ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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グラフィックレコーディングの練習法と活用法

img_grrc4/11(土)には『LEAN UX Japan Conference 2015』、4/12(日)には『第11回Brigadeワークショップ「Brigadeイベントにすぐに役立つ!グラレコで合意形成を加速せよ」』でグラフィックレコーダーとして参加してきました。

グラフィックレコーディングをやっていく中で、グラフィックレコーディングの練習法と活用法について「うおおお!」という気づきがありました。
いずれもグラフィックレコーディング勉強会の仲間と一緒に活動する中だからこそ気づけたものです。

グラフィックレコーディングの練習法(初心者向け)

「まずはグラフィックレコーディングをやってみたい!」という方にはどんなワークをすればいいんだろう?
グラフィックレコーディング勉強会を開催してきた中で、『絵のようなグラレコを描けること自体が嬉しい!』という体験こそが価値だったんだなーと気づきました。
事実、絵が苦手でも簡単な人間をかける『表現する』ワークショップは、毎回とても盛りあがるのです。

4/12(日)のワークショップでは、さらに新たな2つの素敵な手法がうまれました。

初心者向け練習法1:構造化テンプレート

まずは三澤さんの『構造化テンプレート』。
グラフィックレコーディングをやろうとする人がつまずくポイントとして、「真っ白な模造紙(紙)に何をかいていいのかわからない!怖い!」という点が挙げられます。
流れていく情報をどう書いて(構造をきめて)いっていいかわからず、茫然としてしまうパターン。
『構造化テンプレート』はグラフィックレコーディングに大事な『構造化する』という部分をサポートするツールです。

▼テンプレはこちら

Grareco template from Naoka Misawa

▼資料すべてはこちら

Graphic recoding-ws- from Naoka Misawa

このテンプレートがあると、書き出しやすくなるだけでなく。
「こんなものもつけたしてみよう!」というワクワクするアイディアもわいてくるのです。

実際、自分の顔や髪形をつけたり、色をつけたり、参加者の方がどんどん自分でアレンジをしていくシーンがみられました。
みんな子供のようないい笑顔なんです。
何かを描く怖さやとまどいをとっぱらって、『かけた!』って思えることってとても大事なんだなーと感じました。

初心者向け練習法2:コンノ式練習法

グラフィックレコーディング勉強会で一緒に活動しているコンノさんが提唱したのが『コンノ式練習法』。
いざ大きい紙に書こうと思うと、大きさやバランスが難しかったり、イラストがすぐにいれられなかったり、微妙な余白ができてしまう・・・という悩みを抱えていたコンノさん。
複数の情報を1枚にまとめるのではなく、1枚に1つの情報(議題)を書いて、そのあとくっつけるという方法を編み出しました。

Graphic recoding WS わたしのグラレコ練習法_ビギナー向け from Konno Keisuke

並べ替えができるので、リカバリーもききやすいのもいいところ。
『くっつけるとなんとなくできた感がしてきて嬉しい』という言葉はほんとそのとおりで。
ずらっと並べると、『情報を一気に俯瞰できる』というグラフィックレコーディングの価値が感じられるのです。

例えば、イベントでのグラフィックレコーディング。
グラフィックレコーディング勉強会のメンバーが、ワークショップ中のワークをグラフィックレコーディングをしたものを並べると、ワーク内容がずらっと俯瞰できました。

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驚くべきことに。
ここでグラフィックレコーディングをしてくれたメンバーの西田さん、五十嵐さん、梶家さんは、イベント本番で書くのは初めてなのです。

『100回の練習より1回の本番』という音楽上達のためのコツときっと一緒で。
グラフィックレコーディングだって小さい成功体験を積み重ねて、積み重ねた成果を可視化するってとても大事なことだなーと思いました。

また、『構造化テンプレート』『コンノ式練習法』、いずれも塗り絵的な要素があるという点もおもしろいところ。
実は、グラフィックレコーディングをするうえで、私もよく塗り絵状態まで一気に書く→塗り絵してグラフィックを仕上げる、という手法をよく用いるのです。
それがわかる動画が以下。ほぼ黒で一気にかいています。

#hyperlapse of yesterday's Graphic Recording in #LeanUX Conf. グラレコができるまで。

Mario Kazumichi SAKATAさん(@sprmario)が投稿した動画 –

『LEAN UX Japan Conference 2015』でのAPP sociallyの高橋さんの登壇のグラフィックレコーディング中の動画なのですが。
イベント前の資料提供はなしで、きいた情報を一気にかいていくというスタイルのものでした。
一気にきいて一気に絵と短文を描くところに集中しているから、ペンを持ち替える余裕がほとんどないのです。
ゆえに高橋さんの登壇がおわったあと、会場のすみっこで仕上げの色をぬっていました。

完成はこんなかんじ。
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※補足
この手法は初級者むきであるという点お伝えしておきます。
中級以降になると、人のグラフィックレコーディングをみたうえでこの構造を自分で考えていったり、最適な構造ってなんだろう?ここでは何を全体をとおして強調すべきなんだろうって考えていく力が必要とされます。

グラフィックレコーディングの活用法

グラフィックレコーディングからうまれる、新たなつながり

『LEAN UX Japan Conference 2015』のディスカッションで印象的だったのは、ロフトワーク林さんの「大事なものは自然にある」という言葉でした。

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イベント中に何度もでてきた「ビルの外にでる」「現場へいく」というアクション。
実はすごく大事なことなのです。
実際のユーザーの利用状況は、ユーザーテストの部屋にはなく、その人の生活圏に存在しています。
その自然な利用状況を見てみることで、何かと何かがつながり、思いもつかなかった発見をうみだすのです。

林さんが紹介されていた『発想法』の著者、川喜田二郎氏は、野外科学(フィールドワーク)における発想法(KJ法)のメリットとして、以下をあげています。

  • 「問題は何か」を共通の意識でつかむことができる
  • つねに目的が意識されているから、次のステップとして、その問題提起にかかわりのある(また、「かかわりのありそうな」ものもふくめて)外部情報をどこかに探しにいくときに、いつもそれが気になる。

実はこのKJ法と同じパワーを、グラフィックレコーディングはもっているんじゃないかと最近考えています。
流れる情報を可視化していくことで『なんとなくその情報が必要な気がするという感情のようなものが、理性よりもはるかに先を進んで探索活動をしているのである(『発想法』より引用)』を呼び起こすパワー。

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絵という媒体は、図と同じ俯瞰性をもちつつも。
とっつきやすさもあるし、解釈の多様性もあるのです。
だからこそ、いろんな人の視線や脳みそをひきつけるし、アイディアや会話を促すのです。
このつながりこそが、何か新しいアクションをうみだすきっかけとなるのではないでしょうか。

プロセスがわかるから、いなかった人でも入りやすい、理解しやすい

また、4/12のワークショップのグラフィックレコーディングは、イベント参加者のふりかえり用途もありますが、自分たちの勉強会で次にどんなアクションをとっていくかを考えるためとしても描いています。
このグラフィックレコーディングをみて、イベントに参加した人もしなかった人も内容を理解したうえで、アイディアをだしていく予定です。

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プロセスがみえて、わかりやすいからこそ、すぐ議論に参加できる効果があるなーと思います。

ただ、誤解しないでほしいのは。
グラフィックレコーディングが唯一解だとは、グラフィックレコーディング勉強会の誰ひとりとして考えてはいません。
数字や文章に基づいた正式な記録が大事というポイントは多々あると思うので。
あくまで、情報を可視化したうえでどう利用したいか、というのがポイントなんです。

また、イベントで「聴いたものをすぐかけるんだ、すごいねー」で終わるのが私はとてももやもやしています。
確かに、目の前で情報が可視化されるのはおもしろいかもしれません。
でも、それだと単なるパフォーマンスでしかなく。
グラフィックレコーダーとしては、『利用する』というシチュエーションまで考えて描く(デザインする)ことこそ、社会への貢献だと考えています。

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——

私は絵の専門教育をうけた人間でもなければ、グラフィックのデザイナーでもありません。
いくつかのコツと日々の仲間との楽しい練習(トレーニング)で、グラフィックレコーディングは身に着く『技術』であると考えています。

もし、この技術が気になったかたは。
ぜひグラフィックレコーディング勉強会のページに「いいね」をお願いします!
今後もワークショップを企画したり、情報を発信していって、学びあえる仲間と出会えればと考えています。

グラフィックレコーディングは、立場がことなるひとたちをつなぎ、新しいものを生み出せる源泉になれる。
そう私は信じています。
——

追記(2017/4/27)
この記事から2年たち。気づけば仲間と100以上の現場をつくりつづけていました。
対話の場、議論の場、カンファレンス、アイディア発想etc活用方法のノウハウをチームで蓄積してきたことをうけ。
『BRUSH』という、ビジュアルファシリテーションのチームを結成しました。

今ないつながりをつくるためのデザイン!
どんどん実践していきますよ~!

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