ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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HCD-Netフォーラム2015「キーワードに学ぶHCD」 ~初心者・初学者のための人間中心設計~

img_150531HCD-Netフォーラム2015の「初心者・初学者のためのHCD:キーワードに学ぶHCD」でグラフィックレコーディングをやってきました。
業務でHCD(人間中心設計)とかUXデザインとか呼ばれる分野やってると、「どう社内に伝えていく?」というのが一つの課題になっていきます。
社内で導入や教育をしていくにあたり、どう考えていけばいいのか?というヒントをいただけたいい機会となりました。

人間中心設計のプロセス

このセッションの担当は、浅野先生、インフォバーン井登さん、マミオン佐藤さんと豪華。
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人間中心設計のプロセス「利用状況の理解と明示」「ユーザー要求事項の明示」「ユーザーの要求事項を満たす解決策の作成」「要求事項に対する設計の評価」ごとに、重要なキーワードが解説されます。
このプロセスは最初とっつきづらいですが。
一回頭にたたきこむと、UXデザインのいろんな方法論がすんなり体に入ってくる超すぐれものです。

共感できる物語を!「利用状況の理解と明示」「ユーザー要求事項の明示」

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ユーザーとは、一番大事な人。
「いろんな人向けに色々やりたい」で複雑化して結局だれにとってもわかりづらいものをつくるのではなく、メインのユーザーに対して使いやすいものを考えて作ろうぜ、というのがUXデザインの根本思想です。

ユーザーの頭と心を理解して何かを作ろうと思うと。
顕在してない部分を見る必要があるし、しかもそんな見えないものをプロジェクトのメンバーと共有する必要があります。
インフォバーン井登さんは「顧客自身が説明できない無意識の領域を対象にする」と表現されていました。
その手法としての、カスタマージャーニーマップやペルソナがこの場では語られました。

「他部門の人とユーザー情報をうまくぶれずに共有するには?」という問いに対し、「物語化」というキーワードがでてきたのがとても印象的でした。
みんなが「このユーザー」として納得でき、「ああ、このユーザーならこうするよねえ」という納得感ある行動のシナリオ(物語)を考えることができると。
井登さんは「本質的ユーザー理解の先にあるものは、理解以上に『共感』が大事」とおっしゃるほど。
この共感するシナリオが描けると、自ずとユーザーの思考手順に沿ったインターフェースを作れるなーと、構造化シナリオ法を知った時ものすごく腑に落ちたのでした。

会社で構造化シナリオ法みたいにがっつり「ペルソナ」「バリューシナリオ」「アクティビティシナリオ」「インタラクションシナリオ」はつくれなくても。
特に物語の核をしめる「アクティビティシナリオ」は、必ず私は自分の案件で書くようにしています。
言語化(私の場合はグラフィックレコーディング化)しておくことで、要件定義の内容や優先順位にぶれがでなくなるし、周囲に説明もとてもしやすくなるのです。

ユーザビリティとは
ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ、効率及び利用者の満足度の度合い
ISO 9241-11

物語としてのアクティビティシナリオに入ってるべき要素は以下。

  • 指定された利用者=ユーザー(ペルソナ)
  • 指定された利用の状況下
  • 指定された目的を達成するために用いられる際
  • 有効さ、効率
  • 利用者の満足度

個人的には、マンガ的に物語つくるのが私は考えやすいです。笑
ユーザーがどんな状況下で、どんな表情してるか、どんなこと考えてるか、何をしようと思ってるのかがすごく端的に表現しやすいので。
会社では、この一こま一こまをふせんにかいて、アクティビティシナリオとしていました。
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※引用元 「2014年度 産業技術大学院大学「人間中心デザイン」履修証明プログラム 構造化シナリオ法」情報デザイン研究室

小さく失敗してキャズムを超えろ!「ユーザーの要求事項を満たす解決策の作成」

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「調査と設計の間にはキャズム(深い溝)がある」浅野先生から何度も何度も何度も言われたこの言葉。
現場で情報設計をしていると、このキャズムに本当によくぶちあたります。
ぶちあたった結果、ペルソナが逃亡してよくわからないものをつくったことも多々ありました・・・
このキャズムをこえるための小さな失敗=プロトタイプです。

プロトタイプには、観察・思考するための「スケッチ」と、評価するための「プロトタイピング」があります。
「スケッチ」をするのに大事なのは、自分の思考を見える化する=外化すること。
外化することで、よりアイディアが発散していくことができるのです。
「プロトタイピング」は、ユーザービリティの改善に使われてきましたが、ユーザー体験の創出にも使えるというのがおもしろいところだなーと思います。
インターフェースのプロトタイプを、○○してるユーザーの利用状況におく=アクティングアウトで演じられるものを見ることで、スケッチで思考したその体験に価値がありそうか、というのがジャッジできるのです。

いきなりサービス等つくって工数使いまくって爆死するより、小さく失敗を重ねてより共感できる体験をつくれるのは素敵。
このレベルのアクティングアウトを複数作って、サービス開発を進められるようになれたらいいなーと私は考えています。
(いわれた内容をどう作るのか考えるwebディレクターにそろそろ飽きてきました。何を創るのかから考えたい。)

普段からユーザーの中へ入ろう!「要求事項に対する設計の評価」

「要求事項に対する設計の評価」はマミオン佐藤さん。
リモートユーザーテスト、対面ユーザーテストの話の話や、ユーザーテストをどう見るのか?というテストのポイントについての解説がありました。
効果(タスクを達成できない)、効率(時間や手間がかかる)、満足度(不快感がある)と、発生頻度を掛け合わせると、より重要なポイントが見えてきます。

マミオン佐藤さんが繰り返しおっしゃってた言葉で印象的だったのが、「普段からユーザーの中へ入ろう」
マミオンはシニア向けパソコン教室を運営している会社で、その中だからこそリアルな、生のユーザーの声がきこえるそう。
ProttのユーザーミートアップFablicのユーザー採用など、ユーザーの現場によりそい、一緒に発想していくという文化が広がってきたなーと感じます。

いい物語を書くためには。
人よりも濃密な体験をして相当な引き出しを持つか、人から濃密な体験を引き出してくるかの二通りがあります。
別にどちらでもいいと思うんです。
たまたま私は10年ディレクターとして情報設計していく中で、自分が唯一のユーザーと思ってデザインすることや、自分ができる経験って限界があるなーと感じていました。
その限界が見えると、物語をつくることがすっげーつまらなくなるのです。
いっつもいっつも(自分の中では)予定調和。
だから、私はユーザーのためのみならず、自分自身が楽しくつくりつづけるために、人から引き出す術が必要と思っています。

—–

今、会社でユーザーインタビューデータに基づいたAsIsのカスタマージャーニーマップ作成→ペルソナ作成→シナリオ作成を進めています。
最初はメンバー皆が「こんなデータ共通事項あるのかなー」と半信半疑だったのですが。
だんだんデータを分析して進めるに従って「この人ってこういう人だよね!」「私もそう思った!」「ああ、絶対この人こういう行動するするー!」と会話しはじめてきたのがおもしろいところ。
皆が同じイメージのユーザーを思い描き始めてきたのです。

今回自分は分析に全く入らず、ファシリテーションに専念していました。
ユーザーインタビューデータにもとづいた分析がはじめてのメンバーばかりでも、納得いくペルソナがつくれたのは一つの成果かなーと思ってます。むふふふ。

私のいる現場は旅行会社で、デザインの現場としては決して大きいところではないですが。
楽しくみんながつくりつづけられるために、いい意思決定をできるように、ユーザーのデータから合意形成・発想できる文化をつくっていきたいと思います。

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おまけ:HCD-netフォーラムのグラレコ隊。
DeNA和波さん、グラグリッド三澤さん、私、エム・フィールド金井さんと。
みんなグラフィックレコーディング勉強会のメンバーです。

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