ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

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グラフィックレコーダー・グラフィックファシリテーター・ビジュアルファシリテーターの違い~カナダのビジュアルプラクティショナーに聴いたお話より

グラフィックカタリスト・ビオトープの小針美紀さんから招待をいただいて、カナダのビジュアルプラクティショナー、ロザンナさんと語る会に参加してきました。
(ご夫婦で来日されて、日本各地をめぐっているとのこと!関西ではファシリテーション文具案内のナミさんとお話したそう!)

参加できなかったメンバーも多かったので。
いくつか個人的に、きいてて気になったトピック(特にファシリテーション周り)について、記録に残しておこうと思います。

グラフィックレコーダー・グラフィックファシリテーター・ビジュアルファシリテーターの違いって?

「グラフィックレコーダー、グラフィックファシリテーター、ビジュアルファシリテーター、グラフィックカタリスト、グラフィックハーベスター、日本では様々な呼び方がある。役割も場によってかわってグラデーションのよう。」
小針さんのまとめてくれた資料をもとに、日本での状況を皆で共有したところ。
ロザンナから、面白いコメントをもらいました。

「グラフィックレコーダー・グラフィックファシリテーター・ビジュアルファシリテーターの違い、カナダではあるのよ!」

グラフィックレコーダー
場に介入せず、(講演や会議などで)グラフィックを描く人。
ロザンナは「とてもきれいな絵を描く人(そして自分ではないわ!)」というような文脈で使っていました。
グラフィックファシリテーター
手段としてグラフィックを用いて、ファシリテーションを行う人
ビジュアルファシリテーター
手段としてテンプレートなど視覚的な表現を用いて、ファシリテーションを行う人。プロセスを扱う人。

(※このへんは私が断片的にきいたものを集合させています。
違和感あったら参加しているメンバーからのフィードバックがほしいところ・・・!)

ポイントとしては、ファシリテーションするのかどうか?と、ファシリテーションの手段は何か?という点。
日本ではこの境界が非常にあいまいなんですね。
それがいい悪い、ではなくて。
必要な場におかれた人が必要なことをやっていたら、領域横断をしていたため、というのが正直な状況だと思います。
ゆえに、一人が何役もできるということもしばしばで「自分はなんて名乗るべきか・・・?」と悩んでいる人も多い印象。

「自分だったら何ていうんだろう?」
参加したメンバー一同、うーんと考えさせられる瞬間でした。

ちなみに私は、グラフィックファシリテーターとビジュアルファシリテーター兼務パターンです。
必要に応じてグラフィック用いたり、ワーク全体を通してのテンプレートや道具などの他視覚化手段考える、ワークショップデザインやプロジェクトマネジメントそのものが仕事の範囲だし、自分のパフォーマンス発揮できる部分と捉えているので。
(そしてグラフィックレコーダーとして絵の美しさで戦おうとは思っていません。私より絵が上手い人はごまんといるさ!)

ファシリテーターのコンピテシー

では、上記の定義にいるファシリテーターとは何者なのでしょう?
「The International Association of Facilitators (IAF)ではこうファシリーターのコンピテシーをあらわしているよ」
とロザンナがIAFのコンピテシーを説明してくれました。

NEUTRAL
訳:中立的であること
INTERACT WITH GROUP IN REAL TIME
訳:リアルタイムでグループでの相互作用があること
HELD GROUP ACHIEVE OUTCOMES
訳:グループの成果を達成すること
DESIGN PROCESS
訳:プロセスをデザインすること

ちなみに、その内容が、The IAF Core Facilitator Competenciesに掲載されています。
「ファシリテーターが様々な場を育む際に求められる、スキル・知恵・態度」だそう。

Creating Collaborative Client Relationships
訳:クライアントとの協力的な関係性を築くこと
Planning Appropriate Group Processes
訳:適切なグループプロセスの設計
Creating and Sustaining a Participatory Environment
訳:参加型の環境をつくり、維持すること
Guiding the Group to Appropriate and Useful Outcomes
訳:適切で有用な成果につながるよう、グループを案内する
Building and Maintaining Professional Knowledge
訳:プロフェッショナルなノウハウを構築し維持すること
Modelling Positive Professional Attitude
訳:ポジティブに取り組んでゆく姿勢をつくること

※訳は和田が実施。

今までファシリテーターは『役割』として定義してきたのだけど。
コンピテシー(スキル・知恵・態度)として見ると、知らず知らずの間にこうした態度をとって活躍しているなという人を何人もイメージすることができました。笑

※私はそういう人「野生のファシリテーター」とコッソリ呼んでいます。笑。
たとえばBRUSHでの和波さん。
和波さんはグラフィックで描いたレコードが注目されがちなのですが、実はこのコンピテシーを備えている人だと私はとらえています。
それゆえに彼女が描いた場では、参加者の場の参加する発話やインタラクティブな行動も多くみられるし、描いたグラフィックが大事にされる大きな要因だと考えています。

ちなみに、最後に。
日本でファシリテーターってどう表現されていたっけ?と気になったので、家にあった(自分的なファシリテーションに関する)名著ひっぱりだして見てみました。

プログラムを回していく重要な役が、ファシリテーターである。
もともと「容易にする、促進する」などの意味の”facilitate”からきている言葉で、従来型の教育の「先生」に代わって、参加者主体の学びを促進し、容易にする役割である。
単なる司会というよりも、「進行促進役」「引き出し役」「そそのかし役」だ。
中野民夫 ワークショップ―新しい学びと創造の場 (岩波新書)

ファシリテーター(Facilitator)とは
・ミーティングの進行役であり、参加者の意見を引き出す人です
・ミーティング参加者の質問に答える人でもなく、提案を出す人でもありません(むしろそれは発表者です)。ただし自分の意見をいってはいけないわけではありません。「ここからいうことは、参加者としての意見ですが・・・」「自分の意見を述べると・・・」などといって、会議の進行と自分の意見を明確に分けることが大事です。
・イメージとしてはオーケストラの指揮者のような役割です。本人は音を出しませんが、ハーモニーをつくりだすのになくてはならない役割なのです。
A SEED JAPAN (編集),‎ POWER (編集) NGO運営の基礎知識―市民活動のための実践ガイドブック

本書では、プロセス・エジュケーションの実践者をファシリテーターとよぶことにする。
さまざまな関係の中に起こるプロセスとは、誰かに教えられることではなく、学習者自身がプロセスに気づくことを促す働きが重要になり、そのプロセスに着眼し学習者やグループが成長することを促す働きをする人をファシリテーターと呼ぶ。
※プロセス・エジュケーション=「ラボラトリー方式の体験学習」という教育方法・教育理念を体現していく教育活動
津村俊充 プロセス・エデュケーション―学びを支援するファシリテーションの理論と実際

・・・全体的に『役割』としての位置づけなのかな、と思います。

『役割』としての裏に、ほんとはどれにもコンピテシーがあるんだけど。
でも、ファシリテーションを実施しているシーンを見ると、表層の『役割』のほうにばかり目がいってしまっていて、気づくと日本ではファシリテーターと名乗っているただの司会的な人や、司会兼作られたプログラムを淡々と実行する役もなってしまっている・・・という側面もあるなと感じています。(そうならないよう、自戒を込めて!)

また、対話の場のファシリテーション、議論の場のファシリテーション、クリエイティブを生み出すためのファシリテーション、社会変革のためのファシリテーションなど、それぞれ必要なコンピテシーの強弱及び追加で必要なコンピテシー、きっとあるのだと思います。
また、現在の状況ではファシリテーターとしてのコンピテシーのほかに、ロザンナが必要性を説いていたのが「Client Education!」。
まだ理解してもらってない価値を、どう伝えていくのか。
まだまだ歴史が浅い分野だからこそ、そうしたClient Educationのコンピタンスも、私達には必要なのだと感じました。


プレゼントをうけとってくれたロザンナ!プロッキーや和風マステは日本の最先端文房具じゃ!!

場をつくってくれた、小針さん、カナダから参加してくれたロザンナ、幹事を一緒にうけてくれた中村さんに感謝です。
考えることがたくさんあってとても楽しかったです!

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