ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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UX方法論-産業技術大学院大学 「人間中心デザイン」

img_15110101_s産業技術大学院大学、人間中心デザイン履修証明プログラムの復習レポ第9弾「UX方法論」です。
わたくし2014年度で履修証明をしっかり修了しましたが。
2015年度授業にも卒業生としてお邪魔して、復習グラフィックレコーディングをしてきました。
(浅野先生、押しかけグラレコ受け入れてくださりありがとうございました!)

構造化シナリオ法について

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今回の会は『構造化シナリオ法』のうちのアクティビティシナリオ・インタラクションシナリオ、UXフローでした。
構造化シナリオ法は以下の3つのシナリオを使います。

  • バリューシナリオ:ユーザー情報・ユーザーの本質的要求・ビジネス情報・ビジネス提供価値から、提供する価値(バリュー)を考え、またそのユーザーが利用するシーンを定義するもの
  • アクティビティシナリオ:ユーザーの利用シーンを行動のストーリー化し、そのタスクを記載したもの
  • インタラクションシナリオ:タスクを実施するためのインタラクションを記載したもの

特に要となるのが、アクティビティシナリオ。
ここでいかに「人間てそうだよねえ」「ああ、あるある!」を書くのか
が、以後のインタラクションの成否をきめるのです。

アクティビティシナリオを書く難しさ

去年学んでから、自分の案件ではアクティビティシナリオを必ず書くようにしてるんだけど。
書く難しさ、いくつかあるなと今日の授業を見ていても感じる部分がありました。

【難しい!ポイント1】人間の「ああ、あるある!」をかきだす時、粒度

例えば「授業が楽しい」という言葉。
授業が楽しい、も、『授業で新しい手法学ぶのが、新しい道具手に入れるようで楽しい』のか『授業ネタにして先達のものの見方、洞察をきく』によって全然違う。

この粒度の違いをかきだすのが、「ああ、あるある!」という共感をよぶポイントだなと私は考えています。
私自身、ユーザーインタビュー&ユーザーテスト、そこからの企画制作をくりかえしてようやく、そのコンテキストの違いに敏感になってきたとは思うのですが。
「楽しい」でまるめてしまう人に対して、その違いをうまく伝えるのはまだまだ課題です…。

今日の浅野先生の話で面白かったのは「調べる」の話。
調べる、にしてもLATCHのどれで調べる?までを書こうという話でした。
LATCHとは、情報の組織化の切り口です。

「それは「情報」ではない。」や「情報選択の時代」の著者であるリチャード・S・ワーマンは「情報アーキテクト」と自称し、世の中にあるすべての情報は次の5つの基準によって組織化できるといっている。
・LOCATION(位置)
・ALPHABET(アルファベット)
・TIME(時間)
・CATEGORY(分野)
・HIERARCHY(階層)
LATCH 情報を5つの基準で組織化するより引用

「調べる」のは、「位置軸(地図等)で調べる」「アルファベット順(あいうえお順)で調べる」「時間軸で調べる」「分野ごとで調べる」「階層をおって調べる」は全然違うのです。

例えば料理。
「晩御飯何をつくろう?」というときでも、状況に応じて探し方は大きくかわります。
はやく寝なきゃいけない等時間制限があり、はやくつくりたいときは「時間軸で調べる」を使います。
また、パプリカがそろそろ食べておかないといけないなあと言う時には「パプリカ」という「分野ごと調べる」を使います。
同じ料理レシピを探すという行動でも、連続性のあるストーリーの中が違えば、ほしい探し方の切り口は全く異なるのです。

【難しい!ポイント2】コンテキストに沿った行動とは何か?

こうした連続性のあるストーリーをどう捉えるのか、というのもアクティビティシナリオの難しいポイントの一つだと思います。
例えば、今日の授業で『家族が外国でめいめい好きなものをみる自由行動の時間をとり、その後特定の一カ所に集合する』がシーンにたいして。
・好きなものをみつけるシーンだけ、集合するシーンだけをかいてしまう
・一つのシーン中のコンテキストを分断してチームで作業していたチームがあった
という、コンテキストが分かれてしまっていたシナリオもありました。

ただ、コンテキストが分断すると、できあがったインタラクションシナリオ、UXフローはごく一部の行動に対した部分最適なものになってしまうようにも感じました。
シーケンスにユーザーが考える手順にはなりきれていない感。
ユーザーが考える手順て、前後のことも少しずつふくまれているのではないでしょうか。

『家族が外国でめいめい好きなものをみる自由行動の時間をとる』ときには、後で一か所に集合することもふまえた行動になると思うのです。完全に一人旅するときの自由行動とは、動き方が違う。
おそらく自分が外国で美術館を見てたら、「集合時間に間に合うかな」という思想で時計をちらちらみるだろうし。
集合15分前みたいな微妙な時間に集合場所近くにいて疲れてたら「すわりたいなー。でもカフェ入るのも微妙だし、コンビニないし、移動して迷うのも怖いから暇だけど壁にでもよりかかってるかー」ってぼーーーーーーっとスマホみてる気がします。
一人旅だったらそんな行動しません。

その前後があることによる行動への影響を感じる粒度は、人それぞれだなと今日あらためて感じました。
今日そこをきちんと押さえて書いているシナリオもみられて、「初なのにすげえ!」とびっくり。
私はこのあたり今でもまだまだな部分で。
去年の授業でも、1月以降の演習授業で上位下位関係分析をしていく中で浅野先生にダメ出しされまくり、ようやく少しつかんだ状態。
アクティビティシナリオを書くたびに、頭をうんうんうならせています。

【難しい!ポイント3】予定調和にもっていこうとする自分に対して、予定調和にさせないよう動かすのが難しい

頭をうんうんうならせるのは、何も考えないとありきたりでいまいち共感できるようなできないようなモヤっとした「予定調和」になってしまうからです。
この予定調和はクセモノで。
アクティビティシナリオの中では「理想の人間ぽい」動き=企画者にとって都合のいい動きをしてくれる予定調和的ユーザーをつい書きたくなってしまうものなのです。

でも、「理想の人間ぽい」動きは人間ぽくない。
図書館学的に、きれいなディレクトリ構造をたどって移動して情報をみつけてくるとか、どんな理想ユーザーやねん。
こういうシナリオがやばいということに気づくのにいいのは、ハイライト法による投票でした。
「共感したシナリオに投票する」とすると、そうした予定調和のシナリオは見向きもされなくなるので一発でわかります。
逆に、人間ぽい「あるある」も浮き彫りになるのです。

予定調和にひきよせられそうになってもその誘惑を断ち切って、ユーザーが考える人間らしい手順をどこまで考えられるか。
「色々な角度からリフレーミングしろ。予定調和壊せ」というのが本日の浅野先生のお言葉でした。

失敗をしながら、前へ進むということ

この方法論の授業、そして産技大人間中心デザイン履修証明は、上記のようないろんな失敗をできる場所というのが素晴らしいなとあらためて感じました。
失敗できるので次の演習でどうチャレンジしていいかがみえてくるし、演習では今度は実務のときにどうチャレンジするのかみえてくるのです。

終了して8カ月経ちますが、自分の組織でUXデザインを行っていく際もやっぱりチャレンジと失敗ばかりです。
社内ワークショップやって失敗したり、プロジェクトに導入しようとして結果としてみられないペルソナつくったり。
それでも。
創ったサービスが上期売上げに相応貢献しているのを知ったり。
ユーザー調査をやっていこうという風潮がマーケティング・販売促進・デザインそれぞれの部署に広がってきていたり。
少しずつ、少しずつ前進はしているのかな?と感じています。

■1:原始期
ユーザーインターフェースの設計は、デザイナやソフトウェアエンジニアの技量にゆだねられている。ガイドラインなどは参照しているが、実際のユーザーと対話する活動を行っていない。ユーザビリティエンジニアはプロジェクトに参加していない。

■2:黎明期
製品リリース前に最終チェックとしてユーザーテストを実施する。ユーザビリティは従来の品質保証活動の一部にすぎない。ユーザビリティエンジニアは製品完成後に”評価者”としてプロジェクトに参加する。

■3:揺籃期
有効な設計手法としてユーザーテストが定着する。前期ではプロトタイプを使ってユーザーテストを実施する。後期ではプロトタイプとユーザーテストを繰り返す(反復デザイン)。ユーザビリティエンジニアは設計チームの要請に応じて”助言者”として随時プロジェクトに参加する。

■4:躍動期
シナリオやペルソナを開発してユーザーニーズを探索する。要求定義から実装まで、設計プロセス全体にユーザー中心のアプローチを用いる。ユーザビリティエンジニアは設計チームの”主要メンバー”の一人としてプロジェクトにレギュラー参加する。

■5:拡充期
リリース後の製品の利用状況について追跡調査を実施する。製品のライフサイクル管理全体にユーザー中心のアプローチを用いる。ユーザビリティエンジニアは(プロジェクト単位でなく)”製品マネジメント”チームの一員として参加する

■6:完熟期
ユーザビリティ知識管理データベースを構築する。組織全体にユーザー中心の文化が浸透し、ユーザビリティ(およびユーザー体験)の管理は重要な経営課題になる。ユーザビリティエンジニアは”経営マネンジメント”チームの一員として参加する。

ユーザビリティエンジニアリング(第2版)―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法―より

ユーザー中心デザインの導入vs納期 -仁義なき戦い- という記事の中で、「3:揺籃期」を自分のプロジェクトで実施していく、というのが2013年の私の目標でしたが。
2015年の今、気づいたら自分のプロジェクトについては「4:躍動期」に入っているし、自分以外のプロジェクトでも「3:揺籃期」になっているプロジェクトもある(もちろん全てとはいえないけれど)。

1ステップ進むのに2年、というのが短いのか長いのか。
それは人それぞれとしかいいようがないかもしれません。
組織の中でやっていくという大変さはここにあるんだと思います。

去年の浅野先生の授業のノートには、こんなことがかかれていました。

スキル=技術+判断(プロジェクトにあわせた形で使う)

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技術だけをいれようとしたって、決して組織は動かない。
「こんな素晴らしい技術があるのに、なんでこの組織では受け入れられないの、ムキー!」というのは、気持ちはわかるんだけど、正直怒るだけエネルギーの無駄な気がする。
(その怒るエネルギー、まわりの人との軋轢をうんで余計に北風を自分に吹かせるだけだしね。)
怒るエネルギーがあったら転職するか、プロジェクトのためにできるちっちゃな何かをみつけて、少しずついれていくのがいいんだと思うのです。

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今年の産技大生のみんなもきっといろんな壁にぶちあたってるのだと思います。
ぶちあたってこそ、きっとここにきているわけで。
またいくつか授業をお手伝いしつつ、一緒に授業を受けさせてもらうことで、私自身色々学び直すつもりです。
産技大の授業は、卒業後の反芻めっちゃ大事!!

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