ビジュアルファシリテーターが本職となって二カ月。
サービスデザイン、企業の経営会議、学校でのワークショップ、コミュニティづくりのためのワークショップ、カンファレンスetc、これまで以上に関わる場の種類が増えてきました。
中でも、今楽しいのが、『問い』の多様性を感じる機会が増えたことです。
同志社女子大学の上田先生とご一緒する機会をいただいたり、Art of Hosting Ayabeに参加したり。
自分の引き出しになかった『問い』がすごくたくさんあるなあ・・・と感じています。
ひとと一緒につくり続けるために、『問い』を連ねる ~30代webディレクターとしての成長戦略(仮)という記事にてふれていた、東大安斎先生の「問いをデザインする技法を探る-ワークショップにおける”良い問い”とは何か?」イベントでの内容も再解釈しつつ。
問いについて、また今感じていることを書いていこうと思います。
『問い』の提示の多様性
1:『問い』の文構造
小論文や論文、ブログ記事における「社会に発信する視点を決める」問い。
ユーザーインタビューでのモデレーターをしていると必要な「話を促し、深める」問い。
ワークショップにおいてファシリテーションするのに必要な「参加する人の思考やプロセスを拡げて、創発を促す」問い。
私が様々な問いにむきあうなかで、特にArt of Hosting Ayabeで「独特だなあ」と感じたのは、『問いの構造が英文法的であることで、実は参加する人の思考を掘り下げ、答えやすくなっている問いがある』ということでした。
たとえば、Collective story harvestingのワークでの問い。
話者のストーリーを聴く際に、この人はこういう観点で話をきこうという『Harvestのレンズと役割(Arc)』には、以下のような問いがあります。
何がつながりを作り、関係性をうまくいくようにさせるのだろう?
(What operates connection and make relationship?)
また、どこかのワーク中でも「あなたが〇〇したいと考えている時に、あなたをさまたげているものは何ですか?」「何が関係性を強めているのだろう?(What made deep connections?)」というような問いがでてきました。
S(主語)+make+O(目的語)+C(補語)の構文なイメージ。
日本語で問いを考えると、「よいつながりや関係性を生み出すために必要なことはなんだろう?」という問いを私はつくってしまうのですが。
英語のmake構文の「させる」という文章があることで、(日本語的には少しなじみが薄いけど)「関係性をうまくいくようにさせるものは何か?」という「何」にフォーカスがあたりやすいという印象でした。
特に、以下のような「妨げているものを考えて掘り下げる」パターンで、圧倒的に答えやすくなると思うのです。
△:「なぜあなたはダイエットできないのか?」
↑パワフル直球すぎて答えづらい。「あなたは」が主語で、なんか問われた側がいけない風な印象を感じる・・・
〇:「何が、あなたがダイエットしたいという気持ちや行動を、さまたげているんだろう?」
↑問いの主語が「何」で、しかも「何」が問われた人に影響しているかという構造のため、心理的抵抗少なく『何』にフォーカスあてて考えやすい。広がりやすい。
↑Art of Hostingの「パワフルな問い」セッションでも、そういえば「Whyはパワフルだけど、対立生むことも」という話がありました。
Whyは力が強い分、主語となる相手を追い詰めてしまうこともあるので。
このあたりは、What、Howに問いかけの文章をなおすとよさそう。
※そしてワークショップで考えるとき、テキストエディタで延々と文章をうちまくるのです・・・
例:
△:「なぜあなたはダイエットできないのか?」
〇:「何が、あなたがダイエットしたいという気持ちや行動を、さまたげているんだろう?」
〇:「どんな状況や気持ちが、あなたがダイエットしたいという気持ちや行動を、さまたげているんだろう?」
↑こんなかんじ。Whyが強くて答えづらかったら、WhatとHowに置き換えて考えてみるのと、S+make+O+C構文で作ってみる。
論理的作戦です。
2:『問い』自体に広がりをもたせるためのアクション
例えば『〇〇のためのサービスとは?』を考えるとき、机の上にすわってあーだこーだしてても議論が狭まってしまうので。
問いをうみ出すための「外へでて発想の種を探す」アウトリーチ的な手法をグラグリッドではとてもよく使っています。
『〇〇のためのサービスとは?』という問いと、実際外にあふれている状況を観察し心にとまったものとかけあわせることで、アウトプットにつなげるのです。
↑グラグリッドのConceptより引用。
UXデザインの現場でも、実際にユーザーインタビューをしたり、ユーザビリティテストをしたりするほか、自分がサービスを体験するというのが発想の種にはなっていましたが。
グラグリッドでは特にデザインプロセスにおいて、重点的にこの『問い』自体に広がりをもたせるためのアクションにとても重点が置かれている(ワークの時間を重点的にとるし、ワーク設計も議論を重ねてつくってこわして時間かける)のが特徴・・・と私は感じています。
『問い』への答えを表現する手法の多様性
『問い』をそのまま語る以外に、様々なアウトプットで表現するという手法も、「参加する人の思考やプロセスを拡げて、創発を促す」のに有効だなーと感じています。
1:立ち位置を変える
人間マッピング。場所に立つこと、近い人と話してみること、セットにすると自分の状況を振り返りやすくなる。
↑私は部屋で軸をもうけてやることが多かった(青木将幸さんの「人間マッピング」が原点でとても好きなので)
Art of Hostingでは、このマッピングが毎日行われていたのが印象的でした。
・4 Fold Practiceという自分を見つめるワークで、今の自分に近い位置にたって、自分を振り返る
・コミュニティを育み、一緒にいつづけるための『8ブレス』の構造を学び、その構造で自分が今いる位置に立ち、自分を振り返る
※画像はART OF HOSTING JAPANより引用
また、Art of Hostingで面白かったのは、Day1とDay3で同じ手法(4 Fold Practice)でチェックインを実施した点。
自分も含め、ワークを行って、参加者の人と関わっていく中で立ち位置がかわっていく人も多くて。
「2日間のあいだで、なんで変わったんだろう?私がかわった転換点は?まわりにいる人は誰だろう?」という問いをおのずと考えることとなり、考える幅が一気に広げられた感がありました。
2:アウトプットを変える
私はUXデザインの現場を動かす人として、ビジュアルファシリテーターとして、紙やホワイトボードを使って『可視化する』、そしてその時の構造・表現・重視するものについては「この場ではこれやろう、ゴー!」的ノウハウをためまくっている反面。
『参加している人が自らアウトプットする』については、案外今までやってなかったなと最近感じています。
例えば、上田先生がとあるワークショップで実践されていた『カットアップ』。
※写真は群馬大学教育実践研究 別刷第30号「Workshop on workshopによる研修のデザイン ─ワークショップリーダー人材育成研修を事例にして─」より引用。
▼ルール
・「雑誌など多くの用意されたものから、問いにあわせて、直感でこれだと思ったものをきりぬいて、ちぎって、はる。文字で写真でもOK」
・つくったものを後からグループで語り、共有する。
▼効果
・KJ法ではでてこない、けど自分にとてもちかいひらめきと出会うことができる(特に雑誌はそういうビジュアルや文字の宝庫)
・つながってなかったものをつなげて、意味を見出す
すごくよかったのが、この、「自分になかったものからひらめいて、発想をひろげる、内省を深める」という点。
「参加する人の思考やプロセスを拡げて、創発を促す」って、問いそのもののみならず、それをこたえる形によってもすごく変わるんですよね。
レゴ®シリアスプレイ®も同じような位置づけなんだろうなーと思います。
実は何気にレゴ®シリアスプレイ®やったことなかったので、一度誰かの場に参加して、手を動かして特性を考えたい。
3:問いかける主体を変える
チェックイン&チェックアウトカードのように、『人間』が問いかけるのではなく『カード』が問いかけてくる(問いかける主体が変わる)、というかたちも有効だなーと感じました。
↑クリエイティブな会議の秘密 〜チェックイン・チェックアウトカードを使ってみよう!〜に参加して、実際に買いました。
(大変言いづらいのですが)実は、「ワークショップとか会議におけるチェックインとアイスブレイクって何が違うんだろう」とうすら思っていました。
なんとなくチェックインのほうが内省的ではあるんだけど、でもアイスブレイクでも内省的な要素をいれて行うので、私は『本編にはいるための準備体操、関係をつくりはじめるきっかけ』的にとらえていました。
この点について、ワークショップ中や終了後に吉田創さんへ質問したところ。
・「チェックインとアイスブレイクは違う。視点や思考を促し、自分ごととし、関係をつくるのがチェックイン。」
・「アイスブレイク的な問い(この場ではGood&Newが挙げられていました)は形骸化する。パワフルではない」
・「パワフルな問いにこたえていくことで、安心して『喧嘩(=議論を交わせる)』できる関係を作る」
という返答をいただくことができ、論理的に納得。
また、ランダムにひいたカードが問いかけてくることで、「この人が言っているのに何か意図があるのでは?」的かんぐりをせず、瞬間的に感じたことをだしやすくなる、というのもいいところだなとも思いました。
(思わぬ問いがあり、そして瞬時に答えることで、人の見えてなかった側面をひきだし、その広がりでお互いの状況理解、関係性がうみだされるのは体感的に知っているので)
では、実際、特に何回も積み重ねて議論していく会議において、このチェックインやってみたら。
関係性はどのようにかわるんだろう?
関係性にどの程度影響を与えるんだろう?
やるのとやらないのではどう違うんだろう?
自分の組織で検証をしてみたくなり、カードを購入しました。
しばらく運用してみて、場の変化を観察し、メンバーと感じたことを話し合って、またブログに書きたいと思います。
※あとカードを購入した裏目的として、(自分のみならずチームメンバーとも一緒に)『他人のたてたよい問いを知る』というのも大いにあります。大量インプット。
ただ、問いについて理解し自分のものにするためには、ただ眺めているだけじゃぜんぜん意味なくて。
「答えて感じて、何が場でおきるのかを観察して、からだにおとしこむ」という手法が有効だと考えています。
↑クリエイティブな会議の秘密 〜チェックイン・チェックアウトカードを使ってみよう!〜のスケッチノート。
この記事の本論とはそれますが。
「チェックアウトとハーベスティングの違いは?」「(両方ともリフレクションではあるけど)チェックアウトは意図がなく、ハーベスティングはプログラムとしての意図がある」という明確な答えがこの場ででたのがとてもよかったです。
目的に応じてワークはやってたつもりだけど、用語としてなんとなくごっちゃに私もしてしまってた部分、私自身あったので・・・。笑
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ビジュアルファシリテーターやってると、描くところに注目があたりがちですが。
描くことじたいは仕事のほんのわずかの部分にしかすぎず、『問い』にむきあってごりごりしている時間がとても長いです。
場に影響を与えるパワフルな『描き』は、パワフルな『問い』から生まれる。
そう思って、日々インプット兼アウトプットをする日々です。
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