ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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『現場を前に進める』グラフィックレコーディングの活用と対話の必要性

img_16021252/13(土)Devlove関西さんからご招待いただき、大阪で『グラフィックレコーディング~構造化のコツ~』というワークショップを実施しました。
今回はグラフィックレコーディング3つのスキル「聴きとる」「表現する」「構造化する」の中でも、構造化に重点を置いたワークです。

私自身、会社でグラフィックレコーディングを用いるか?というと実はあまり使ってなく(アクティビティシナリオやストーリーボード考えるときに使うくらい?)、グラフィックレコーディングのスキルを活かして現場で動いている、という状態です。
特によく使ってるなと思うのが「構造化する」という部分。

会議の内容をリアルタイムで関係性を示し、それをもとに考え、進行するという「構造化」。
「構造化には、いったい何がコツとして必要なんだろう?」
そう考えたく、ワークショップを設計しました。

私自身、ワークショップをやって見えたこと、感想戦をやってようやく見えたこと、それぞれあったので記録に残しておこうと思います。

ワークショップをやってみえた、構造化に大事な3点

少しの工夫で、みやすくなる記録はつくれるということ

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今回のワークショップでは、表現や構造化によく使えるフレームやパーツ、その使いどころについての解説をし、一緒に描くというワークをしました。
いきあたりばったりかくと、わかりづらいレイアウトにはなってしまうのですが。
「これからこういう話になるから、こう描こう」という予測判断ができるようになると、適切なレイアウトを使いやすくなります。

  • 序盤がでてきたら、中盤、終盤があると予測し、その領域をとっておく
  • 目標があったら、結果がでてくると予測し、その領域をとっておく
  • テーマがあったら、その周囲にいろいろテーマに関連する話題がでると考えておく

など。

また、表現するときも、以下を注意することでぐっと見やすい記録をつくれるようになっているなと参加者のみなさんの記録を見ていて感じました。

  • タイトルは大きく、結論・まとめを描く
  • リストは頭の点や囲いの色をそろえたデザインにする。
  • リストの頭の文字の書き出しをそろえる
  • 項目のサマリーとしての簡単顔の文字があると、認識しやすい
  • 線は太くしっかりと、指させる記録を目指す

本当に簡単な工夫なのですが。
これをまもるだけでも、見やすい構造化の第一歩になるんだなーと感じました。

楽しく描くことで、気持ちや意見がどんどんでてくること

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今回、振り返りででてきてびっくりしたのが「楽しく描こうと思えた!」という視点。

グラフィックレコーディングの持つ力、特に構造化部分について手を動かすことで「自分でも描けるんだ、挑戦次にこういうことやってみたいな」と感じてもらえてたらいいなと思っていたのですが。
次のアクションプランで「おもろい議事録」「楽しく会議」「楽しくわかりやすく」「課題を明確化する、場をなごませる」「楽しい気持ちで会議したい!」という声がどんどんでてきてびっくりしました。

また、今回はアクションプランの紙に「いいね」の気持ちとして、シールをはっていくというおまけワークもしてみたところ。
誰かの描いた顔マークの中央に★のシールがはられる、顔アイコンにメガネやひげが加えられる、枠に★マークで装飾される、親子の絵の横に親子ぺんぎんのシールがはられていくetc…いろんな形での表現が追加されていきました。
みなさん自然に、人のグラフィックにどんどん楽しいアレンジを加えていくんです。

構造化という部分にフォーカスすると、正しい論理構造でまとめることが求められ、どうしても修行的にはなってしまうと思います。
ただ、そこにグラフィックの力を少しでもいれると。
なんだかかいてて楽しくなるし、見たくなるし、描いてて楽しそうなものをみると、人はそこに自分の気持ちや意見を重ねたくなるんだなと感じました。
さらに大阪の明るいノリが加わったら、そりゃあもう!
終わった後、みんなでアクションプランを見て笑いっぱなしになってしまいました。

対話するということ

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今回、「構造化のコツは何か?」というテーマで行ったうち、ワークショップ本編ではなくふりかえりの感想戦で実感したのが「対話するということ」でした。

ワークショップの終盤、グラフィックレコーディング演習部分の対話パートについて、「なんかもやもやした」という声が場の空気・感想戦ででてきていました。
相手と話してレコーディングすることではなく、一人で描くことだけに夢中になってしまったり、話に集中できない環境にしてしまったり。
グラフィックレコーディングを用いて対話が深まる、という体験が生まれたかというと、正直いって厳しかったと思います。
ここは私の事前設計のみならず、「対話を深めるためにはどうしたら?」というその場で判断して動くファシリテーション力が求められていた部分。
「構造のすりあわせ、思いこみ解消のプロセスがもうけられなかったね…」「もう少し対話をブレイクダウンするべきだったのでは?」と、改善すべき点だったなというのが見えてきました。

その話の流れでDevlove関西の中村さんから「レコーダー単体で現場は前に進むのか?」という質問を投げかけれたとき、私は明確に「NO」と答えました。
描くだけではだめだって、わかっていたんです。
大事なのは、『現場を前に進める』ために、対話しながら、グラフィックレコーディングを描くということ。
構造化するプロセスに必要なのは、すりあわせる対話なんだなと痛感しました。

『現場を前に進める』グラフィックレコーディングの活用と対話の必要性

会社なり、イベントなり、グラフィックレコーディングを描く場においては、レコーダーは『描く』役目を与えられます。
でも、『描く』のは手法であって。
どのように他者とかかわるのか、場にどうかかわるのかという役目はたいてい明示されません。

もちろん、会社だと私はサービス開発(特にUXデザイン)に責任をもつ立場なので。
異質のステークホルダー同士をつないで期間内に合意形成するとか、モレなく納得感も質も高い議論をして要件定義するとか、リアルに開発現場を前に進める役割自体がレコーダーの役目となります。
でも、イベントやワークショップだとちょっと違うなーと感じています。
グラフィックレコーディングを頼まれて、かいてみたらイベントで客寄せパンダだったということもあります。

何のために私たちは描くのだろう?
真っ白な模造紙、真っ白なホワイトボードの前に立つたびに、問いつづけていました。

同じように、問い続けていたのが常葉大学 造形学部 安武研究室・未来デザイン研究会の「HCD-Net サービスデザイン方法論 連続セミナーのグラフィックレコーディング」なのかなと感じました。

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この記録のおもしろいところは、会が進むごとに、記録の手法がどんどんかわっていくところです。
最初は絵と整ったフォーマットを中心に「正しさ・要約された」目指したような記録をしていくのですが。
情報を理解しようと尽力・記録者ならではの切り口で挑む記録になり、そして終盤はリアルタイムドキュメンテーションに近い形になっていくのです。
この変化の根源にあったのは、関わり方の変化でした。

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「どのように記述するか」よりも「何を記述するか」に意識が集中しやすいようにフォーマットを用いている。
(中略)記録者は自分なりの理解で記録する内容を取捨選択しており、情報の網羅性に乏しい反面、要点のみが整理された結果となった
(「HCD-Net サービスデザイン方法論 連続セミナーのグラフィックレコーディング」より引用)

序盤は、自分なりの理解で記録する内容を取捨選択していくこと、そして自分なりに「この要素とこの要素ってつながるのではないか?」という解釈を含めて描いていくというのが増えていくようになります。
正しくあろうとする記録から、記録者の主観が見えてそこから記憶が呼び起こされるようになっていきます。

グラフィックレコーディングは、ぶっちゃけ「正しい」が問われるとけっこう厳しいなあと感じます。
正しさを求めるなら、網羅した記録とか、グラフとか表とか、発話録があればそれでよくて。
その多くの情報から「これだ!」という切り口…ストーリーをもって提示し、場をつくりだすのがグラフィックレコーディングの役目ではないかと私は考えています。

常葉大学の若きグラフィックレコーダー達に必要なのって、このストーリーの提示なのかな?と私は個人的に感じていました。

そう感じたのは1年前の2015年2月、立正大学で常葉大学の方と同じテーマについてグラフィックレコーディングを同時にやったとき。
「ワークショップのパートのプレゼン(グラグリッド三澤さんによるもの)をグラレコしてほしい」というお題に対し、常葉の学生さんたちはそのまま「プレゼンのみ」と受け止め、レコーディングをしていました。

もちろんそのレコーディングはとても美しいのですが。
でも、何かが足りないのです。場に与えるパワー的な何か。

ワークショップにおけるプレゼンって、それだけで完結するものでは決してありません。
そのプレゼンが土台になって、声がでて、次のワーク、その次のワークにつながり、何か学びにつながるものなんです。
プレゼンの要約をしようと思うと総花的になってしまうので、「今この場に何が必要なのか?」という視点でワークショップにでてきた要素をぬきだすことのほうが大事なんじゃないかなーと思うのです。

描くのは手法、大事なのは関わり方。
関わり方を決めると、自分なりの切り口描く必要性がでてきます。

自分なりの切り口=主観ともとれます。
その立場で、人前で描くという行為はとても怖いです。
だって、その関わり方が間違っていたら、なんの意味もなさなくなるから。

話はもどって冊子の後半、常葉の学生さんたちは、この関わり方についてすごく考えていたんだなと感じる記録があります。

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受講者の「イラストよりも構造化してほしい」「自分のメモと照合したい」「言葉では難しい概念化が嬉しい」「俯瞰してみたい」など期待に対して、記述の仕組みを検討した。講師のスライドを時系列に配して、それぞれについて講師が話す解説を青い付箋とテキスト、講師と受講者とのやりとりを濃紺、受講者の発話をピンクの付箋と文字に大別した。
記録者の主観的な気付きや疑問は排して、学びの場にある情報を分類して表記している。
(「HCD-Net サービスデザイン方法論 連続セミナーのグラフィックレコーディング」より引用)

場にいる参加者の人たちの話をきいて、関わり方をかえているんです。
相当混乱があったのではないかと思います。
そして、記録の終盤ではこんな言葉がでてきます。

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屋外での記録は発話の聴きとりに際して、記録者が受講者グループの「中でも外でもない位置」にいることが重要であり、記録に対してお互いのラポール形成が欠かせないと考える。
(「HCD-Net サービスデザイン方法論 連続セミナーのグラフィックレコーディング」より引用)

※顧問の安武先生の言葉
しかし重要なのは、レコーディングの目標や機能だろう。私たちは受講者のための記録を行ったつもりだが、「学ぶ人が・講座内容を理解するために・講座後に・記録紙を見直している」という想定が理想にすぎず、受講者の実体は把握していなかった。記録者のための記録になっていたと言える。
受講者との聞きとりから、講座内容を社内で説明したり、ノートを補完する場面でレコーディングが活用されているという事実が見えてきた。
(「HCD-Net サービスデザイン方法論 連続セミナーのグラフィックレコーディング」より引用)

この関わり方を悩みながら、思考錯誤していったところに私はすごく感銘をうけました。
また、その関わり方はレコーダーの思いだけではひとりよがりで、場を作るプロセスで対話を重ねていくことでアウトプットがかわってきたという点もとても興味深く感じました。

レコーディングするひとはもちろん「これみんながみてくれて復習の役にたてばいいな」と思っているけど。
独りよがりな記録はパフォーマンス性はあれど、写真だけとって終了など、えてして活用はなされづらい印象です。
その事実は、私も含めグラフィックレコーダー皆がうけとめるべきだと思います。
その独りよがりを解消するのは、「何のための記録か?」「どんな関わり方をして、場に何を与えるのか」という対話に他ならないと私は考えています。

レコーダーの中に役割があるわけではなく、他者・場のなかにはじめて役割はうまれます。
対話をうむ、合意形成をする、認識ずれをなくす、楽しい雰囲気を作る、イベントを盛り上げる。
役割はそれぞれです。

現場を前にすすめるためのレコーディングとは。
記録の目的に応じた関わり方をしてくれるもので、場との対話なしには決してうまれないのだと思います。

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グラフィックレコーディングを描いて楽しいから、活用する、へ。
活用の場を作る時も、活用するためのワークショップ設計をする際も、対話をキーポイントにしていきたいと思います。
スタッフの西田さん、小野さん、松井さん、Devlove関西の中村さん、前川さん、シナジーマーケティングの秋月さん、そして参加者のみなさん、ありがとうございました!

↓当日スライド。結局私が一番学んでる気がする。

グラフィックレコーディング~構造化のコツ~160213 Devlove関西 from Azumi Wada
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