ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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『ユーザーテストLive! 3周年記念 UT事例発表会』でユーザーテストについて語ってきた

ひさびさにUXデザイン業務の話の記事です。
ユーザーテストLive! 3周年記念『UT事例発表会』── UX先進企業の担当者が語る「活用事例」というイベントで、現場でのユーザーテストの実践について語ってきました。

お声がけくださったのは樽本さん。私が現場でいちばん助けてもらった「ユーザビリティエンジニアリング」著者の方です。

お題は『サイボウズ・DeNAトラベル・KDDI・スピカ・ピクシブ ── 注目企業の先進事例を一挙公開!』。
イケてる設備があるわけでも、専門チームがあるわけでもないけど。
英語が残念レベルでも、グローバル向けサービス担当として、現場の手作りの工夫でどうにかできるよ!というお話をしてきました。

登壇スライド『海外のユーザー向けwebサービスでのユーザーテスト実践』

海外のユーザー向けwebサービスでのユーザーテスト実践 from Azumi Wada

基本的な私の指針は「開発工数的にHCDプロセス全部やるのが現実的に無理ゲーな場合、まず『評価』から力いれてやる」
登壇スライドにもあるオーストラリアのホテルサイトの事例も、日本人向けサービスでのペルソナ&カスタマージャーニーマップで仮置きして、要件定義をしています。
つくったものをユーザビリティテストや、ログ解析(ヒートマップ含む)実施して、少しでもユーザーが使いやすいものに近づけていくのです。

「評価する」の後、また「企画する」「解決策作成」にもどってぐるぐる。
海外ユーザーの「調べる!」をやるのは超理想的だけど開発工数的には難しいので。
身近にいるレベルの人(日本国籍ではない社内の人や、オフショア先の人)で利用状況少しでも知るための時間を施策のたびに小さくつくって、小さい時間を積み重ねて、見えてなかった感覚をすりあわせていこう、という作戦です。

↑そうそう。ユーザーテストって、見えている問題の重さをはかるものでもあるけど、同時に見えなかったものをみるための呼び水でもあるのです。

あと、意外と反応よくてうれしかったのが、リアルタイムドキュメンテーションを併用しての、言語の壁を越えたインタビュー。
言語の壁をこえて、小さい積み重ねをしていくために『可視化』の力はとても大きいです。

「インタビューどうやってるのかもう少し詳しく教えてほしい」と、KDDIの岡さんに質問をうけたので補足すると。

  1. 最初の20分は、インタビューをうける人が、テーマにそった自分の体験を思い出しながら、ふせんに「思考」「行動」を書く。
  2. 描き終わったら時系列順に並べる。(自社の場合は『旅行前・旅行中・旅行後』というように提示してます)
  3. 残りの40分で、被験者には時系列順に、ふせんを読んでもらいながら説明をしてもらう。
  4. たいていふせんに書いてないこともしゃべってくれるので、そういうものはふせんに記録。インタビューされる人自身ではなく他の人が描く場合「こういうこと?」と確認をとってからはる
  5. ふせんに描かれた内容で質問があれば、指さしながら質問。返答してもらったらふせんにまた記録する。
  6. 合計1時間くらいで模造紙一枚分程度のユーザーインタビュー資料ができる。これを撮影して、カスタマージャーニーマップ・AsIsとする。

写真としてデジタルデータに残す、という程度にとどめてます。
理想いうと書き起こしとかもしたほうがいいんだろうけど。
まずは理解する、理解したところところから施策の重みづけをする、という意味合いだと、このくらい粗々でも小規模プロジェクトなら全然問題ないなーと現場では感じました。

登壇されていたみなさんの発表で、気になったこといくつか


↑当日描いてたスケッチノート。サイボウズ齋藤さんと、Pixiv佐々木さん。

「きれいなログより、実況、気づきを」

サイボウズ斎藤さんのこの一言、現場でのあいことばとしていいよなーと思いました。
インタビュー記録をリアルタイムドキュメンテーション化するなど、私も「いかにはやく、実況や気づきをチームにシェアするか」が勝負と考えているので。

余談ですが、サイボウズのUT部屋を見学させてもらったときも、「きれいなログより、実況、気づきを」が体現されてるなーと感じました。


↑シンプル、親しみやすいかんじの部屋!

↑機材や機能もりもり★ではなくて、使うものだけシンプルに。業務できる人だからこそ設計できる場・・・!

チームで記録をすぐみれる、みやすくするのって大事。

ワークフローの設計の大事さ

今回pixiv佐々木さんの話でのUIscope、KDDI岡さんの話でのBaltoなど、プロジェクトに利用しているツールの話がでてきました。

実際に岡さんに、プロジェクトでの使い方を画面で見せていただいて、自社のメンバーも「おおお!」という反応がとても強く。
「使ってみたい!」というような話で盛り上がりました。

こういうツール導入のときに感じるのが、ツールの導入は文化の導入でもあるということ。
ツール=みんなのやり方、思考の方向性も定義するので、「こうした思考の方向性で使いたいから、これを使おう!」という進め方がとても大事なのです。
「さわってみたい!」でさわってみるのももちろんいいんだけど、結局そういうのって「この人だけが使ってる」だけで、あまり広がらない。。。
「やることがあたりまえ」というワークフローにいかにUXデザインのプロセスを実現可能に組み込むか、というのをチームで話せたらいいんだろうなーと思います。

女ゴコロフレームワーク

スピカの國府田さんのスライドであった「女ゴコロフレームワーク」。
こういうフレームワーク、女性向けのすべての利用状況に用いることはできないという前提ではありますが、視点としてもっておくのってすごくいいなーと思っています。
ユーザーインタビューなどで「ここでてきてない」というのを感じて掘った質問すると、たいていおもしろいレスポンスかえってくること多いので。
(過去にどっかでみたことあるなーと思ったら、『男性が理解できない「女の意思決定」を可視化した「女ゴコロフレームワーク」とは。ネイルアプリ「ネイルブック」が語るアプリ運営の生体験談。』だった!)

ユーザテストが教えてくれた女ゴコロ〜女性向けサービスの育て方〜 from 勲 國府田

ちなみにこういうとこで、「お、これでてなさげだから掘りたいな、うっふっふ」という観点としてよくおもいだすのが「タテマエメソッド」です。

[状況]にある[ユーザー]は、
[行動]をしている or する必要がある。
なぜなら[タテマエ]だからだ。
とはいえ、本当は[インサイト]である。
タテマエメソッド

インタビューをしていると、たいていタテマエ中心になってしまってるなー予定調和的だなーという空気をかんじるときがあります。
そういうとき「なるほど、[タテマエ]なんですね。とはいえ、そこってどう感じてるんですか?」という問いかけをすると、爆発的にしゃべってもらえることがありました。
そういう掘るための道具として、こういうツールってとっかかりやすくていいなーと思う次第です。
最初はツール意識するけど、そのうち自由自在に「使う/使わない」判定もできるようになって、自在に駆使できるようになると思うのです。

—–

さいごに。まわしもの的ですが、みんなユーザビリティエンジニアリング第二版はかったほうがいいよ!
「どこが大事なポイントで、どこがライトにできるとこなのか」が本当にわかりやすくて、実務向け。
トークスクリプトなど、すぐ使えるものものってて、非常に現場で活用度が高い本です。

自社でもこの本ベースにユーザーリサーチを設計していました。
この本なかったら今の私はないくらい。
どんだけ樽本さんの本すきやねん私。

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