UX(ユーザーエクスペリエンスデザイン)を実務にいかすため、勉強会に参加&読書もはじめました。
仕事関係の書物はプロジェクト開始ごとに3〜5冊くらい買い込んで読み込むので、今回はその一環でもあります。
というわけでまず一冊目!
『ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト』棚橋 弘季 (著)
ソフトバンククリエイティブ (2008/5/30)
著者の棚橋氏のブログを愛読しているのですが、その中でも「巨大な豚に口紅を塗ることがUXをデザインすることではない。」という記事にぐっさりやられたのでした。今の自分の仕事に限界をかんじてしまいました・・・。
私の中ではこの記事と出会ったのが、UX考える上での相当の転機となったので、まずは棚橋氏の著書から読んでみようと思い購入したのでした。
本書の内容について
・ユーザー中心デザインは、イノベーション、体験の向上を実現するため「サービス・製品・サイト」と「ユーザー」との関係をデザイン対象ととらえて、一連の作業をすることである。・本書ではユーザー中心デザインの実現にペルソナ/シナリオ法を用い、体制の構築からターゲットユーザーの選定、調査、デザイン、公開後の運用まで一連の流れを解説。
というかんじ。(上記は私の要約)
データドリブンな世界にいると、改善はできるけど、新しい何かをうみだす問いがうみだしづらい。ユーザー中心デザインは、まさにその新しい何かを生み出すための手法なのだ。
缶詰にたとえると、データドリブンなマーケティングが生み出すのは、超効率よく缶をあけるハンマー。ユーザー中心デザインが生み出すのは缶切り、缶自体がぱっくり開くような「イノベーション」だ。
ユーザー中心デザインを行ううえで、何が必要?
ユーザー中心デザインを行ううえで必要な活動の構成要素が実用的で、興味ぶかかった。
1.体制づくり
様々な専門性を持ったメンバーを集め、領域横断的なプロジェクトとしてデザイン作業を行う2.問題の定義
なぜデザインするのか、何をデザインするのかを最初に定義する3.観察とデータ収集
人々の観察調査を実施して、利用行動の把握を行うとともに、そのコンテキストともなる市場環境や歴史的背景についても調査を行う4.ユーザー行動分析
観察結果のデータをもとに、人々の行動を構造的に分析する5.ユーザーの行動のリデザイン
人々の暮らし/仕事をリデザインする6.プロトタイピング
プロトタイピングを重視する=作りながら考える7.デザイン評価
ユーザーによるデザイン評価からフィードバックを得て、デザインをブラッシュアップする8.オペレーション・デザイン
サービスモデル、サービスを運営する体制や仕組みについてもデザインを行う
ユーザー中心デザインにおける体制づくり
Team Building College (164) / michaelcardus
おもしろいのが、サービスを作る、運営する体制にも言及している点。
この運営体制って、実はすごく大事なことだ。
ユーザー中心デザインは、「ユーザー」に視点をあてて「サービス・製品・サイト」と「ユーザー」との関係をデザインするというもの。誰が見ても同じ方向をむける数字のデータに基づいて動かしているわけではない。
各人がユーザーに自分の姿を投影し「ユーザー」を考えると、そりゃ意思統一できないだろうなと思う。年齢、立場、性別、趣味志向、まったく違うメンバーがそれぞれの「ユーザー」を想定してしまうんだもの。
メンバーが同じ「ユーザー」を想定するために必要なのが、本書でいう「ペルソナ」だ。デザイン対象とすべき「ユーザー」とそのユーザーが行う行動をチームメンバーが共通認識をもつことで、プロジェクトデザインプロセスの一貫性を保つことができる。
チームの中で誰か一人が「ユーザー」を考えても意味がない理由
と、ここで自分の仕事について考えた。
自社のサービスで、皆が同じ「ユーザー」を想定してサービスつくっていただろうか?
少なくとも、チームで共通認識はちゃんともっていなかったように思う。
意思統一がされてないプロジェクトに参加したとき「○○さんの考えるユーザーは、妄想のユーザーじゃない?」という言葉を何度もきいたし、事実私もいくつかのプロジェクトで同じことを考えた。(たぶん他の人にもそのように思わせていると思う)
「こういう人のこういう行動を改善する」というユーザーの行動ベースでの目的が共有されてない中、誰かが「ユーザー中心」を叫んでも、チームメンバー全員がその発言に重要性を感じるのは難しい。叫んだ本人がユーザーのことを本気でいたとしても、皆に伝わらないことでプロジェクトへのモチベーションが相当下がるのではないだろうか。モチベーションが下がった人が続出したら、チームは当然機能しなくなっていく。
本書では、そうした危険も示唆したうえで「体制づくりが大事!」といいつづけているように思う。
ユーザー中心デザインを学ぶために、大変だけど貴重な入り口になる!
Gate of Respect / M Reza Faisal
「ユーザー中心デザインを行ううえで必要な活動の構成要素」の詳細、ペルソナ法の進め方は、内容濃すぎて書ききれないので、本書を購入してじっくり読むのがおすすめ!デザインについての歴史や、チーム作り、デザイン方法まで網羅されてて本書は内容濃すぎ(いい意味で)。
自己啓発本だと思って読まないほうがいい。これ本気の学術書だ・・・。するめいかに例えると、歯ごたえある胴体部分。噛むのは大変だけど、噛めば噛むほど味がでるかんじ。
事実、最初の一読だと私は全体をざっくりとしかとらえられなかったので、もう一周して一章ずつ文章を要約して、だんだん内容が頭に入りだした。。卒業論文書くときの学術書の読み方と同じ方法で、なんとか読み切った。。。もちろん、全部はまだ入りきってないので、気になったプロセスをより深めるためのリファレンスとして、本書に活躍してもらおうと思う。ユーザー中心デザインのよい入り口!
さんざん「読むのが大変!」とおどしたけど(笑)ケーススタディのストーリーは、さくさく読めるし、実際のプロジェクトでこうしていかしたらいいのかーという事例にもなって頭にはいりやすい。するめいかでいうと、噛みやすい足の部分だ。(するめは本当においしいよね。)
また、本書を読むほか、体でユーザー中心デザインを感じるよう、ワークショップに参加もおすすめ♪
※先日「3.観察とデータ収集」の「観察」については、ワークショップに参加してきて実際に体感してきた!実際やってみると頭と体両方で理解できてよかったと思う。
最後に。必要な知識についてのガイドがあるので、より知識を深めていくのにいい。
・デザインとは何か?
・ユーザー中心デザインの方法(ISO13407、人間中心設計プロセス、IDEOの5段階のデザインプロセス、奥出直人さんの創造のプロセス、ブルーノ・ムラーリの企画設計の方法論、紺的スチュアル・デザイン)
・認知科学とわかるということ
・アフォーダンスと身体の動き
・日本のデザイン、日本という方法
私はアフォーダンス(物体のもつ属性が物体自身をどう取り扱ったらよいかについてメッセージをユーザーに発していること)に興味をもったので、次はドナルド・A・ノーマン著の『誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)
』を読み進めることにした。
こちらも歯ごたえ満載だけど、読み終わったらまとめてみようと思う。
(こうして読書感想文をかかないと、書物がちゃんと頭にはいってこないので。笑)
———-
もしおすすめの本がある方いらっしゃったら、ぜひ教えてください!
Leave a Reply