ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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HCD-Netフォーラム2016で、「ビジネス、社会に貢献するHCD」を考えた

img_160613昨年につづき、HCD-Netフォーラム2016に参加してきました。
今年は人間中心設計専門家とったこともあり、自分としては何か少しずつアウトプットしたいという思いもあり。
「ビジネス、社会に貢献するHCD」ライトニングトーク枠で参加を申し込みました。

「ビジネス、社会に貢献するHCD」

「はやくまわす・技術・ステークホルダーとの付き合い方」

ライトニングトーク・セッション「ビジネス、社会に貢献するHCD」は、企業や教育現場等、様々な実践者が13名あつまって実践事例を共有しあいます。
そして、その題材をうけて、千葉工業大学山崎先生、コンセントの長谷川さん、リクルートテクノロジーズの坂田さんが、「ビジネス、社会に貢献するHCDとは?」について考えます。

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↑グラフィックレコーディング。(自分用メモとしてのスケッチノート)

様々な分野の人が話される中で、山崎先生が全体像を「はやくまわす・技術・ステークホルダーとの付き合い方」が今のトピックだよね、と総括されていたのが印象的でした。
私は『(最新の)技術』については実はそんなに興味が強いほうではないので、インフォバーン辻村さんの『プロトタイプの進化』はとても興味深かったです。
技術の進化にともなって、「体験のプロトタイプできること」ももっともっと広がってきてるんだな、と実感。

また、IMJ佐藤さんのNPSの話ももっと詳しくききたかったところ。
私は定量定性両軸でデータを見て施策を考えるのがビジネス貢献に必須という肌感覚をもっているのですが、どうしても定量の数字=KPI(アクセスログ解析中心)でした。
そこを顧客のロイヤルティを測るための指標のひとつ、NPS(ネットプロモータースコア、Net Promoter Score)と、定性的な調査を組み合わせてビジネス貢献を考えていくという話は新鮮でした。
KPIもNPSも状況を定量化して見える化するための手法の一つだと思うので、目的に応じて使える事例および手段をいろいろ知っておきたいなーと思います。

「ビジネス、社会に貢献するHCD」の分類

この話をうけて、坂田さんは成果と過程、内的効果と外的効果をについて以下のようにまとめられていました。
(ここ、私のグラレコではぜんぜんひろえてない。笑)

人間中心設計 / UX デザインの価値定義
人間中心設計 / UX デザインはビジネスや社会に十分に貢献できる、または貢献していると考えています。では、どのように貢献しているのでしょうか?今回発表いただいた内容はその証明にもなると思いますが、人間中心設計 / UX デザインは以下の軸でビジネスや社会に貢献していると捉えることができます。

OUTCOME(成果としての人間中心設計 / UX デザイン)
PROCESS(プロセス、過程としての人間中心設計 / UXデザイン)
加えて、ビジネスや社会への貢献を大きく分けて

内的効果(組織やステークホルダーに影響を及ぼすもの)
外的効果(顧客やユーザーに影響を及ぼすもの)

(中略)
A: 成果として組織やステークホルダーにもたらされる効果
B: 成果として顧客やユーザーにもたらされる効果
C: 過程として顧客やユーザーにもたらされる効果
D: 過程として組織やステークホルダーにもたらされる効果
ビジネスや社会に貢献する UX デザインの価値とは?

坂田さんの分類で、『同じ「もの」を導入したからといって同様の結果が得られるとは限りません。にも関わらず、機械的な導入だけが進み、人間中心設計や UX デザインの過程で重要となる (C) や (D) への理解が得られずにいました。』という指摘は、多くの現場できっとおきていることなのかな、とも思います。

現場でやっていると、ビジネス貢献の証明手段として(A)はとてもいいのですが。
(D)の部分も、開発中は相当恩恵を得られているなと今実感しています。その実感は、「無駄なものをつくらずにすむ」「優先順位を決められる」という成果なのですが、この感覚や重さを共有できるのはプロジェクト内部になってしまうのです。
はたからみたら「なんかあのプロジェクトは順調だね」で、その奥にある実践は注目されづらいのかなあと感じています。
(ストーリーボードとか壁にはって可視化したとしても。「プロジェクトの必要な時期で意識的に見る」という行動がないと、単なる壁の絵でしかないし。)

UXデザインの介在価値は?

坂田さんの話で印象的だったのは、「UXデザインの介在価値は?」という問いかけでした。

デザイナーはユーザーの代弁者であれ。
そんな話をきいて、実際そうあろうとする人も多いと思うのですが。
私はここ、業務やればやるほど、代弁とはちょっと違う関わり方をしないといけないなーと感じています。

ユーザーの代弁者というよりは。
ユーザーの利用状況や行動、思考感情をチームでとらえらえるよう、プロセス設計や問いを考える役目。
特に現在の社会で、地域活動にかかわっていると、地域の人=ユーザーなのです。
そのときに「代弁者」となるデザイナーなんて別にいらないです。だってユーザー目の前にいるもん。
「代弁者」は、「ユーザーの利用状況や行動、思考感情をチームで最大限共有し、ものづくりのベースとする」ための存在なので、だとしたらそのプロセスをつかさどること=「問い」をつくること、が必要になっていくんじゃないのかなーと思ってます。

リソースありき?ビジョンありき?

よくUXデザインの話をすると、ビジョンありきな方向に傾きがちですが。
「事業のフェーズにあったほうを」という長谷川さんの言葉が、印象的でした。
つい「ユーザー中心!」といいはじめると、自分たちのもっているリソースから考えることには罪悪感を感じてしまうのですが。
実際のビジネスで「既存のノウハウを使う」「これが強みとして持っている」そこからの発想、ビジネスの持続可能性考えると必須だよなーと。

ただ、自分たちのもっているリソースから考えるといまいち今のちょびっと改善程度の案中心にはなってしまうのが悩みどころです。
既存のリソースを知っていれば知っているほど、無意識に捨てているものがある。
今関わっているプロジェクトがまさにこの「リソースから中心に考える」方向の色が強いのですが、そのとき発想を広げてくれたのは、一緒に進めていたデザイナー(兼ディレクター)でした。

「こんなことってできないの?」「これはやりたいなー!」
彼はリソースについてはさほど詳しいわけではないけれど。
その分、デザインの話を一緒にしていると、自分一人では無意識に切り捨てていた発想が多々あることに気が付きました。
その発想がでてきた瞬間、彼の発想にのって二人でどんどん考えていくほうが、おもしろいものができるのです。
リソース中心から発想するとき、リソースに詳しい人だけでは絶対にだめ。
新しい視点で対等に話せる人がいるーそんな環境づくりがベストなんじゃないかなと思います。

残念ながら彼は今そのプロジェクトからは離れてしまっているのですが。
また一緒に仕事できたらいいなあと今でも思いかえします。

自分とデザインのかかわり方について

私がやっぱりほっといても一番考えてしまうのが「ステークホルダーとの付き合い方」の部分。
別に今の仕事ゆえにどうこう、というよりは、自分自身のあり方なんだと思います。

今回、自分のプレゼンは、まさに「ステークホルダーとの付き合い方」どんぴしゃ。

Online Travel AgentでのUXデザイン from Azumi Wada

今は「UIデザインを作る(ディレクションする)」というのが部署のお仕事なのですが。
デザインする人の役目は、デザインをつくることだけではなく、事業として持続可能なデザインプロセスをつくることだと私は考えています。

そこにはユーザー目線も含まれるし、事業貢献となる数字も、保守性も、旅行業としての担保、プロジェクトチームとしての関係性も含まれます。
事業会社に(正社員という)一定の責任をもっている以上、「いいデザイン(見た目)つくればいい」とだけ思っている人はいないはずですが。
じゃあ、事業として持続可能なプロセスをつくるとなると、難易度はとても上がるなーと感じてます。
まだまだ自分もやりきれてない範囲だし、同僚や同じくデザインに関係する他部署のメンバーも皆苦戦しているところに見えます。

事業として持続可能なデザインプロセスをつくることを目指すと。
私は明確に、プロジェクトでデザインをつかさどるファシリテーターになる・・・というのが自分のデザインとのかかわり方かなと考えています。(というあたりをプレゼンではふれています。)

もはやその役目を何と呼ぶのかはよくわかりませんが。
とりあえずwebディレクターという名称はなんにでもつかえて便利。

きっと、ファシリテーター以外にも、「デザインを事業貢献につなげるために、自分はこんな風に自分の役割を認識している」他の役目もいろいろあるはず。
役職名関係なく、そんな人たちが自任する立場の話はもっときいてみたい。
きっとそこに、その人の人生の価値観が含まれているのではないでしょうか。

これから挑戦したいこと

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研究発表をきいて、「自分も研究発表したい」と思いました。
学問の世界で、バトンタッチをしていく中に入りたい。

研究としてアウトプットされたものに、さらにレスポンスをしていくことで、知を積み上げていくという行為そのものが、デザインへの一つのかかわり方(貢献)になれるのではないかと考えています。
次に仕事で挑戦したいことを考えるとき、学問(研究論文等の論文)を使うという手法、実は全然やっていなかったので。
次のプロジェクトでは挑戦してみよう!んで論文かいてみよう!と思うとなんかわくわくしてきてしまいました。単純。

私は学問がとても好きです。
天才の考えてることを見える化して、新しく誰かが理解できるように見える化するのは純粋に楽しいし、自分が解釈して世界を広げていくのもとても好き。
私が今こうしてアウトプットできているのは、学問と、その学問を生み出してくれた先達のおかげといっても過言ではありません。(そして学ぶ環境をくれた家族のおかげ)。

恩送り、なのかなあ。
まだまだ学ぶべきことは多々あると思いますが、体系的にアウトプットもしていくことで、私が好きで育ててくれた世界を耕していけたらとてもうれしいです。

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