産技大人間中心デザイン履修証明の単位も無事にとれ『教わる』機会がひと段落したところ。
春になって以降は社内でのOJT、社外ワークショップ、研修等で『教える』機会がぐっとふえてきました。
デザイン、グラフィックレコーディング、ジャムセッション、スティールパン、料理。
『教わる』機会をたくさんいただいた結果、『教える』についても「先生からこう教わると、楽しくてつづいたなあ!」という蓄積が自分の中にできてきました。
根底にあるのは芸事を極めるための手法としての『守破離』。
でも、今後自分が『教える』立場でプログラムをどうすべきか考える時、『守破離』を自分のことばにおとしてみようと思いました。
※補足
これは「まったくやる気のない人のやる気をマイナスからゼロに」という感じではないなーと思います。
態度が受動的ではなく、能動的に「やりたいなあ!」と思った人が、楽しく続けられて、育っていくための手法です。
「(守)分割する」「(破)つなぐ」「(離)刺激を得る」3ステップと、ステップアップのスピードを加速するもの
上達するためのステップは以下3ステップ。
- 1.(守)分割する
- 2.(破)つなぐ
- 3.(離)刺激を得る
そして、ステップアップのスピードを加速する要素が以下。
- 毎日5~10分でもやる
- アウトプットを人にみせてフィードバックをもらう
各ステップについて解説します。
(守)分割する
【よくある現象】
「何かやりたい!」って思って、いざうまい人のまねをしてやってみた!
↓
でも頭真っ白!全然うまくいかない。
↓
なんであんなのできるの?!あんなのできるのは天才だけだろ。やってはみたけど自分には才能がないんじゃないか…
↓
心がおれてやめてしまう
この段階で大事なのは、教える人が『課題分割』をして、教わる人(以後生徒とします)へ手渡してあげること。
その分割サイズは、生徒にとって適切なサイズであることが必要です。
教える側は、生徒と会話して、その適切なサイズをさぐらないといけません。
課題分割
・人は複雑な課題をより単純な課題の組み合わせに分割しようとする。
・機械音痴のひとは、課題分割を行わないなどの特性があることを示した。
・課題分割・・・タスクを詳細化する能力
・機械音痴の人はできない、ではなく、やらない。あるいは仮定するのとは全く異なった形で課題分割を行う。(やらなくても生きていけるから・・・)
・課題分割方略を教えて(朝起きて服を着る話)すると、達成時間、エラー率が統制群よりよくなる。
ウィザード形式は、課題分割をしないので、課題分割しない人にとっては使いやすい。
人間中心デザイン入門 -産業技術大学院大学 「人間中心デザイン」
例えばグラフィックレコーディングにおいては、『構造化テンプレート』『コンノ式練習法』あたりがあてはまります。
ジャムセッションなら、アドリブをドとレではじめるとか、2小節からはじめるという練習です。
料理なら、献立一品だけ、何かつくるという練習。
この課題分割が適切なサイズで実行され、成功すると。
生徒が「自分でもできたー!」になって、達成感がわくのがいいところ。
達成感は、次何をしよう!わくわく!というようなやる気をもつれてきてくれます。
なお、補足すると。
課題分割は、生徒が考えるより、先生が生徒を見て考えたほうが効率的です。
『先生が全体像をみて、その全体の中から生徒に適切なサイズを切り出して渡し、生徒に達成感を感じてもらう』というのが狙いのため、そもそも全体を見たうえで適切なサイズに切り出せない人=生徒が課題分割をしても、あてずっぽうの方向にいくことが多いため。
もちろん、その課題分割を自ら適切にやれる生徒はいると思いますが。
未経験のスキルに対して、課題分割を適切にできるってことは相当デキる人だと思うのです。
そんな奇跡的デキる人のみを対象にする、なんてことは普通の企業やワークショップではありえません。
(破)つなぐ
【よくある現象】
課題分割した内容ひとつ一つはできるようになったかも。
↓
でもそれをつないでも、面白くない。誰がやっても同じ、単調なものになってしまう。
↓
なんで上手な人はあんなにセンスあるんだろう。努力はしたけど自分にはセンスがないんじゃないか…
↓
心がおれてやめてしまう
課題分割されたものを一つ一つクリアした結果。
一つ一つはできてるはずなのに、つないでみるとなんかイマイチ…的な現象がよくでてきます。
「分割された課題が全部できればそのスキルはマスターした!」にはならないのです。
課題分割はあくまで、次のステップ『(破)つなぐ』へ行くための途中経過にすぎません。
ものによっては、2つ以上のスキルがないと次のステップ『(破)つなぐ』に進めないものもでてきます。
例えば料理。『1汁2菜+主食』の献立をつくろうとすると、汁物料理+主菜+副菜+主食(米をたく)という4品をつくるだけのスキルが必要です。
さらに、おいしいご飯をたべるための段どり=課題分割の再構成が必要。
肉野菜炒めはほおっておくと水分がでて冷めてまずくなるので、食べる直前で作るとか。
(このあたりは課題分割と進行管理(単品料理作れるけど献立作れない問題の解決策)というエントリーで言及しています。)
課題分割の再構成こそ、ある程度の型はあれど、その人ならではの色がでやすい部分なんだろうなあと思います。
課題分割での得意分野、苦手分野が如実にでる部分でもあるので。
得意な課題は、どこにでもはめられるパズルのピースのように、どんなものともつながることができます。
反面、苦手な課題は繋がる範囲をせばめてしまいます。
得意が少なく、苦手が多ければ多いほど、つながりに制約がでてしまい、単一な成果物がでてきやすいのかなと思います。
↓例えばグラフィックレコーディング。上:私 中&下:常葉大学グループ
グラフィックレコーディングのスキルは大きく課題分割すると『聴きわける』『表現する』『構造化する』となりますが。
常葉大学のメンバーは、やはり『表現する』が自分よりも段違いで上だなーとは常々感じています。
人を短時間で丁寧に描く方法。読みやすいフォントをペンで描く方法。矢印や線の持つ幾何学的な美しさ。
この表現力がないと、どんなに他のスキルがよくとも、美しいグラフィックレコーディングにはなかなかなれません。
同じデザインを志すものとして、いつも参考にさせてもらっています。
この『つなぐ』段階では、課題分割をつないでみたうえで、自分の弱いところをふりかえるという過程でもあります。弱いところは課題分割にもどって集中特訓すればOK。
そして、『つなぐ』ために必要な接着剤は、『ストーリーの読み』。
接着剤としての『ストーリーの読み』は、ぱっと与えられた時間の中で、即興で『1:今の状況 → 2:ゴール → 3:今とゴールを繋ぐ過程』を考える力といえるんじゃないかなと思います。
例えばグラフィックレコーディングだとこんなかんじ。
- 1 今の状況
- 登壇者がいってた「3つの要素」のうち1つ目を今は話終わりそう
- 2 ゴール
- あと2つの大事なことと、最後に大事な3つを貫く一番いいたいことを何か言う。この一番いいたいこととその具体策である3つの要素は絶対大事!ききもらさない!
- 3 今とゴールを繋ぐ過程
- 「最後にまとめで言いたいこと(面積10%)」だとしたら、(100%-10%)÷3=30% 30%の面積が今うまってないといけない状態だ。次の2つ目の要素で30%だからこのくらいの面積使おう。
他にも、ジャムセッションなら「振られたときの雰囲気」「相手の楽器」「曲のどこか?」等多彩な問いがありそうです。
目的達成のために必要な接着剤は何か?は分野によって異なると思いますが。
えてしてこのストーリーを読むということ=課題分割を即興で目的に応じて組み合わせるための問いは何か?どうやれば持てるのか?という点は、教える際の共通テーマになってくるのではないでしょうか。
・・・いきあたりばったり力とでもいうべきか!!
(離)刺激を得る
【よくある現象】
本番でもある程度はできるようになったし、みんなからほめてはもらえるから嬉しいっちゃ嬉しい。
↓
でも、なんだか自分の中ではマンネリでつまらない。やる気がわかない。
↓
なんであの人はあんなに楽しそうにやってるんだろう。積み重ねてきたはいいけど、今後の自分にこれ役に立つのかな…
↓
心がおれてやめてしまう
『(破)つなぐ』が続くと、最初はものすごく楽しいし、まわりからそれなりに褒められたりして嬉しいのですが。
どこかで必ず「また同じのやってて、なんだかつまらないなー」がでてきます。
前のステップよりも、成長が感じられなくなるのです。
バンドや会社での仕事がなんとなくつまらなくなった結果、特に中堅以上レベルの人が次々と抜けていく現象はこれに近いのかなとみています。
(ちなみに。活動を立ち上げしたときから残ってるメンバーや中心的に運営してるメンバーはこれに当てはまることは少ないです。
愛着が深かったり指導者を信望している、社会的地位に直結してる、友人関係が活動にほぼ依存している、既得権益を持っている等、別のモチベーションに支えられてることが多く「なんとなくつまらない」だけでは簡単には抜けませんので。)
このとき、自ら外にでていく姿勢が大事。
なお、別に活動をやりながら外にでていく、というのも全然ありです。
特にいいのは、自分が教える立場にたつことです。
自分が教える立場にたって、生徒によりそった課題分割をやってみると。
自分が課題だとおもわなかった部分が実は課題だったとか、自分が課題と思ってた部分はすいすい抜けてく生徒、自ら課題分割やってのける猛者まででてきたりと、思わぬ発見が必ず見つかります。
その発見が、自分の新たなアイディアと「よし、次はこれやってみよう!」というやる気につながるのです。
この発想→やってみよう→やる気がどんどん連鎖すると、いつの間にか仲間集まるし、楽しいし、成果が勝手にうまれています。
また、勉強会やワークショップ、大学院に生徒として参加するのもいいと思います。
このときは、書籍(うさんくさくない出版社から!!)を執筆している等一次ソースとなる人から学ぶ目的での勉強会・ワークショップ・大学院なのか、はたまた同じレイヤー同士の現場同士の情報交換やネットワーキングが目的なのかちゃんと分けていくのがポイント。
金も時間も有限な中、よい学びやネットワーキングを得られる場は限られてるなと思います。
『(離)刺激を得る』ためにいった勉強会が、実は『(守)分割する』向けとか、単なる企業のサービス説明だったりするとがっかり度はんぱない。
名刺交換してもその後100%繋がらない人としか会えない気がします・・・・
逆によい学びやネットワーキングができると、芋づる式に芋がでてきます。不思議ですけど。
個人的には「ちょっと怖いけど、楽しそうだなー。えいやー飛び込んでしまえ!」でランダムにいった学びの場がクリティカルヒットして、たくさんの人と出会えるよい流れに導いてくれて、人生かわることが多いです。
私はほっとくと人里からどんどん離れてひきこもってしまうので、このランダムを強制発動する人(人脈・知識多くて私のようなひっきーをひきずりだしてくれる人)は無条件に尊敬します。
『(離)刺激を得る』は、自分のパワーから離れて、他人の脳みそやパワーをも使って新たなものを生み出そうとする行動に他なりません。
こういう行動をして経験をつめるよう、生徒を場にどんどん連れ出す、人を紹介していくというのが、楽しみながら続けられる近道なのかなと思います。
ステップアップを加速する要素
1.(守)分割する → 2.(破)つなぐ → 3.(離)刺激を得る のステップアップを加速する要素は以下。
- 毎日5~10分でもやる
- アウトプットを人にみせてフィードバックをもらう
『毎日5~10分でもやる』については、二つ意味があります。
ひとつは、同じ練習時間でも、毎日10分集中のほうが月300分1日で一気にやるより、習得や体にたたきこむスピードがはやいという理由。
もうひとつは、毎日いきなり集中モード発動することで、日常と本番の境目を薄くする効果があるという理由から。
イベントでのグラフィックレコーディングやジャムセッションのステージなど、人がみている本番では力を発揮しきれないパターンがよくあります。
私は本番のグラフィックレコーディングは割と何がこようと大丈夫なのですが。音楽のイベントでステージ立つと怖くて、頭真っ白になって手がとまるか、だらだらしたつまらないソロをひいてしまいがちです。
私が本番強い人間なら音楽だって緊張せずひけるはずなのにひけないんですよーーー!なぜ分野で差が出るのじゃああああ!!
この差はなんだ、とスティールパンの師匠であるトニー氏に聞いてみたところ。
「毎日いきなり集中モード発動することで、日常と本番の境目を薄くする」という話がでてきたのでした。
確かに、グラフィックレコーディングは多かれ少なかれ毎日やってるので、緊張して頭真っ白になっても切り替えて数秒で集中モードをだすことができるのかもしれません。
それにいまいちでも「えいや!」でつなげて一定の質にする、いきあたりばったり力=接着剤も持っているし。
なお、音楽ではそこまでいきあたりばったりする力は強くないです。弱粘着な接着剤。
『アウトプットを人にみせてフィードバックをもらう』については、浅野先生の情報デザインフォーラムでの発言が素晴らしすぎたのでそのまま引用します。
「違う世界をみようとする、かきかえる=学ぶこと。
学ぶのはインプットふやすことじゃなく、アウトプットすること。
みんながそこにいってあーだこーだやってるとつっこまれてインプットになる。」「大人はアウトプットしなくなる。
常にアウトプットしてかきかえる。
必殺技すてないと成長しない。覚えたら捨てろ。
やりつづけてると成長には限界がくる。」「この覚えたら捨てる、を繰り返していると、『どっからでもかかってこい』状態になる。」
第16回情報デザインフォーラム 『「つくる」を「つくる」』に参加してきた
新たなインプット(指導や他の人の脳みそにあるアイディア)を得ようと思ったら、自分がまず可視化して出す、というのが一番の良い手なのかなと。
可視化して形にださないものに、人はつっこめないので。
この段階で怖いのはあたりまえです。
教える側としては、生徒の怖い気持ちをわかったうえで、アウトプットに適切なステージを用意して経験を積めるようにしておくのがよいのかなーと最近は考えています。
成功も失敗も、どちらにせよ適切なサイズで振り返り可能ならば、次の学びへ進むためのエンジンになりえるので。
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どんな分野にせよ。
教える立場から、「やりたい!」と思って参加してくれた生徒の気持ちは尊重したいし、何か力になれると嬉しいなあって心から私は感じています。
でも、ものすごーーーーーく正直にいうと、そこにモチベーション感じるのって、自分が新たな何かを得られるからなんですよね。
純粋にその過程が楽しい。
思わぬ音とかアイディアとんでくるとゾクゾクするしワクワクする。
生徒の成長とかできあがった成果物(ある時期の仮説検証の結果)は、副次的なものにすぎないんです。
なんという自己中心!ハハハハハ!!
『教える』をデザインするということは、思わぬ音とかアイディアに自分から出会いにいく行為だと思います。
結果は利他的だけど、一番は自分のため。楽しく続ける自分のため。
そんな面白さと色々出会うために、またワークショップを企画しております。
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