「カンファレンスでのグラフィックレコーディングの果たす役割ってなんだろう?」と昨年からずっともやもやしていました。
イベントでグラフィックレコーディングを描くと、喜ばれる。写真をとられる。
その場は盛り上がって、なんか嬉しい。
でも、そのあとってどうなるんだろう?
また、カンファレンス等で描く場所が増えれば増えるほど、「なんでグラフィックレコーディングなの?」「絵の議事録でしょ、それよりちゃんとした文章がほしいと自分は思う」という話をよくきくようになりました。
今回は、CIVIC TECH FORUM 2016のグラレコ隊として、イベントにかかわる中で「カンファレンスでのグラフィックレコーディングの果たす役割ってなんだろう?」について考え続けました。
カンファレンスでのグラフィックレコーディング=記録としての役割?
まず真っ先におもいつくのが、『記録』としての役割です。
たしかに、ぱっとみたときに、「読みたい!」と思わせるパワーがグラフィックレコーディングにはあると思います。
そして(おおむね)リアルタイムでできあがるので、すぐ俯瞰し、振り返ることもできます。
しかし他方で。描く人の主観が強くあらわれる記録でもあるのです。
同じテーマでも、様々な切り口がみてとれます。
例えばCTFでの「プレリュード」という導入のプレゼン。
同じものをきいたレコーダー2名(成田さん、和波さん)が、まったく別の表現をしています。
成田さんは『実践』『やってみて大変』というイベントで話すテーマの話、会場の内容を記録しています。
和波さんは、『1日楽しんでください!』を全面にだし、プレリュードという音楽の前奏曲をイメージした記録を描いています。
絵=どうしても描く人の主観が強くあらわれる記録のため、正確性が求められると厳しいな~と思ってしまいます。
「絵の議事録でしょ、それよりちゃんとした文章がほしいと自分は思う」という人は、「誰がどんなことをどんな文脈でいったか」というような、(完全ではないにせよ)正確性を求めているのかなと感じます。
シビックテックフォーラム2015の記事は、文章の記録と一緒にグラフィックレコーディングを記録としてあげているところが素敵。
記録としての役割はもちろん大きいのですが、果たせる役目としては限定的と思っています。
カンファレンスでのグラフィックレコーディング=対話を促す役割?
次によくきくのが「対話を促すための役割」という点。
グラフィックレコーダーの多くは、「自分で描いたものに対して、対話がうまれるといいな」と思っているのではないでしょうか。
実際、対話がうまれる瞬間ももちろんあるとは思います。
ただ、みていると。
まず、みんな写真をとるんですよね。
グラレコ渋滞#civictechjp#グラレコの交通整理が必要 pic.twitter.com/2av4TflZaG
— matsumoto hatsuji (@hatsu_matsu) 2016年3月27日
で、それを見て対話がうまれるかというと。
あれこれじっくりみて、そして移動される方が大半でした。
対話、といっても、はりだすだけでは正直そこまではいききれてないのかなと思います。
(もちろん、いろいろ話されてる方もいたのも事実です!)
グラレコはとても注目をひいて、みたくなる記録ではあるけれど。
私は対話をうむためには、「はりだす」だけではまだまだ足りないと思うのです。
厳しい言い方ですが。
はっただけで対話がうまれる、って思うのはレコーダーの願望でしかありません。
対話をうむためには、もう一歩、しかけが必要。
『場』で対話を深めるための時間、問いかけとか。
(そのあたりは、『対話の場を、グラフィックレコーディングで深める ~Code for Nagareyama IODD2016の事例~』に詳細を記載しました。)
@wanami3103 登壇者とレコーダーが振り返りを行う時間を作って、その時間自体をイベントに組み込むのが良いかも。レコーダーが説明しながら、「この理解、会ってますかね?」みたいな。グラレコに対してツッコミを入れるということ自体にそもそも意識が無い人が多いので。
— Hal Seki (@hal_sk) 2016年3月28日
このへんは、グラフィックレコーダーだからこそできる場への関わり方を、もっと考えられたらいいなーと思っています。
カンファレンスでのグラフィックレコーディングの、いちばん大きな役目
記録は一長一短、対話はしかけと一緒に考える必要がある。
では、グラフィックレコーディングだからこそできる一番大きな役目ってなんなんだろう?
(そして私のグラフィックレコーディングは、たいしてうまくはない。うまい絵に感動してるわけではないことは確かです。苦笑)
そんなことを考えつつ、『シビックテックの資金調達環境』のグラフィックレコーディングを描いていました。
そして『シビックテックの資金調達環境』のパネルディスカッションが終わったとき。
一気に登壇者の方がグラフィックレコーディングの前に集まってきてくださいました。その時の熱量はすごいもので。
とても喜んでくださっていた、というのが本当に正直な印象でした。
【CTF2016】#civictechjp
記念撮影! pic.twitter.com/R879jy8snY— CIVIC TECH FORUM (@civictechforum) 2016年3月27日
きっと、レコーダーのみんなも、この瞬間にたくさんであっているんだと思います。
描きあがった瞬間や、はりだされた瞬間。みんなが笑顔になるあの一瞬。
実は、それこそ、イベント参加者が求めるものなのでは、と思うのです。
溢れ出た感情。
そして、その感情こそが、次への原動力になる。
たとえるなら、甲子園における、吹奏楽部のようなもの。
吹奏楽部は、応援のいち立場です。野球部と一緒に野球で戦うことはしません。
音楽がなくたって、応援はできるし、野球だってできます。
じゃあなんで、音楽があるんだろう?
音楽が、その場の一体感をうみだすからに他ならないと私は考えています。
甲子園や応援に使われる音楽は、学校の校歌や、単純なメロディーのファンファーレ、みんなが一緒に歌いやすい曲が中心です。
例えば、2014夏の甲子園。
『1.さくらんぼ 2.狙い撃ち 3.学園天国 4.ルパン 5.Shake 6.アフリカン・シンフォニー 7.See Off 8.コンバットマーチ 9.ポパイ 10.ハイサイおじさん 11.ドカンと一発! 』
多くの人が一緒に歌え、気持ちを一つにして、「がんばれ!」という気持ちを伝えることに、音楽が使われています。
また、応援団が視覚的にもその気持ちを促します。
間違えても、吹奏楽部は、吹奏楽部員みんな大好きなアルフレッドリードとか(アルメニアンダンス、春の猟犬)、『吹奏楽のための民話』『バラの謝肉祭』『吹奏楽のための序曲「センチュリア」』とかはやりません。
名曲だけど。だって応援に適さないもの。。
カンファレンスでのグラフィックレコーディングは、その場の話を視覚化します。
その場でうまれた会話が視覚で見えるというのは、ものすごくパワフルだし、感情としてすごく『上がる』のだと思います。結果、感情が溢れる。
今回のシビックテックフォーラムのイベント趣旨は『様々なステークホルダーが一堂に会し、交流することで、CIVICTECHを一歩前に進める場としたい。』でした。
だとしたら、場にかかわるグラフィックレコーダーとしてやるべきことは。
イベントの雰囲気、イベントの趣旨を体験として切り取り、伝えること・・・『CIVICTECHを一歩前に進める』ための記録を描くこと、だと考えました。
言語化すると、例えばこんなかんじ。
- 「ローカル」「テクノロジー」「ビジネス」等様々なステークホルダーが集まったからこそ生まれる、場の雰囲気、熱量を描く
- 「課題 × IT の理想的な関わりあい方ってなんだろう?」の答えを、パネルディスカッションや講演で見つけて描く
- 「CIVICTECHが一歩前に進むために何をする?」の答えを、パネルディスカッションや講演で見つけて描く
「絵の議事録を描く」と考えると、正確性追求しそうになり厳しくなってしまいますが。
シビックテックフォーラムはお祭りです。
「お祭りをもりあげる、みんなが明日からいきるパワーにするための絵を描くぞーー!」と思うと、ずっとずっと楽しくかかわれると思うのです。
となると、グラフィックレコーダーはどんどんやることがあるわけで!
↓「スタートするぞ!」という期待感をあおるパネルを作る(実はグラレコはった余ったパネル領域の有効活用!笑)
↓ドローンの話で会場が大盛り上がりだったので、ドローンをすきまに描く!
最後に、余ったボードで『また来年!』ボードを作成。
その場の勢い、3分くらいでレコーダー3人(私、こばりさん、アオナミさん)で描きました。
うっかり誤字があり、あわてて誤字の箇所をだるま=となりのグラレコで用いてた金沢のモチーフを使ってなおして大笑い、という一幕も。
このへんは、フジロックフェスティバルの門の裏側(会場をでようとした人用に設置された)がアイディアのベースになっています。
これ毎年みてますが、やっぱりいいなあと思うのです。
http://fujirockexpress.net/12/17672.html より引用
「カンファレンスでグラフィックレコーディングが果たす役割、何だろう?」
という問いに対し、今回のイベントでは「エンパワーメントする役目」と明確に定めて関わりました。
絵を使って、場に参加する人たちの気持ちが溢れるのを、エンパワーメントする役目。
だから正確な記録にこだわるより。
その場でしかうまれない話とか熱量をどれだけ描き、見た人が「参加してよかった」と思えるかどうかが鍵だと考えています。
そこから次のステップに進むかどうか、という指標での評価は、(グラフィックレコーダー含め)場を設計するすべての人たちの責任だとも思います。
場をつくる一員として、グラフィックレコーダーはいます。
対話の場、議論の場、アイディア創発の場、カンファレンスの場。
関わる場は様々です。
大事なのは、「なぜその場で『絵』が求められているのか?」を理解することにつきます。
この一点を理解し、そこに対して目的に応じた関わり方をすることが、グラフィックレコーダーに求められるスキルだと私は考えています。
美しい絵を描くことより、正確な記録を描くことより、何より大事。
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