ビジュアルファシリテーターの阿呆な研究

Read Article

文系のノンデザイナー、サービスデザインの専門家として「未来を進む力」を鍛錬する

この日記は、Service Design Advent Calendar 2018 23日目の記事です。
今年、私は「文系のノンデザイナーが、サービスデザインの専門家として、未来を進む力を鍛錬する」という一年でした。

・新しい事業を創出することを目的とした、サービスデザインのプロジェクト
・落合第六小学校での『絵を通じて「考える力」「まとめる力」「促す力」を育む、参加体験型授業「おえかきシンキング」』授業

事業創出と、小学校での授業。
なんだかまったく異なるようにも見えますが、実は私にとっては表裏一体となって「未来を進む力」を考えさせられた、非常にチャレンジングな場だったのです。
この記事では、今年向き合い続けた「未来を進む力」について、つらつら書いていきたいと思います。

「既存の世界で、より貢献できる範囲を広げる」→「新しい世界をつくりだす=未来を進む」への転換

2014年に産業技術大学院大学「人間中心デザイン」を修了し、UXデザインが楽しくて、オンライン旅行会社の開発現場でヒャッハーして2年。
そのときは、「既存の世界で、より貢献できる範囲を広げる」という目的で産技大に行っていたこともあり、非常に楽しく仕事をしていました。

ただ、2016年後半から、「貢献できる範囲を広げるには、今のUI/UXのディレクター(UXデザイナー)の立ち位置じゃだめだ」という漠然とした何かが生まれて。
2016年後半~2018年の2年半で、その漠然とした何かを変えるために、働く場所を変え(グラグリッドに転職)、内容を変え、という日々を送ってきました。

とはいえ。
もともとの私の特性として、「既存の世界で、より貢献できる範囲を広げる」という思考パターンの流れで生きてきたので、そのパターンの流れを変えるというのはとても大変なのです。
その分水嶺に、今年はようやく立ち、そして今までと違った「新しい世界をつくりだす=未来を進む」という流れに踏み出せた!!

実は、すごくこれが自分にとって大きな変化だったなと思うのです。

踏み出せたのは、サービスデザインのプロジェクト、小学校での「おえかきシンキング」授業、いずれも自分がある程度主体的に、思いっきり自分がやらなかった思考パターンと向きあう時間をもらえたからにほかなりません。

「つまらない」「頭でっかちなんだよ」との闘い

自分が貢献できる範囲を広げるよう、学べば学ぶほど、「つまらない」「忠実すぎる」といわれる回数も増えたな、と思います。
ファシリテーションの師匠筋である現職の社長(グラグリッドの三澤)からも、「和田さんは、頭でっかちなんだよ」と繰り返し言われる始末w
うわあああああん。
わかっていつつ、合理的に考え必然を生みだせるというのが、自分の強みの一つでもあったので、なかなか捨てられなかったのです。
ただ、そこから脱するキーワードが「身体性」だということに、今年一年かけてようやく気が付いていきました。

きっかけは、「おえかきシンキング授業」第二回「空想する」の回でした。
アイデアが飛躍した状況、飛躍しなかった状況について語っていくうちに、すごく大事なことに気づかされました。

今ない世界を想定した場合、総じて、机から立ち上がり、教室中を探し回って、生き物を動かしまわった生徒のほうがより「飛躍」がおきていた状況だったのです。
身体を使ってこそ、想定していた意味から切り離して、新しい意味を考え出し、飛躍することができるのだと感じずにはいられない瞬間でした。
身近なものからヒントを得て、新しい意味を創りだす!~新宿区立落合第六小学校×グラグリッド 参加型体験授業【第二回】 ~

私は上記の図で言うと、まさに机の上で考えて、すぐ結論をだすタイプなのでした。
そのシミュレーションの精度にある程度の自信をもっていたし、実績もついてきていたので。
ただ、そうして積み上げた結果、予定調和的で「つまらなく」なってしまった。

そこで必要だったのは、上記の図でいう点線の部分、「観察して、身体を使って飛び込んでみる」という点。
背伸びしたり、見る角度を変えたり、手を動かしたりetc…身体を使って、いろいろなまわりの環境がどんな風になっているか捉えることが、今自分がもっているものと周囲との、予定調和でない新しい関係性を築くことに繋がるのです。

予定調和ではない新しい関係性を築くのに、私は「身体性」が、すごく助けになってくれるんだな、と捉えています。

(身体を使って)「観察する」=そのものの特徴が最大限活きる場を探すということ
「身体を使って飛び込んでみる」=目の前のものを受け入れるということ

いずれも、身体の行動が、周囲の場に集中するためのトリガーになっているのです。
このへんは、ファシリテーションの場において「グラフィックを描くこと」、瞑想における「呼吸に意識を向ける」などと共通している感じがすごくします。

新しい事業創出の場でこそ、組織と社会との新たな関係性をつくるために、「身体性」が鍵になる

この「身体性」が、事業創出に活きてくるシーンを私は今年何回も見てきました。
特に印象的だったのが、ビジネスモデルを考えるシーン。
自分たちの会社で、資源だと見えてなかったものが実は価値ある資源だと気づき、そこから一気に飛躍して、新しいサービスの種を創出したグループが複数あったのです。
その背景にあったのは、身体でもって、カスタマーの体験価値を捉えてアイデアの種を形作り、検証し続けてきたことでした。

調査やプロトタイプ、評価というプロセスの様々な所で、体験価値とアイデアの種の中に飛び込んでみたからこそ、価値あるものが何かを問い続け、観察することができる。
その価値を自分たちが実現するために、本気でサービスとして価値を提供しつづけられる仕組みを考える。
仕組みの実現を考える中で、自分たちがどう関われるのか真剣に考えた結果、「実はこの資源が、実はこのサービスの仕組みの中の、ここにあてはまるんじゃないか!」と新しい関係性をひらめく。

机の上でただ考えるだけでは、こうしたアイデアも、熱量も、絶対に生まれません。
会社のnoteの記事では、こうしたプロセスを「社会システムモデルの創出」として書きました。

私達は、「空想する」=身近なものからヒントを得て、未知の世界を考え出す方法として定義していました。
これは、ただ新しい形をつくる、ということだけを意味するのではありません。未知の世界を考え出すとは、既存の意味(コンテクスト)を切り離した上で、そこにあるものに対して、周りとの新たな関係性を創り出すことまで含まれるのです。
それは、社会で言い換えたら、新しい社会システムモデルの創出といっても過言ではありません。
身近なものからヒントを得て、新しい意味を創りだす!~新宿区立落合第六小学校×グラグリッド 参加型体験授業【第二回】 ~

「未来を進む力」を鍛錬し続ける

12/22に世田谷美術館で開催された、阿部雅世さんの講演「ムナーリの言葉から考えるデザイン教育」でも、こうした未来を進む力について語られていたのがとても印象的でした。

この講演では「誰にも見えていない未来を見るためには、生きる環境を把握し、判断するという、根源的なものが必要。」と語られていました。
その根源とは、子どもの心を持ち続けるということ。

子どもの心を 一生のあいだ
自分の中に持ち続けるということは
知りたいという好奇心や
わかる喜び 伝えたいという気持ちを
持ち続けるということ
ムナーリのことばより

大人になるということが、知識とか経験でわかることが増えたからこそ、視野が狭まって、直線的かつ範囲を限定的にものを見て考えてしまいがちになることなのだとしたら。
私達は、意識的に、視野を広げること=子どもの心になること が必要なのかもしれません。

まあそうはいっても、頭の意識切り替えなんてなかなかできないからこそ、まずは身体の助けをかりてみようぜ!と思うのでした。
この講座では、デザイン体操など、いくつかの身体を使ったワークが紹介されていました。
身体を使って、より「未来を進む力」を2019年は鍛錬していこうと思います!

URL :
TRACKBACK URL :

Leave a Reply

*
*
* (公開されません)

Facebookでコメント

Return Top