったらぜひー。

グラフィックファシリテーションのワークショップ設計

グラフィック(のうちの一部)、さらにはファシリテーションが求められるので、今回は意図的にワークにはいれていませんでした。ここをもう少し考えたいです。

私はグラフィックからグラフィックレコーディングに入ったわけではなく、実はファシリテーションから入っていった立場なのです。
私は自分の意見ゴリおす独裁者になりがちなのですが、NPO活動の中で「人の気持ちのシェアをしないとだめだ」というのを痛感するできごとがありました。ただ、ファシリテーションをやっていてもどうしても強い我はぬけず、ひとの意見や気持ちをフラットにきくのに手助けがどうしても必要で、その助けとしてグラフィックがとても強く働いてくれているのです。
グラフィックなら誰の意見も平等に並べられるし、場の皆の意見を可視化しやすい・促しやすいので。

だから、産技大の仲間から「あなたはファシリテーターとして俯瞰するとき、アイディアをだすとき両方やってるね」と言ってもらえた時はとてもうれしかったのです。
より場の参加を促したいなあという人は一定数いるので、何か学びあうことができるといいなと思います。

ビジネスでの利用方法の切り出し

様々なシチュエーションで『絵』や『図』が求められてるなーと感じているので。
その部分のニーズにもこたえられるような部分部分のワークをしていけたらいいなと考えています。
マルチタスクなグラフィックレコーディングより、着手はきっとしやすいし、『絵』のパワーをいかすための入口としてはいいのかもしれません!

—-

これからもひきつづき動いていこうとおもいます!むん。

URL :
TRACKBACK URL :

Leave a Reply

*
*
* (公開されません)

Facebookでコメント

Return Top